第3話 勇者 ハンス

「君たちはラッキーだよ。優秀な、俺に出会えたんだからね!」


キランッ

ハンスはナイラにウインクした。

またしてもナイラは無だった。


「え、えっと。ハンスさんよろしくお願いします。」


で、いいんだよね?

ナイラはほぼ無表情だったが、人数を増やすためだ。ロイはオッケーを貰ったことにした。


ハンスは、立ち上がろうとするナイラに手を出してエスコートした。もちろん外に出る時もドアを開けて彼女を待った。

ナイラは嫌がることも無く、淡々と過ごしている。ロイの心の中が何かモヤモヤした。


またまた近くのモンスターを倒しに行ったんだけど、ハンスはロイの言葉なんてどうやら届いていない様だった。

ずっとナイラの周りを剣を持ってウロウロした。いや、せめて一太刀だけでもボスモンスターに浴びせてくれよ。と思ったが、どうやら彼が決めた攻撃範囲は彼らの周りだけらしい。ずっと雑魚的を捌いている。まぁそれもありがたいけども…ずっとそれなの?


ロイは諦めて自分一人で戦うことに決めた。

ナイラが戸惑った様子を見せたがもう知らない!

ずっとハンスと遊んでればいいんだ。

ナイラは遠巻きながらも、ロイを強化したり回復したり…ハンスが周りに付き纏うので、上手く戦いに参加出来ないようだった。


なんとか無事討伐し、戦利品を集める。


「俺がいたお陰でモンスターに集中出来ただろ?」


ロイは怒りが湧いて来た。


「俺はハンスさんとは組めません!でもナイラは好きな人とパーティ組めばいいよ。俺でも、ハンスさんでも!」


そう言い残して、ロイは立ち去った。

好きにすればいい。

あんな奴に好きに周りにはべらしといて…ロイは怒りに任せて、地面を踏み締めるように歩いた。


フワッ


空間移動魔法だ。

ナイラはロイの隣にいた。

ロイはプクリと膨れる。


「ハンスさんとじゃなくていいの?」


「なんで?」


「ハンスさんと一緒にずっといるしさ、ベタベタ触らせて。」


「だって…ロイがメンバー増やしたいんだろうなって思ったから、私なりに、もごもごもご…」


「へ?」


「てか、嫌なら言いなさいよ!」


「い、嫌だったよ!でもナイラが嫌じゃ無いのかなって!」


「嫌に決まってんでしょ!」


「そ、そんなの言ってくれないと分かんないよ!」


あれ?嫌がってたのに我慢してくれてたってこと?


「ごめん、ナイラ。無理させた?」


「別に大丈夫よ。今はロイの隣にいるから。…私はロイと一緒がい…」


後ろからカチャカチャ鎧の音を鳴らしてハンスが走って来ていた。


「何も言わずに来たの?」


「だって…」


ナイラはひとつ舌打ちすると、ロイの手を掴み、空間移動魔法を使った。


二人は鐘の音が聴こえる屋根の上に並んで座っていた。


「レベル上げる為、少し周辺を回ってから行くのはどうかな?先には進むの遅くなるけど?」


ロイは情けないような顔をして見せた。


「ずっとそうしたらって言ってたし。この周辺だってさ、世界なんだし見て回るところいっぱいあるよ。」


ナイラの眩しい笑顔にロイの顔は赤くなったが、きっと夕日に照らされて気付かれ無かった。


「メンバーはさ、縁があれば増やせばいいけど、無理に増やしたく無いかな。」


「うん。」


ナイラの本音を初めて聞いた気がした。

ナイラと二人がいいだなんて一瞬思ってしまったこと。絶対言えなかった。



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最強魔道士のツンデレが可愛くてパーティーメンバーを増やせません! 坂本 三 @sakamotosan

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