第22話 エピローグ
最大の収穫は関係者を確保した事であった。
すなわち、マリアと名乗る女と時遠が戦った元軍人である。
元軍人は時遠によって四肢を破戒され、身動きのとれなくなった所を自衛隊によって捕獲された。
マリアはマルコの言い付けを守り、戦闘終了後近衛に投降した。
それから一月余り。
水色の空の広がる良く晴れた日であった。
遠方の山に雪を降らせた低気圧は冷たい風だけを里に運び込んでいた。
新年を迎え再建された武殿に一同が会した。
川上、時遠、鉄心、剣介、近衛、聖礼院瑞貴である。
「鉄丸は受験勉強に励んでおります。本日は欠席いたします。」
にこにこと鉄心が話した。
「あいつ、本当に真面目に勉強してるんですか?」
剣介が笑いながら聞いた。
「うん、真面目にはやっているが、頭の出来が出来だ。苦労しているよ」
「ははっ。浪人したら僕が家庭教師に行きますよ」
和やかな風が道場に吹いた。
「さて、冗談はこれまでにして、本題に入りましょう」
瑞貴の穏やかな声が響いた。
「では、報告致します」
近衛が話し始めた。
「まず、時遠御坊が捕獲した従者ですが、やはり死人帰りの法により蘇った者です。
体細胞の九十パーセントがT細胞化しております。
ただし、知性はほとんどありません。
本能と主である神父の命令に従っているだけです。
我が国の例とは若干異なります。また別の技術によるものかと思われます」
「ふむ、あのいい乳した女の方はどうなのかね?」
「御坊、あのロシア人は生体です。
組織自体については何も知りませんでした。
ただ神父の人柄がいかに優れていたか、世界平和の為にどれほど貢献しているか、そのような事を繰り返し話すだけです」
「典型的な洗脳じゃな。やつらの洗脳のプロセスが分かるかもしれん。引き続き取り調べしてくれ」
「近衛君、兵器の方はどうかな?」
「はっ。未だ分析中ですが、恐るべき科学力です。世界中の最先端技術を投入し、我が国も、アメリカ、ドイツの技術も遥かに凌ぎます。どうしてこれほどの技術を手に入れたのか、全く不明です。ですが、これで我々もその技術を手に入れる事が出来ました。
兵の練度も上昇しつつあり、これで精神兵器、科学兵器共に充実してまいりました。
これで、我々も攻勢に出られると言う訳です」
川上は大きく深呼吸した。
「攻勢…長い戦いの始まりか。」
道場に、冷たい風が長く激しく吹きはじめた。
完
黙示録 開戦変 雪風摩耶 @yukikazemaya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます