第十三章
「何見てんの、翼」
「ん? 雑誌だよ雑誌」
「アイドル系の情報誌じゃん。そんなん見るタイプだっけ」
晴れて綺麗な青空が広がる、午後一番の気持ちのいい学校の屋上で、翼は授業をサボって寝ながら雑誌を読んでいた。
「ああ? これはあいつが乗ってるから見てただけだ」
「あー、そういうこと。確か喧嘩吹っ掛けて逆にボコられたあの子よね。番長の」
「負けてねえし。てか真(ま)希(き)こそ何してんだよ。今授業中だろ?」
「翼に言われたくないなぁ。私は翼と同じサボりだよー」
「ふーん」
翼はどこか寂しそうにボーッと雑誌を見つめている。
「ライバルだと思っていた子が急に遠くの存在になっちゃった気がして寂しいんでしょ」
「は? なわけねーだろ。だいたいあいつはライバルじゃねえ」
「あっそう? そう見えたんだけどなー」
「見間違いだぜ、それ」
「あ、だったら翼もアイドルになったらいいじゃん! そうすればまたライバルのあの子に会えるんじゃない?」
「だからそんなんじゃねーって!」
雑誌を読みながら、翼はぶつぶつ言い始めた。そんな翼に、真希はやれやれと苦笑いする。
「ねえ、どっか遊びに行かない? カラオケとか」
「あ? いいぜ、今日こそは百点取る」
「お! その意気よし! じゃあ行こっか」
真希はスキップで屋上に出入りする扉まで向かう。そんな背中を、翼はまた上の空な様子で見ていた。
「アイドルか……」
「何か言った?」
「なんも言ってねえ。行くぞ」
翼は雑誌を投げ捨て、先に行く真希に駆け寄る。
「雑誌は良いの?」
「いいよあんなもん。安かったし」
「あっそう」
地面に落ちた雑誌が風で捲られ、とあるページを開いた。そしてそこにはこう書いてあった、「新人アイドルグループ『REALISER』、会場満員の鮮烈デビュー」と。
ドリームファイト~アイドルたるもの、夢は己の拳でつかみ取れ!!~ デビュー編 ぽりまー @porima
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