18:12

菓子パン

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なぜ夕焼けが好きなのだろう。

ただの空であることには変わりないのだから、晴天だって闇夜だって変わりないじゃないか。でもやっぱり夕焼けの方が好きだ。なぜなのだろうか…


そうか、この青空の寿命が無くなり、命果てていく様子に神秘を感じていたのだ。

物事の終わりというものにはなんであれ哀愁がつきまとう。それはそれ自体が感じる悲しみであったり、第三者が感じる切なさであったりするだろう。そんな哀愁を愛おしいと感じ、終わりかけの自分に重ねてしまっていたのだと。スーパーで買った食べたいわけでもない三割引きの冷やし中華を片手に私は今日も帰路につく。


一人暮らしを始めて二年半が経とうとする。一時期はマッチングアプリで出会った男と半同棲のようなことをしていたが、案の定長くは続かなかった。お互い飽き性で、漫画が好きという共通点はあったが、たいして熱が盛り上がるも冷めるもせず、半年もしないうちに関係解消となってしまった。今頃新しくマッチした女とまた半同棲(笑)をしているのだろう。嫉妬や悔しさがないと言ったら嘘になるが、なぜか幸せになることだけは望めない。


私にはこういう根暗な部分があり、直そうとはしている。しかしこれは悪性のがんのようなもので、一個直してもまた次が・・・と言った形で永遠に増殖していく。


この根暗さが故にもちろん会社でもうまくいっていない。上司の「こうした方がうまくいくかもね」という優しい言葉すら自分を否定され改善するべきだという圧に感じてしまう。

辞めようかとも考える時もあるが、ただでさえこの会社すら最初に内定を貰って、後は就活をしたくなかったから入社しただけであった。そんな自分が他の会社に今更再就職できる未来も見えないし、手取り十五万というなんとも言えない給料に妥協している自分もいる。


結局行きたくないなと思いながらもスーツにアイロンをかけ、七時ちょうどに鳴るアラームをちょうどさっきセットしたところだ。睡眠時間を六時間は取りたいからあと一時間ぐらいでお風呂に入らないといけない。


 ボディクリームを塗り終わったが、すでに〇時二十七分だ。もう寝よう。

あぁ、今日も終われなかった。あの夕焼けのように私の人生はいつか哀愁深く終わっていくことができるのだろうか。そんなことを考えている間に私の意識は既に遠い彼方へと流れて行っていた。

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18:12 菓子パン @hei1223

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