第49話 ソクア視点(マキアス兄) 俺様、自信を取り戻す

 <時系列として少し遡ります。44話直後の話>


 ゲイナス視点(マキアス父)



 謁見の間をあとにした俺とソクアは王城の中庭をぬけ、正門に向かっていた。


「ちょっと待ちな」


 なんだ、いったい?


 中庭に女騎士が突っ立っている。恐ろしいほど巨大な剣を肩にのせて。うん? たしかあの方は…


「【剣聖】のスキル持ちってのは、あんたかい?」


「ああ~? そうだよ! なんだおめぇ~」

「バカ者! ソクア! 言葉使いに気をつけろといったはずだぞ! 第一王女のキルネシアさまだ」

「ひゃぃ、父上ぇすいません」


「ふ~ん、そっちのいきってる方がソクアって奴か。マキアスに比べたら全然弱そうだな」


「ああ~、じゃないええと…キルネシアさま。それはどういうことでしょうか?」


「まあいいわ。試せばわかること! 抜きなさい! 王国騎士としての実力をみてやる!」


 そう言うと、第一王女はソクアに突撃してくる。

 ふん、バカな王女だ【剣聖】のに挑むとはなぁ。


「ソクア! 第一王女さまが稽古をつけてくれるようだ! おまえの【剣聖】のを存分に示せ! 遠慮は無用だ!」


「ひやっはぁ~~~!! 父上おまかせを~。へっへっへ。こいつもリリローナには及ばないがなかなかの膨らみじゃねぇか。じゅるり。俺様のスーパースキルで圧倒して、ついでにその膨らみもたっぷり堪能して…ぐひひひひ」


 むうぅ、こいつは黙ってやれんのか。いらん事を言うんじゃない。


 第一王女は明らかに嫌悪感あらわな表情でそのままて突進してくる。凄いスピードだな。


「ふひひひ~膨らみ揺らしながら近づいてくる~さあさあおいでおい―――ゲっ!!! ぷぎゃ!!」


 ソクアは第一王女の速さに対応できず、後方に吹っ飛ばされた。

 バカ者が、さっさと【剣聖】のスキルを使用せんか。余裕ぶる相手ではないぞ第一王女といえば戦闘狂の姫なのだからな。


「は、はやぁ~、きいぃいいいい。この~~【剣聖】【剣聖】【剣聖】【剣聖】【剣聖】~~~!」


「そらそらそら~」


 第一王女はソクアの放つ【剣聖】の光の斬撃をすべて弾き飛ばしつつ、さらに斬撃を加えて飛ばす。


「なんだ【剣聖】のスキルが泣くぞ!! あんた本当にマキアスの兄なの? こんなダメ兄と兄弟なんて信じられないわ!!」


「ひぃいい~こえぇ~この女こえぇ~リリローナの膨らみの方がいいよぅ~~」


「ああ?」 ブチブチブチ…


 なんだ? この音は? 第一王女か!?


「へ?」


「あんた、あたいのリリローナに何する気だ~~~ブチ」


 第一王女の周囲に冷気が集中しはじめる。

 なんだこれは!? これが第一王女キルネシアさまのスキルか!?


「ひぃいい~キレないでぇえ。こ、こわいようぅ~~ぐすっ」


 ば、バカ者。泣くな! 仮にも【剣聖】のスキルを持つものだぞ。


 彼女の大剣が絶対零度の冷気をまとう。


「どっかいけ! 変態やろう!!―――奥義!! アイスクラッシャー!!


「ぷきゃ~~~~~~」


 ソクアは王城のはるか彼方へ吹っ飛ばされていった。


「ばかなぁあああ! ありえん! 【剣聖】が敗れるなどあってはならん!」


「ふん、マキアスには遠く及ばない」


 そう言って、第一王女は去っていった。


 なんだこれは。

 何を見ているのだ俺は。


 また、マキアスか。どこまでも俺の邪魔をしおって。

 このままではすまさんぞ。




 ◇◇◇




 ソクア視点(マキアス兄)


「ぐすっ」


 俺は第一王女に王都の郊外まで吹っ飛ばされた。


 周り一面の草原、ここがどこかもわからん。というかどうでもいい。


 目を覚ましてから、いいようもない敗北感に襲われて何故か涙がとまらねぇ。


 なぜだ?


 なぜ第一王女に負ける?


 俺はもっともすぐれた【剣聖】というスキルをゲットしたんだ。


 なぜだ?


 なぜ、魔物に負ける? なぜ魔人に負ける? なぜ外れスキルのマキアスが俺の敵わない相手に勝つ?


【剣聖】は最強スキルじゃあねぇのか?


「ぐすっ、ぐすっ」


 ちくしょう、なんで涙が出やがる。意味がわかんねぇ。


「ん~?」


 俺は頭に違和感をおぼえて、とっさに振り返った。


「わっ」


 ガキ? びっくりした声の主は小さい女のガキだった。そいつが俺様の頭をなでていた。

 俺は慌てて自分の顔の涙をぬぐう。


「なんだガキ? 俺様の頭を気安く触るんじゃねぇ」


「お兄ちゃん泣いていたから。どこかイタイイタイしたんでしょ、だからいい子いい子したの」


「はあ? べつにどこも痛くねぇよ」


「だってずっと泣いてたよ、はい」


 なんだこれ? アメか? たくガキの考えることはわからん。


「食べないの、アメちゃん」


「いらねぇよ、おれは次期領主さまだ。下民からの施しはうけねぇ」


「ゲミンってなに? そっかお兄ちゃんアメの食べかた知らないんだね。はい!」


 ガキが無理やりアメを押し込んできやがる。おい、こら。やめろ。喉つまる。


「わ~た。食う食う、無理やり突っ込むんじゃねぇ」


「わぁ~おいしいおいしいだね。これでイタイイタイも大丈夫だね。のこりはポッケに入れとくの」


「だから、もとから俺はイタクねぇって、何回言やぁわかるんだガキ」


「ガキじゃないよ、ミアだよ」


 ぐ、このガキまったく俺さまの言うことを聞かねぇ。


「ふふ、お兄ちゃんイタイイタイ無くなったね」


「ああ?」 


 言われて、涙が止まっていることに気づく。

 変なガキだな。


「じゃあ私もう行くね、摘んできた薬草持って帰らないと」


「ああ、いけ」


 そう言って、俺から離れていくガキ。

 遠くから振り向いて両手をブンブンふっている。


「ちっ、さっさといけよ」


 俺はしっしっと右手を振った。


 ブーンブーン


「ん? なんか聞き覚えのある音だな」


 ブーンブーンブーン


 お、おいこの音って。


 直後ガキの悲鳴が俺様の耳に入ってくる。


「やべぇ、害虫バッタじゃねぇか!」


 それは魔物イーゴナの空飛ぶ羽音だった。イーゴナはガキの方に飛んでいく。

 付近に落ちていた俺の剣を拾い、全力でガキのほうへ走り出していた。


 ん? 

 な、なんで俺様がガキなんかのために走っているんだ?


「まあいい、バッタごときは俺様が始末してやる!」


 よし、俺様お得意の【剣聖】連打で瞬殺してやる!

【剣聖】のスキルを発動しつつイーゴナとの距離を詰めるが、イーゴナはガキの前に立ちふさがっている。

 ぐ、だめだ連打するとガキにあたる。

 ってなんで俺様があんなガキを心配するんだ…使い捨ての下民だぞ。


「あ~もうめんどくせぇ~集中だ! 一撃で決めてやる」


 俺は集中して【剣聖】の斬撃を放つ。


 光の斬撃は、イーゴナの頭部に命中し、その活動を完全に停止させていた。


「ふぅ~なんかいつもよりすんなりスキル発動できたような気がするぜぇ」


 その場で動かなくなったイーゴナの陰から、ちっこい塊が俺様めがけて突っ込んできやがる。


「ぐ、2匹いやがったか!」


 違った。


「うわぁ~ん、怖かったよう、お兄ちゃん~」


 ちっこい塊はガキだ。俺様の足にへばりつきやがった。うわ、鼻水つけんじゃねぇ。


「ありがとう、ぐすっ」


 ガキは俺さまの足にへばりつきながら、満面の笑みだ。


「え?」


「強いんだね」


「お、おい、もう1回言ってみろ」


「とっても強いんだね!!」


「もう1回!」


「ものすごく強いんだね! かっこいい!!」


「もう1回っ!!」


「滅茶苦茶強いんだね! 大好き!!!」


「お、おう…」


 へ、へへ。やっぱ強いんじゃねぇか。

 やっぱカッコいいんじゃねぇか。


「だろう、当然だぜ。俺様は強いんだ。【剣聖】スキルの力だ! 凄げぇだろ!」


 父上が昔から言っていた言葉を思い出す。

 スキルは命より重い。スキルがクソな奴は生きている意味がない。


「うん?」


 ガキが不思議そうな顔してやがる。

 まあ下民の娘には難しいか、しゃ~ねぇな。


「マリーはスキルじゃなくて、お兄ちゃんが好きなの」


「お、おう…変な下民だな…調子狂うぜ。まあいいさっさと下民小屋に帰ってろ!」


 ガキは無駄に両腕をブンブン振って去っていった。


 さてと、


「やはり俺様の力は最強だぜ。まってろよマキアス、そして愛しのリリローナ姫!!」



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【読者のみなさまへ、新作投稿開始のお知らせ】


読んで頂きありがとうございます!

みなさまのおかげで、第49話まで更新することができました、感謝しかありません!


新作を投稿開始しました。

「無限の太陽電力! 勇者パーティーを追放された支援職の僕は、【ソーラーパネル】で勇者の元を去って来た聖女たちを輝かせます。~勇者の聖剣が輝かなくなった? あ、それ電池切れです~」


https://kakuyomu.jp/works/16817330650068476594


追放されて、無双して支援して聖女たちと楽しい冒険者生活を送ります。

必ず完結します!

ぜひ、読んでみてください!


これからも面白いお話を投稿できるように頑張りますので、

引き続き応援よろしくお願いします!


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