ギャルJKとバイトくん
神原四六七
プロローグ
ピッ、、、ピッ、、、
「合計4点で368円になります。レジ袋は...」
スマホから目を離さず、ピッタリの小銭をカウンターに叩きつけ、商品を持っていく。
「ありがとうございました。次の方どうぞ」
近頃、というかバイトを初めて以来以来こんな客ばっかだ。まぁ、コンビニなんてこんなもんだろう。安くて、近くて、便利、をうたう以上、客は選べない。店員が少しの我慢を積み重ねれば店の売上にもなるし、1時間耐えれば1041円が貰える。仕事量は夕方までのおばちゃん達が優秀なので大したものじゃない、唯一辛いといえば最後2時間の暇な時間か。人によるが、これほど楽な仕事はないだろう。
次々へと客を流していき、そうして22時になれば帰る。これが勤労高校生の普通だろう。
「お先失礼します。」
「ウン、ユウママタネー」
そう言って元気よく手を振ってくる。最近バイトに入って来たアメリカ人のイーサンだ。
彼は深夜の人が遅刻しているため、もう少し残らなければいけない。俺なら絶対に不機嫌になるようなものだが、彼は顔色ひとつ変えずに深夜を待っている。そんな彼に会釈をし、店を後にする。ここから家までは電車1本だが、そこそこかかる。なんでそんなところでバイトなのかというと、通学路の乗り換え地点なのだ。だから休日も放課後もそこそこ行きやすいし、そこまでの定期代も半額店が出してくれる。かなりの好条件である。
電車に揺られ家に着く。ご飯を軽く済ませ、風呂に入り時計を見ると、針は真上で重なっていた。睡眠時間を削ってまで予習をしようとは思わないので、明日の単語テストは諦めて寝よう。というか基本諦めている。
そんな日が続き、しばらくたった頃。
最近の世界的な流行病のワクチンの3回目を接種した。それだけならいいのだが、その日の夕方に近くに住む友達に誘われランニングに行ってしまったのだ。医者からは、「副反応が嫌なら休め」と言われたのだが、そんなことは聞き流していた。なので誘いに乗ったらいいのだが...
「なんでこうなったんだ、、、」
「あんたが安静を破って遊んだからでしょ。バカ言ってないで休みなさい。」
母に一蹴されてしまった。
やはりそれが原因だろうか。しかし、副反応はほとんどがなるものなのだから、遊びに行かなくてもこうなっていただろうと考え、眠りにつく。夕方に熱が下がったので明日は大丈夫と思ったのだが、翌日は熱が上がってしまった。
「38.9℃かぁ、、、さすがにバイト休まないとな」
しかし、こうも熱が出ては体もだるく、節々が痛くてかける気も出ない。なんなら喉も少しやられていて声も出ずらい。基本は電話連絡なのだが、さすがに店長も今日くらいはRine連絡で許してくれるだろう、というか許してくれ。
一抹の不安を抱きながら連絡を入れる。
"今日はワクチンの副作用が酷く、外に出られる状況でもないため、急ですがお休みさせてください。"
"喉が痛く、倦怠感もあるため、電話連絡ではなく、Raneで連絡させて頂きました。"
きっとこれなら許してくれるだろう。そう信じ、もう一度眠りにつくことにした。
ぐっ...!!
頭が何故かガクッと下がった。一瞬何が起こったか分からなかったが、上に見える母で何が起きたのかすぐ理解した。母に枕を取られたのだ。可愛い息子にいきなり何をするのか。
「バイト先からの電話がずっと鳴りっぱなしなんだけど!」
なんのことだろう。まだ昼だし、バイトまではかなり時間があるはずだ。
そう思いながらスマホを確認すると、とんでもない量の着信履歴と、お怒りメールの数々があった。怖い。普通に怖い。所謂束縛系と言われる人達でもここまではしないだろうと言うくらいまでに着信が溜まっていた。メッセージは、バイトのお休み連絡は電話と伝えたはず、だからどんな事があっても今日はこい。そして電話に出ろということの後に着信履歴のパレードだ。
とにかく今日は出ろということらしい。最近人不足なのは知っていたが、ここまでするだろうか。Raneと電話で大した違いは無いと思うのだが、店長には天と地ほどの差を感じるらしい。これはまた副反応が長引きそうだ。
「いらっ...しゃいませぇー...」
キツい。夕方で熱が上がってきたのもあるが、何も動きたくない。相方のイーサンにはあまり動けないことを伝え、品出しなどをお願いすることにした。常連のおばあさんなどには心配され、ポカリやのど飴などを貰った。ありがたかったが、正直気休め程度だ。薬はもちろん飲んできてはいるが、そんなに効いている様子がない。副反応なのか猛烈な眠気が度々襲ってくる。正直これほどのことなら来ない方がいいんじゃないかとも思う。常連さんのなかには辞めた方がいいと言う人もいた。簡単に辞めることが出来れば辞めたい。だが、辞めても次を探すのも面倒なのでとりあえず続けている。
「ユウマダイジョウブ?カワリヨボウカ?」
「いや、あと1時間半だし大丈夫だよ」
イーサンが心配して聞いてくる。さっきから悪化しているのを察してくれたらしい。
「ワカッタ、ナカニイルカラコエカケテネ」
そう言ってバックヤードに入っていく。
だがしばらくして、普通に後悔した。
熱が上がり、度々意識が遠のいていく。内頬を噛み締め、何とか意識を戻すがそろそろ限界が近い。
「あ、やば...........」
急に目の前が暗くなった。頭から前に倒れる感覚がする。「机にぶつかる」
そう思ったが、なにか柔らかいものに当たる感触がした。頭を下から抱き抱えてくれた。
「大丈夫?聞こえる?おーい」
なんだか可愛い、聞き覚えのある声でそう呼ばれたが、気にせず眠りにつくことにした。
ギャルJKとバイトくん 神原四六七 @Simna
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ギャルJKとバイトくんの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます