第十二章
翌日、つまりライブ当日。夢叶仕合からライブまでの期間が短く、宣伝はしていたものの当日券しか販売していなかったはずなのに、すでに客席は満席だった。これは大手アイドル事務所が、ななみがデビューしたステージでまた新人をデビューさせるという事への期待によるものだろう。だからこそ遥香たちは絶対に成功させなければならない。
という説明を二虎から受け、遥香たちはガッチガチに緊張していた。
「どどどどどうしよう。失敗出来ないよこれ」
「そ、そもそも失敗しちゃだめでしょうに。てかあなたがしっかりしないと駄目じゃ無い。リーダーなんだから」
「ご、ごめん」
理子は「まったく」と大きくため息をつく。だがそんな理子も、手が震えていた。
「だ、大丈夫さ。ボクらは夢叶仕合に勝ったんだから。しかも先輩相手に」
「私は負けたぞ。それと心愛も負けたろう」
「あれは実質勝ちだからいいんだ。あと、勝ち負けがどうってよりも、頑張ったんだから自信を持とうって言いたいのさ」
「それはそうですね。私達、練習もいっぱい頑張りましたから」
「いけるいける! 多分……」
今からライブだと言うのに、全員の表情が硬く空気が重い。だがそんな雰囲気でも、二虎は嬉しそうに笑っていた。
「二虎、何笑ってんの? なんかあった?」
「いや、ごめん遥香。僕嬉しくてさ。僕は皆が頑張ってきたことを知ってるし、だからちゃんと皆でアイドルになって、沢山活躍してくれたらなって、そう願ってたんだけど、こうして叶ったんだから、嬉しいに決まってる」
「二虎……」
遥香は二虎と目を合わせる。そしてお互い頷くと今度は仲間たち全員の顔を見た。皆自分と思いが同じだと表情で感じ、「よし」と呟いた。
「皆、夢は叶ったけど、私達はまだまだこれから、でしょ? だから」
「こんなことでビクビクしてられないってことだね」
「そう!」
五人は円陣を組み、心を一つに合わせる。
「皆さん、そろそろなんで、お願いします」
スタッフが呼びに来た。出番が近いが、もう遥香達に緊張は無かった。
「みんな行くよ? えっと」
「掛け声決めて無いんでしょどうせ」
「あはは」
「はぁ、何でもいいわよ」
「じゃあドリーム、ファイト! で」
「はぁ? なにそれ」
「何でもいいって言ったじゃんか! もう時間無いし、それで行くよ。せーの、ドリームぅ」
「「「「ファイッ!」」」」
そうして心を一つにした遥香たちは、夢の舞台へ駆け出す。その輝く後姿を、二虎は気持ちのいい笑顔で見送った。
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