軽妙な文学にして学がある。これぞ武蔵野文学賞。

 本作は玉川上水のお話で、武蔵野文学賞応募作品です。

気さくな兄やんが主人公にあの世とこの世の狭間で
玉川上水の縁起を語る内容なのですが、この語り口が非常に軽妙、
歴史のお話だったり学があるお話を「お堅い、難しい」と敬遠する方にも
問題無くスラスラ、それこそ玉川上水の流れのように受け取っていただける
読み易い仕上がりです。このレビューより断然読み易いです。

武蔵野について語り思い馳せる話でありながら
文学として楽しみ噛み締められる……、
これが武蔵野文学賞というものではないでしょうか。

そして、このカクヨムというサイトに集うような
「書くのが好き」「読むのが好き」な詰まるところ「本好き」なら
「あっ」と一本取られるような仕掛けが小粋に備わっています。

是非そういった要素を味わっていただきたく思います。