第50話 マキアス、ソクア(兄)に勝負を挑まれる

「なんであんたがここにいるのよ!」


「おおリリローナ姫! もう大丈夫ですよ! このソクアが来たからには!」


 なにがどう大丈夫なのかまったくわからないよ、兄上。


「兄上。ちょっと肩に」


 ぼくは兄上の肩にひっついていた、アンデッドの肉を払う。


『ゴブリン! あんたアンデッドだったのね!』 

「ちげぇよ、なんかマキアスに近づこうとしたら、アンデッドが山のように吹っ飛んできたんだよ!」


「そんなことより俺様と勝負しろ! マキアス!」


「兄上、いきなり現れて何を言い出すんだ。頭でも打ったんですか? 僕ら兄弟で勝負する理由がないですよ」


「頭は打ってねぇ! いやアンデッドがいっぱい飛んできて打ちまくった…か? んなこたぁどうでもいい! どっちが強いかハッキリさせてやる!」


「兄上、だから何回も言ってるけど。なぜ戦わなきゃいけなんです? 兄弟でしょ僕ら」


 僕は本心を包み隠さず兄上に伝える。

 兄弟で争う理由が全くない。僕は争う気もないんだ。


「とにかく勝負だマキアス! 勝った方がリリローナ姫をもらう!」 


 何言ってんだ兄上、リーナは関係ないだろ。というかもらうってなんだ。リーナは王族なんだよ、僕にせよ兄上にせよ身分が違いすぎる。わかってるのかな。

 ふと、リーナの方を振り向く。さぞ呆れていることだろう。


「その勝負のったわ!!」


 全然ノリノリだった…


「うっひょ~さすがリリローナ姫! 俺様の妻になるだけの女だぜぇ」

「誰があんたの妻になんかなるもんですかっ! 私の夫は決まってるんだから!」


「「マキアス! 勝負!」」


 リーナとソクアが僕に向かってギラギラとした視線を浴びせてくる。

 もう僕の意思は関係なく話が決まってしまったようだ。


「わかったよ2人とも。兄上、望み通り一対一だ、まわりを巻き込むのはなしだよ」

「しゃ~~~!」


 兄上ガッツポーズしながら抜刀する。

 なんか、こんなキャラだったかな兄上。次期領主なんだからもう少し振る舞いに気を付けた方がいいような気がする。


 僕も腰元の鞘から「宝剣トラミス」を抜く。


「ふふ~ぜ~たいマキアスの勝ちねぇ。勝ったら私はマキアスの〇〇に~ふふ」

『リーナ調子に乗っているようだけど、マキアス様があんなくだらない勝負にのるわけないでしょ。当然のように勝ってそれで終わりよ』

「あら~エレニア嫉妬かしら~私みたいに取り合いされたいのかしら~」

『はいはい、言ってなさいよ』


 外野がうるさくて締まらないが、兄上は【剣聖】という強力なスキルを持っている。

 以前魔人と戦かった際はスキルをうまく使えていないようだったが。


「うぉおおお!」


 兄上が雄たけびと共に【剣聖】を発動する。


「くらえぇええ! 【剣聖】【剣聖】【剣聖】!!」


 きた、まえにも見た【剣聖】連打。

 僕は光の斬撃を回避しつつ、踏み込んで瞬く間に兄上との距離を詰めた。

 と同時に高速でトラミスを横なぎに振り払う。


「うわぅわ!」


 兄上が不可解な動きでなんとか回避。見た目はどうあれなかなかの動きだ。

 でも。


「あっぶねぇ! もう容赦しねぇ! 【剣聖】【剣聖】【剣聖】【剣聖】【剣聖】【剣聖】!!!」


 またこれか、僕は再び距離を詰めて剣を振るう。

 兄上は辛うじて、僕の剣を止める。【剣聖】連打の1つが偶然にも僕の斬撃と重なったのだ。

 が、兄上は重なった衝撃に耐えきれずそのまま地面に叩きつけられた。


『はあ~ゴブリン成長しないわねぇ。また【剣聖】の無駄使いしてるわよ』


「くそ、くそ、くそ~。こんなんじゃねぇ!」


 立ち上がる兄上、ボロボロとなにか小さな丸いものが破れた上着から落ちていき、1つが僕の足元まで転がってきた。


 アメ玉だ。


「兄上まだこれ食べてたんだ」


 僕と兄上は仲の良い兄弟ではなかった。

 だが、最初からではない。小さい頃はよく兄上と屋敷を抜け出して遊んだものだ。

 その時によく2人で食べていたのがこのアメ玉だ。懐かしいな。


 僕はアメ玉を拾い上げて、兄上に声をかける。


「懐かしいな、これ。兄上と遊んでいたころを思い出すよ」

「ああ? んなしょぼいもん【剣聖】スキルを持った俺様が食うわけないだろ、ガキが勝手に突っ込みやがったんだ!」


 ガキ? なんのことだろう。


「ふう~しかしあのチビ小娘のおかげで思い出したぜぇ。あんときの感覚をよぉ」


 なんのことかわからないが兄上は再び構える。

 ん? この雰囲気…兄上の気配がかわった…


 静かだ、いつもならわめきながら【剣聖】連打。だが今の兄上は一言も発しない。



 ―――ざっ!!



 兄上は踏み込むと同時に、一閃光の斬撃を横なぎに放つ。


 先程は段違いの速度と威力、そして気合がちがう!


 僕はトラミスを下段から振り上げて、光の斬撃を迎撃する。その瞬間―――


「うらぁあああ!」


 僕が対応する間に兄上は距離を詰めて僕の間合いに入っていた。風を切る轟音とともに上段から気合の乗った一撃がくる!


「【火力創成】! トラミスに付与!」


 僕は咄嗟にコードを使用。火力をトラミスにまとわせて、兄上の光の斬撃を強引に合わせつつ思いっきり振りぬいた。


「ぐぅ、くそが~!」


 光の斬撃をねじ伏せつつ兄上の剣ごとへし折った。

 そのままひっくりがえった兄上の喉元に宝剣トラミスの切っ先をつきつける。


「兄上、勝負ありです」


「なんでだ…なんで…」


 そこには完全に戦意を喪失した兄上が地面にうずくまっていた。





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【読者のみなさまへ、新作投稿開始のお知らせ】


読んで頂きありがとうございます!

みなさまのおかげで、第50話まで更新することができました、感謝しかありません!


新作を投稿開始しました。

「無限の太陽電力! 勇者パーティーを追放された支援職の僕は、【ソーラーパネル】で勇者の元を去って来た聖女たちを輝かせます。~勇者の聖剣が輝かなくなった? あ、それ電池切れです~」


https://kakuyomu.jp/works/16817330650068476594


追放されて、無双して支援して聖女たちと楽しい冒険者生活を送ります。

必ず完結します!

ぜひ、読んでみてください!


これからも面白いお話を投稿できるように頑張りますので、

引き続き応援よろしくお願いします!

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【万物創成コード】空から石が降ってくる外れスキルで隕石が降ってきたんだが? 実は何でも作れる万能スキルでした。〜剣聖じゃないと実家を追い出されましたが、王女と女神に溺愛されて今は幸せです〜 のすけ @nosuke2

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