総評


 まず一言。疲れました……全体を三周はしたので、文字数的には120万文字くらいです。わからなかった作品は何度も読み返したので、実質的にはもっとかな……。

 全感想だけで四万文字くらいありますので、書いた文字数もなかなかに鬼。

 私は今回参加しておりませんが、木野先生に誘われて「コミカライズするなら感想」のパネリストをやることになったので、ついでに全感想しようと軽く決めたのが間違いだったかもしれません。


 色々書きましたが、お気を悪くされた方がいたら申し訳ありません。

 傷つける意図もマウントを取る意図もありませんが、そう見えたなら私の出力のレベルの低さのせいです。笑ってください。


 総評と銘打ちましたので、一応総評も。

 今回は会場でレベルにかなり差があったなと。

 個人的には第二、第三会場が特にレベルが高かったように思います。

 この全感想で第三会場だけが文字数少ないのは、あまりに言及することがなかったからです。

 分布はわからないですが書籍化作家が多いのではと感じました。

 なので「プロの仕事ですね~」も入れませんでした。



 全体を通して感じたのは話の膨らみのなさが目立つなと。

 これは書き出しとして出されたものにも、短編として出されたものにも両方に言えます。

 書き出しは引きがない、短編はそこがピーク、といった感じで。


 書き出し祭りは書き出しだけを投稿する場所ですが、梗概(最初から最後まで書いた大きなあらすじ。作家の言う企画のスタート地点)を作ってから書くといいですよ。

 それがあると一話に入れるべき情報、捨てるべき情報の取捨選択が楽になり、匂わせも入れやすいので物語が大きく見えます。必然引きも強くなります。あらすじもよくなります。


 それと、なろうの長文タイトルにも挑戦しましょう。

 もちろん投稿するときのタイトルはそれでなくても構いません。

 私が言いたいのは「120文字でストーリーをまとめてみろ」ということです。

 すると主題が明確になり、話が取っ散らかりません。

 先ほども述べた梗概からさらに肉を削ぎ落して簡略化したものですね。

 これはログラインと言われるもので、プロ作家の作品が平均的に優れている理由の一つです。ログラインが明確だからブレずに読者を引っ張り続けられます。


 いくつかの感想にも書きましたが、「何を楽しむ話なのか」の提示ができていない作品が非常に多かったです。作者さん自身がその話の楽しみ方を理解できていない。なので読者にも楽しみを提供できない。

 作品のベース部分を作るときは俯瞰的に引いて見て、作品を書く時は主人公の目線で地に足付けて書きましょう。

 

 また、読者のことを考えていない作品も多々ありました。

 人の目に晒す以上、読まれて初めて完成するのが創作です。

 説明をわかりやすくすること、語句を選ぶこと、そういった細かい気づかいが大事です。


 適切な伝え方で面白さを提供しましょう。

 自分の頭の中の面白さのマックスを100とすれば、それを100のまま伝えられる作家はまずいません。

 しかし技術で限りなく100に近づけることはできます。

 構造や感情の動かし方を理解して、面白いものを面白いまま鮮度高く届ける技術です。

 これがプロとアマチュアを隔てる壁。逆に言えば、そこさえクリアすれば誰でもプロになれる時代だと断言できます。あとは題材の間口の広さがあればいい。


 様々な作品の肉を溶かし、骨を観察しましょう。センスで押し切っているように見える作品でも、話の動かし方自体は全然どこにでもある普遍的な構造だったりしますよ。替えの利かない役割を持っているキャラが一話に何人配置されているかなど、少し引いた視線で見てみましょう。

 

 色々厳しいことを書きました。

 全体的にはおとなしめだと思いますが、木野先生の企画に参加した方は「プロになりたい」という意志を感じるので、その環境にいる人間として指摘させていただきました。

 この企画だけで何人かは敵を作ったでしょうね。

 とはいえ、一人くらい本音で誠実に向き合う人間がいないと誰も幸せにならないかなと思い、筆を執りました。

 私が書いたのは、言語化しているかまではともかく、継続して活動できているプロならば当然考えているレベルの指摘です。


 正直なところ、そんなに厳しく書いたつもりはありません。いきなり前述の言葉と矛盾しますが、私にとっては厳しくないという意味です。

 他人の評価に慣れていない方々には辛く感じる内容でしょうが、プロの環境だと優しい部類に入ります。

 知らない人からのほとんど誹謗中傷に近いレビューなどがその典型ですね。

 私はこの企画で代案や具体的な欠点などを書きましたが、そういったレビューには「なんか嫌い」レベルの難癖だけが並んでいるものです。それよりは優しいでしょう?


 また、編集さんはもっと厳しいと思っているくらいでちょうどいいです。オブラートに包みつつ「全ボツで」と言っている場合も多々あります。

 私の場合、漫画の一話の脚本(だいたい二万文字)を半年にわたりボツラッシュしたこともあります。

 華々しい成果だけが見えてしまう世界ですが、裏ではそんなもんですよ。

 ちなみに、ボツにしてもらえて助かりました。

 冷静な視点での指摘は作品を高めます。私の指摘も一つの方法論であって絶対の正解ではありませんが、的外れなことは書いていないと思います。少なくとも現状よりは良くなります。

 まずは構造から。そしてそれが読者にわからないよう、センスで塗りつぶすのです。


 私自身まだ成長途中だという自覚はあります。

 しかもここ最近の成果が表に出てくるのはまだ先なので、根拠のないマウントに見えても仕方ないところもあります。

 私がなろう(ノクタ)に残しているのも書いたのは二年以上前ですし、この感想から流れて見に行けば笑えると思います。

 全然できてないじゃん! って。私自身がそう感じてます。笑

 その頃の私が同じように言及されればきっと気を悪くしていただろうなぁ。

 結局人は自分のいる場所のレベルの範囲でしか物事を心からは理解しません。

 なのでこの感想についても同じでしょう。なんか難癖つけられたんだけど、で思考が終わってしまう人も残念ながらいると思います。

 でもいつか理解してくれればそれでいいです。今は私憎しで頑張ってくれるくらいでいいんじゃないかな。


 長くなってしまいましたが、これにて。

 主催の肥前先生に感謝を。

 

 追記

 一応私の投票先も書いておきます。


 第一会場

 

 一位:淡い輪郭

 二位:美人の国

 三位:リカちゃんの人形


 第二会場


 一位:刑吏代行 骨原火鉢と礼儀正しい死体

 二位:湯レッジっ!!! -Yu-llege-

 三位:平成真っ只中、おしまい、ノストラダムスでレインボー。


 第三会場


 一位:走れ、敗者復活線!

 二位:油彩『或る女の屍』

 三位:あの夏に君がいる


 第四会場


 一位:ノベルデュエル・ブリーダーズ2

 二位:竜操令嬢アルメリア〜小悪党令嬢とドラゴンレース〜

 三位:旅に出た。世界を巡った。君より素敵な人はいなかった。


 

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第16回書き出し祭り 全感想 火野あかり @hinoakari999

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