おまけ7 5年後、伯爵婦人に出来ること(最終話)

 本当に、リバーウェル領は面白い。

 思わずほくそ笑む僕の横で、姉も同じ表情だった。

 僕達はリタ32歳、ロン30歳の姉弟で、家名を持たない平民だ。

 魔力量が多いからと王立学院に誘われ、まともに学んだことなど無い平民だから、学べる事が嬉しかった。

 気付いたら、2歳上の姉共々、魔法自治区の研究員になっていた。

 結婚より研究‼️

 両親と祖母を招いて、やりたいことだけして食べて寝る日々。

 幸せな毎日は、ある日突然終わりを告げた……筈だった。

 無作法な侵略者、グラン侯爵軍から助けてくれたのが、イオ・リバーウェル伯爵その人だ。

 規格外の魔力量、想定外の魔法の使い方。

 あの人を研究したい。

 同じ気持ちの姉と共に、家族を説得、リバーウェル領に押し掛ける。

 「いいよ、別に。」

 伯爵は軽く受け入れてくれた。

 ただ、交換条件としては出されたのは、鑑定水晶の研究。

 『祝福の儀』で使う水晶は、教会が秘匿する山で採取された鉱石で、魔力の有無や属性を映し出す。

 それが結構不正確だったのだ。

 「いい加減な鑑定さえ防げば、間違いで親に捨てられる子供が減る。」

 そんなこと、考えたことも無い。

 しかし、あの『祝福の儀』の時、親に殴られていた友人を思い出した。

 2日後にはいなくなった。

 あの頃はわからなかった。

 つまり、そう言うことだろう。

 資金も施設も充分に与えてくれたから、必死で……

 いや、楽しくて、楽しくて。

 寝る間も惜しんで開発した鑑定器の試運転の時、魔力量絶大の伯爵夫人で試したのに作動しない。

 まさか失敗か⁉️と慌てる僕達に、

 「ううん、正確だよ」と、ミウ夫人。

 「私は無能力、魔力の器だもん。」

 聞けば、他人の魔力を溜め込み、更に使う事が出来る稀な存在だそうだ。

 そんな話、知らなかった。

 本当に、リバーウェル領は面白い。

 僕達は、更に『魔力の器』を鑑定する方法を研究する。

 ミウ夫人曰く、

 「ちゃんとした鑑定器が出来るまでに、学校も作ろうと思うの。」

 「学校、ですか⁉️」

 「そう。鑑定の精度が上がるほど、魔力が無かった時の風当たりが強くなるから。うちの領地は豊かな方だし、多分ダイジョブ。でも、他の領地は、ね……」

 「はあ?」

 「だから、誰でも望めば学べる学校を作って、魔力の無い子には奨学金を出したっていい。そうして学んで貰えれば、きっと新しい生き方が見つかる。」

 「……」

 「私んち、旦那様がどんどん連れて来ちゃうから、無能力の子ばかりなの。勉強嫌いには庭師や御者、兵士なんかの訓練をして、勉強好きには執事やメイドの訓練をしてる。」

 「……」

 「うちに来て3年のホクトって子、スゴいのよ‼️計算だったら大人に負けないのよ‼️」

 嬉しそうにニコニコ語るその姿に、

 『ああ、やっぱりこの人、あの伯爵様の奥さんなんだ』と、思う。

 イオとミウは表裏一体。

 外に対する武は伯爵が、内に対する知は夫人が担当し、共に生きやすい世界を作ろうとしている。

 僕達もそれを手伝いたい、素直に思えた。

                (了)


 

 お読みいただき、ありがとうございました。

 これにて、『王妃様の作り方』は終了です。

 かなり遊べて、書いてる方は楽しかったです(≧口≦)ノ

 この先も上ったり落ちたりしながら、主人公達が『優しい世界』を作り上げることを信じて……

 ありがとうございました(^∇^)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

王妃様の作り方 @ju-n-ko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ