ベエルゼブブ
Tukisayuru
ベエルゼブブ
私はハエだ。そうあの昆虫であり、ハエ目に属するごく一般的なハエである。
普通のハエである私だが、1つ夢がある。
それは、ハエの神様であるベエルゼブブになることだ! 誰もがハエとして生きて来たからには一度はこの夢をみる。
ある日、私はハエたちの噂を耳にする。それは、ベエルゼブブになる方法についてだった。私はその話題についてそれはそれは的確に、もう正確に聞いた。
話を聞く所に寄ると、人間をイライラさせてその感情を力にして、自身の身体能力を極限にまで上げるとベエルゼブブになれるということだった。
我ながらなんとも馬鹿げた話である。しかし普通にハエとして生きるのだったら、この話に本気で騙されてみるのも良い気がした。
早速、私は行動に移した。どうせだったら、もっと面白い所にしよう、ということで、ハエの仲で有名なあの殺戮スポットにしよう。あそこは大の虫が嫌いな男で、飛んでいる虫をところ構わず仕留めるらしい。同じ同胞やライバル勢力である蚊とゴキブリたちもあそこだけには近づくなということで有名だ。
今から私はそこに行く。——良し行こう。この意気込みであった。
——着いた。簡単に着いた。部屋は一人部屋という感じで清潔感のある感じだった。私は窓から入った。男がいた。あぁ、あの人か。多分あの人が例の人だろう。その部屋には一人の男がひっそりといた。
私はその部屋の僅かに開いた隙間から入った。すると男は直ぐに立ちこっちを振り向いた。気づいたようだ。
「っち、ハエかあーもう鬱陶しい今しばいてやる」
お? やるか? 既にイライラしているこの男なら、大きな力をくれそうだ。さて、でもここに一生いたら、いずれ叩かれて先人たちと同じになってしまう。この男の様子をみて、良い感じにイライラしている様子だったら、あの窓から出て行こう。このさじ加減的なものを『怒りゲージ』とも呼ぼう。さて始めよう。
――あれ? ここはどこだ? 気づいたら、あの男の家の近くにある、ちょっとした広場にいた。
私は確か、一分半あたりあの部屋にいた。そしてしばらく男の平手がやって来たので除け続いていた。しかし多分どっかで当たって適当に捨てられた感じだ。
そんなことよりもあれ? 何も変化ない。私が一分半溜めた『怒りゲージ』は? 攻撃から逃げている時は『怒りゲージ』が上がっている気がしたが、まさか気絶したことによって全部無くなったのか!
なるほど、これがやり直しってことか。
――良しまた挑戦するか。
これで懲りないのが私である。さっき死にかけたのになぜまた行くのか? それはあんなに質の良い材料が他にあるわけが無い。
ということで、私はあの部屋にまた入って再挑戦した。すると男はまたこっちを振り向き私をみた。
「っち、また来やがったのか」
男はすぐに立ち、戦闘態勢に入った。今度はなるべく、叩かれないように危険だと思ったら隙間から出て行こう。
男はさっきと同じように平手で攻撃して来た。私はその平手に当たらないように避けて逃げ続けた。
――二分経過した所。
「あ~なんだこいつ」
男はさっきよりもイライラしていた。それによって『怒りゲージ』が溜って半分嬉しくなったが、男の攻撃が激しくなった。具体的に言うと平手の攻撃が頻繁に出るようになった。
ここら辺で潮時か。私は男の平手攻撃から逃げ続け、窓の僅かに開いている隙間から脱出した。
ふぅ~。危なかった。
私はさっきの広場に行って、変化があるか確かめた。私は自分の中から僅かな力が溢れていたことに気が付いた。私は溜った『怒りゲージ』を力に変わったのだ。そしてその力を使って自身のステータスを上げた。
よっと。
私は少し飛んで試してみた。少し、速く飛べるようになった。私は成長した自分に感動したと同時にあの話は本当だったと確信した。私はベエルゼブブに近づいたと思うと嬉しくなった。
嬉しくなったのでまた挑戦することにした——。
こうしてハエと男による戦争が始まった。
私は男の『怒りゲージ』が溜ったら適当に隙間から逃げるという繰り返しが始まった。たまに普通に叩かれて、溜った分を全部無駄にしてしまったが、まぁ良いや、という軽い気持ちで吹っ切れてまた部屋に向かった。
対して、時間が経つに連れて男はイライラが増してしまったので攻撃も多種多様な感じになった。
今の所わかったことはこんな感じだ。
0~2分 平手攻撃
2~4分 平手攻撃の数が増して多く出るようになる。
4~6分 ハエ叩き(平手よりも広範囲なのが特徴)
6~8分 拍手(ハエ叩きほど範囲は無いが広め横攻撃)
8~10分 スプレー(3秒間のそこに持続し続ける)
10~12分 ハエのアロマ(ダメージ判定はないが範囲に入ると動きが遅くなる)
信じられるか? これ同時に出しているんだぜ?
私はずっと避け続けて『怒りゲージ』を溜めて危なくなったら無理をしないで脱出した。
私はドンドン力を身に付けて行った。速さ向上、防御力を上げて一発では倒れない身体を手に入れて、いくつかの分身を手に入れた。そして『怒りゲージ』が溜れば溜るほど、ハイスコアとしてより多くの力を得ることが出来たのだった。
「あ~なんだこいつ~むかつくなぁ」
12分経過してから男は火を吹いた。一体どのような原理で成りなっているかわからないが実際の出来事である。
「もういい加減にしろよ! こいつ!!」
14分経過してから男は遂に接着剤を発射した。ダメージは無さそうだが、当たったら身動きが取れなくなりそうだ。
何ともこの男は器用で凄い奴だった。この男は最初こそは平手打ちだけだったが、時間が経過して今となっては、平手打ちを頻繁にしながら、ハエ叩きで叩きながら、スプレーを噴射させ、アロマをたき、火を吹きながら、接着剤を発射している。
阿修羅かな? 私はそう思いながら、逃げ続けた。
逃げてはまた入り、逃げてはまた入るということを半延久的に行った。
そうして私は力をつけ続けて、ほぼ全てのステータスとスキルを手に入れた。驚いたことになんかの弾幕的なものを発射して、男の攻撃を無効化に出来たり、ついには時間停止も可能にした。
こうやって何回も反復をしたことにより、わかったことが1つある、それは『怒りゲージ』が20分で限界値に達するということだった。
私は広場であることに気づいた。私は今や、全ステータスを最大に上げて、スキルも手に入れた。そこで私はこの状態であの男と20分対戦すれば、その手に入れた力を全部しようすれば自分がベエルゼブブになれるということを感覚的にわかったのだ。
私はその男の部屋に入って、早速対戦を始めた。男は非常にイライラを表してて、見ててちょっと面白かった。私は男の怒涛の攻撃を回避続けて、20分が経過した。
私は窓の僅かに開いている隙間から脱出して、いつも通りに広場に行ったら、体に異変を感じた。私の身体が一回り大きくなり、眼が真っ赤に染まり、羽が翼に変わったのだ。
私は遂に到達した。あの、あのベエルゼブブに!
私は嬉しさのあまり、宙を舞い、勢いが付きすぎて、近くの電柱にぶつかってしまい、その場に気絶してしまった。
――目覚めたときはまたあの広場にいて普通のハエに戻った。
ベエルゼブブ Tukisayuru @tukisayuru
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