第5話

キースはミアとシアの家の前に転移で戻った

家の中からシアが出てくる


「あ!キースお兄ちゃんおかえり!」

「ただいまシア」

「ママー!キースお兄ちゃんが帰って来たよー!」


ミアに報告するシア


「あらあら、おかえりなさいキースさん」

「ただいま戻りました」

【さて、家を建てていい場所を聞かないとな】


キースはさっそく家の建築に入る


「ミアさん、どの辺りに建てたらいいでしょうか?」

「そうねー、好きな所でいいんだけど長の通路があるからそこは避けないとダメね~」

「長の通路?」

「ええ、そうよ」

「そうじゃ儂の通路はつぶさないようにの」


急に足元から声が聞こえる


「長?!」


そう、長はモグラである

村の中からいたるところに通路を掘っている

当然ミアやシア、村のみんなも通れる通路だ

土の蓋が開き長が顔を出す


「ここが儂の通路じゃ」

【なるほど、これならモンスターにも会わないな】

「ところで長はどうしてこちらに?」

「なに、家を作るのを手伝ってやろうかと思っての」

「それはありがとうございます」

「穴を掘るのは任せるのじゃ!」


長は張り切っている

しかし長に出番はない

何故なら・・・


「ではあの辺に作ろうと思います」

【そうだな、前世界の1部屋程の広さでいいか】

「収納!」


キースが土を収納する

3m×3m、深さ1mの真四角の穴が出来る


「なんじゃとおおおおおおおおおお!!」


長の絶叫が木霊する


■■■■

『誰か・・・誰か気づいて・・・』

湖を守る者の声

その声は誰にも届かない

■■■■


「ふ~、なんとか住める形になったかな」

「うわぁ~!大きいおうちだねー!」

「儂いらなかった・・・」

「あらあらいいおうちね~」


キースが収納から出した木を床に敷き詰め

屋根も作り何とか寝られるようにはなった


【家、とは言えないが寝るだけなら出来るか】


その時キースの感知に反応がある

赤い点が村に向かっている


【これは敵か?!】

「長!村に魔物が向かっている」

「な、なんじゃと?!」

「村のみんなを避難させるんだ!ちょうど出来たからここでもいい!」


キースは今出来たばかりの家に避難するように指示を出す


「わ、わかったのじゃ!通路で村のみんなを避難させるのじゃ!」

「ミアさんとシアも家の中に避難してくれ」

「わかりました」

「わかったー!キースお兄ちゃんは?」

「俺は・・・村にいってくる」

「「「え?」」」

「このままじゃ村が壊されてしまうからね」

「しかし大丈夫なのか?魔物じゃぞ?」

「多分大丈夫だと思います」

【魔力も満タンだし強化を使えば大丈夫だろう】


村に着いたキースは村のみんなの避難が終わったことを確認


【さて、敵はあっちか・・・】


キースは敵の方へ向かう

村の外、数百メートルの位置で敵を確認


【あれは熊か?】


正面からでもその大きさがわかる

まるで山が動いているような大きさだ


【でかいな・・・】


敵はそのままの勢いでキースに向かってくる


「このままじゃ村まで一直線か」


キースはここで止める為、スキルを使う


「強化!」


魔力は20ある


【20秒間のうちに出来るだけダメージを与えないとな】


両者がぶつかる


「グッ!強いな」


キースは思いのほか強い敵に焦る


【このままじゃ勝てないな】


この魔物は熊に似ている

恐らく熊が魔物になったものである

しかし前足が4本ある

ぶつかった衝撃で止まった魔物は

その前腕でキースに攻撃を仕掛ける


【残りあと10秒か】


強化の残りが少ないと考えたキースは転移を使い魔物の背後へ


「転移!」


背後に廻ったキースが魔物の背に蹴りを入れる


ドスッ!


魔物には効いていない


【やはりか・・・】


キースにはわかっていた

今のレベル、今のパラメーターでは敵わないことを


【アレをするしかないな】


つまり収納からの水である


「いけっ!」


パァン!!


魔物は弾け飛ぶ


【収納は便利だな】


魔物を倒したキースはそう考えながら周囲を索敵する


【感知でも周りに敵はいなそうだな】


そう考えたキースが村に戻ろうとする

その時


『ありがとう・・・』


何処からともなく声がする


【なんだ?】


『あなたのおかげで村が守れました』


キースは不審に思い言葉を発する


「だれだ?姿を見せろ」


すると目の前に水が形を作り1人の女性が姿を現す


『私は湖を守る者』


【精霊・・・か?】


『あなたは私の結界を破り入り込んだモンスターを倒してくれました』

「村には世話になった者がいたからな」

『それでも守っていただいたのは事実です』

「・・・気にしなくてもいい」

『湖を守る者としてあなたにお礼を授けたいと思います』

「いや、大丈夫だ。これからも村を守ってやってほしい」


キースは特に礼は必要ないのでこれまで通り守ってくれればいいと思っていた


『・・・』

【なんだ?】

『湖を守る者としてあなたにお礼を授けたいと思います』

「いや、先ほども言ったが・・・」


キースのそんな言葉を遮るように湖を守る者は涙を浮かべて話す


『お・・礼を受け取ってもら・・・グスッ・・・』

【泣くなよ・・・】

「わかりました。是非お願いします」


パァァァァァ!


湖を守る者の顔が晴れ渡る


『汝に湖を守る者の守護を・・・』


フワフワと光の玉がキースの胸へと吸い込まれる


テロン♪

世:湖を守る者の守護によりスキルが発現

スキル『水魔』を習得


『あなたに加護を与えました』

「ありがとう。スキルが発現したよ」

『本当にありがとうございました。あなたに創生神の導きを・・・』


消えていく湖を守る者


【それにしても泣くか?精霊・・・】


■■■■

『良かった!無事に守れたわ』

『あいつ、加護あげるって言うのになんで断るのよ!もう!』

『ちょっと監視しないとダメね』

湖を守る者に気に入られたようだ・・・

■■■■

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ファンタジー転移冒険の書 キーポン @key510318

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