一生のお願いが、バイトのシフト代わって
ああたはじめ
あんたそんなことで
「頼む。ね。一生に一度のおねがい」
両手を合わせて拝んでくるカオリ。
バイトのシフトを代わって、ってさ。いいけどさ。いやいいんだけどさ。
そんな事で一生のお願いを使っちゃっていいの?
アンタまだ大学生でしょ。この先の人生まだまだ長いよ。ほらあるんじゃんさ、就職とか結婚とか、それとか命の危機だってあるかもしれない。
病気も心配だしさ、それなのに本当にそんなことで一生に一度のお願いをしちゃっていいわけ? このアタシに?
「ね。おねがい神様さん」
手を合わせてスリスリしているカオリ。そりゃアタシは全知全能の神だけどさ、バイトのシフト変わるくらいできるけど、それ人間でもできなくない?
「どーしてもライブに行きたいの。今度さ、アイスおごるから」
バイトのシフトの報酬がアイスて。アタシ神様だよ? そりゃバイト代わるくらいなら妥当かもしれないけど、もう一度確認するけどアタシやっぱ神様だよ?
ああ。カオリの目がうるうるしてきた。この顔に弱いんだよなぁアタシ。まあいいか。シフト代わってあげるか。
「いいよ。でも今回だけだよ」
「ありがとう神様さん! 今度三段重ねのアイスおごるからね」
と、カオリのバイト問題はこれで解決したんだ。けど。
「おねがい神様さん。一生のおねがい」
カオリがまたアタシの前に来て拝み始めた。
ほらほら言わんこっちゃない。一生のお願いのおかわりきましたよ。ダメだなー。一生のお願いってのは一回こっきりの願いだから、一生のお願いっていうのに、この子ルールわかってないわー。
アンタのママも聞き飽きてるわよ。一生のお願いの乱用だって、怒られたときもあるでしょうに。
「それでなんなの一生のお願いって」
まあ一応聞いてみることにした。
「今度さ、神様さんの誕生日じゃん。一緒にご飯いこうよ。プレゼントもあるんだよ」
「え……どういうこと?」
カオリはもじもじしながら答えた。
「神様さん、みんなの人気者だからさ、あたし一人と食事いくのは難しいかなって思ったの。だからおねがいしようかなって……ダメ?」
んんんん。今のアタシの顔は嬉しいやら跳び跳ねたいやら、でもルールはルールだからなー、って忙しく表情が変わっていたに違いない。
でも、嬉しいな。うん。嬉しい。
「いいよ。じゃあ誕生日はお祝いお願いね」
「うん!」
一生のお願い。二回目でも許してあげるか。
カオリは友達だものね。
「そういえばさ、この前の講義で代返しといたよ」
「ああ。ありがとうカオリ。留年しそうだったから助かったわ」
「もう十回目だよ。ちゃんと授業出てよね。神様でも一生のお願い使いまくるの禁止!」
「ひょえー」
カオリは笑ってくれた。
「神様さんも大学行きながら神様するの大変だもの。いいよ。神様さんの為ならやるからさ」
カオリは人間なのに、今この瞬間だけは神様のアタシよりかっこよく見えた。
一生のお願いが、バイトのシフト代わって ああたはじめ @tyomoranma2525
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