第50話 放棄 〜人を待たせたらこうなるんだな……〜

情報通信じょうほうつうしん技術ぎじゅつ? ICTアイシーティー? それって……?」


 口もとに人差ひとさゆびを当て、ぼくとココム教育大臣きょういくだいじん交互こうごに見るウミ。


 何だこの可愛さ。ぼくらは介護の課題解決かだいかいけつにばかり取りむのではなくて、ウミの可愛さにどう対抗たいこうするべきかをもっと議論ぎろんしないといけないんしゃないか……?!

 そうだ、対策本部たいさくほんぶ設置せっちしよう! ここにもう一度大臣だいじん集結しゅけつさせて……いやいや、何考えてんだぼく。ってか、対抗してどうするんだよ……。


 ぼくの妄想もうそうタイムの長さにしびれをきらした魔女ウィッチさんが代わりに、ICTのことを面倒臭めんどうくさそうに解説かいせつし始めた。

「ICTを一口ひとくち説明せつめいするのは難しいのよねえ。そうねー……例えば、これは太古たいこむかしの話になっちゃうけれど、資料しりょうってペーパー直接ちょくせつ書いて作ったりしていたでしょう?」


「……? 私は、今でも手書きばっかりですよ……?」


「あくまで一般的いっぱんてきに、手書きは古いということ言いたいのです。なので、存在自体そんざいじたいが一般的でない王女様の話ははぶいて考えてください」


「省くだなんて、疎外感そがいかんいだかせるような言い回し、やめてください! 私も皆さんと同じ、一般的な生物せいぶつです! お母様かあさまのおなかからオギャと産声うぶごえを上げて、むね鼓動こどうが止まるのを刻一刻こくいっこくと待つ——私たちは、同じ生き物です!」


 ビシッと言い切ったウミが、ドヤァというやってやりましたわがおをしているすきに、ココム教育大臣がぼくのよこぱらをつんつんしてくる。

 く、くすぐったい……。

「……何ですか?」


「あなたのおくさん、大丈夫なの……?」


「さあ? でも、それを言うなら、あなたの上司じょうし、大丈夫なんですか?」


「……ったく。リクくんって、見かけによらず可愛くないところもあるのね」


「ココム教育大臣もね」


「女性にそういうこと言うんじゃないの」

 ジトッとしたまなこが向けられたと思ったら、すぐさまぼくの頭頂部とうちょうぶにチャップが炸裂さくれつした。


「リクくんから説明してくれるかしら? 私はパス。……というか、今日はもう失礼させてもらうわ」


「ええ、説明責任せつめいせいにんたしてくださいよ!」


「そんな野党やとうみたいなこと言わないの! そんじゃ……ヘヤヘ、ノシタワ、ツッレ! じゃーねー、よろしくー」


「あ、ちょっ!」


 ブォン……!!


 眼前がんぜんにいた魔女ウィッチさんが、まさしく間にもらぬスピードで姿すがたくらませた。


 しまった……。ココム教育大臣がどうして日本のことを調べているのかを聞きそびれてしまった。


 そうこうぼくがショックを受けていると……。ようやくドヤ顔タイムを満喫まんきつし終えたウミは、魔女さんが消えていることに気付いて、会議室を見回みまわした。

「……ん? あれ? ココム教育大臣?」


「帰っちゃったよ」


「ええぇええっ?!」


 ……とりあえず。ぼくらは、〇〇タイムで誰かを待たせることをやめるよう心がけるべきだね……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

介護転移 〜異世界で結婚することになったぼくが、介護改革で国を変えてみせます!〜 水本しおん @shion_mizumoto

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ