(実話)昔好きだったweb小説作家様が今も活動していることに勇気づけられてメッセージを送ったら、その日にその方が公募最終選考進出するのを見届けた話

雨蕗空何(あまぶき・くうか)

書き続けることに悩んだ人の、心の支えになれますように。

 思い返してみても、どうしてあのタイミングだったのか、本当に奇跡のようなめぐり合わせでした。

 昔好きだったweb作家様がいて、ふと思い出して確認したら今も活動していることを知り、うれしくなってコメントを送ったその日に、その方のコンテスト最終選考進出を見届けるという。

 あまりにも劇的だったので、ここにエッセイとしてまとめておきます。

 そしてできれば、今小説を書いていて、書き続けることに悩んでいる方がいれば、少しでも心の支えになったらいいなあと思います。

※名前出しについて、ご本人様から許可をいただいております。




 先に、私の経歴について書いておきます。

 web小説というものに私が触れ始めたのは、学生時代、もう二十年近く前です。

 とあるフラッシュゲーム(webブラウザ上で遊べるゲームです)が、公式サイトに二次創作作品をアップできて、それを読んだり投稿したりしたのが始まりでした。

 その後、ホームページを作ってオリジナル作品を上げるようになり。

 あの時代は、まだ自分のホームページに作品を載せるのが主流でした。


 そんな折、くだんのweb作家様の作品に出会ったのは、大学生のころでした。十年以上前……十五年前くらい?

 検索支援サイトのリンクをたどり、たどり着いたホームページ。掲載されている、素敵な小説やイラスト。

 あのころの個人サイトって、みんなが思い思いに飾り立てて、自分の作品を展示して、それぞれに工夫を凝らして、まるで宝石箱のようなきらめきがあったように思います。


 とにもかくにも、私はその方の作品に惚れ込みました。

 それこそまさに、宝石のように輝いて見えて。

 それで、自分のホームページからもリンクを貼ったりして。たぶん許可をいただくやりとりとか、当時したんじゃないですかね……確証がないですけど。

(ちなみに当時は「キッカー」というハンドルネームを使っていました)




 そして、時は流れ。

 大学を卒業し、社会人になり。

 いろいろな環境変化があって、私のホームページの更新は途絶え、web小説を読むこともしなくなり。

 紆余曲折あって、また小説を書き始めて、カクヨムへとやってきたわけですが。


 きたる二〇二二年九月。私は悩んでました。

 現在連載している拙作「ちゅうやてをつなぐ。」が最終章に突入し、手元にはまだ推敲する予定ではあるもののすでに完結まで書き切ったデータ。

 この作品は自分なりにとても思い入れが強く、読者様もついてくださってコメントや評価もいただけて、だからこそ、その先に悩んでいた。

 次の長編は何を書こう。ネタはいくつもあるが、どれを書けば自分は満足するか。公募を狙うのか。評価が入りやすいものを目指すのか。

 簡単に言えば、燃え尽き症候群からの「好きなものを書くvs評価されるものを書く」論争を併発という感じですね。

 新作をちょっと書いては納得いかなくてやめる、そんなのを繰り返す状況で。


 そんな状況ゆえに。私は原点に立ち返ることにしました。

 昔々の、まだ公募だとか考えていなかった、web小説を書き始めたばかりの自分。

 たまたま少し前に昔の作品についてつぶやいたこともあり、あのころの自分の作品を見返して、書きたいものを見つめ直そうと思ったのです。

 ブラウザの検索窓に打ち込む。私の個人サイトの名前。

 更新が止まったままのそのサイトは、いまだインターネットの海にあります。

 懐かしく思いながらコンテンツを見て回り……ふと、「リンク」のページへ。

 検索支援サイトや交流のあった人のサイト、自分が好きでリンクを貼らせていただいたサイト……すでにサイトが消滅して、たどれないものも多かったですが。

 その中にあった、ひとつの個人サイト。

 あの惚れ込んだ作者様のサイト――管理人「翁」さんの個人サイト、「裏路地迷町」。

「ああ、ここの小説、そういえばおもしろかったなぁ」と、リンクを踏んで。


 残ってる。稼働してる。新作がある……!


 本当にもう、感動しました。

 いまだ個人サイトが動いてて、ずっと小説が書かれていたなんて。

 しかもカクヨムなどの投稿サイトにも置かれている。同じ環境に、この方がいる。

 なんだかもう、すごく心強くて、勇気をもらえて。

 読んだ新作小説は、やはり宝石のように輝いていました。

 あまりにうれしくて、カクヨムで掲載されている作品「喉笛の塔はダミ声で歌う」のコメント欄に熱烈なコメントを送ってしまいました。

 以下はそのコピペ。


――――――


突然のコメント失礼します。

昔々のことなのですが、ホームページで翁さんの小説を拝読したことがあり、素晴らしい作品だと敬意を覚えておりました。

それからweb小説自体をしばらく離れており、最近その世界に舞い戻って、ふと思い出してホームページをのぞいてみたら、今でも活動されていることに感動してしまいました。

この作品も現時点でもとても心惹かれるもので、勝手に舞い上がっています。

普段使いしているのがカクヨムなので、こちらで追わせていただきます。

一方的な敬慕で困惑させるかもしれませんが、ご容赦ください。


――――――


 普段送ってるコメントより、なんというか、舞い上がりようがにじみ出てます。

 本当にうれしかったんですよ。ええ。

 興奮さめやらず、その日の夜にTwitterではこんなつぶやきをしたり。


――――――


ちょっと、感動と興奮が……

昔々、まだweb小説を個人サイトで掲載するのが一般的だったころ、とても好きだった作家様がおりまして。

それから私はしばらくweb小説界隈を離れていて、最近カクヨム中心に復帰したわけですけど。

ふとその人を思い出してホームページを見てみたら、今でも活動されてて。



現在連載されている作品も、あのころ心酔したようにまた私にとても刺さる作品で。

カクヨムなどの投稿サイトにも投稿されていて。

なんというか……「あのときのあの人が今も変わらず活動されている」という事実が、自分でもびっくりするくらいうれしくて心強くて涙が出そうです。



小説を書き続けることに対して考えることもあったんですが、全部吹き飛びました。ずっと書き続けて、今読んでくれている誰かに対して、いつか私がその人にとっての「あのときのあの人」になるかもと思ったら、それだけで小説を書く理由として十二分に過ぎる。


――――――


 昼にコメント送って夜にもまだこのテンションなの、興奮しすぎですね。

 ただ本当に、勇気をもらえた。

 誇張でもなんでもなく、翁さんが活動してる事実それひとつで、私が小説を書き続ける理由とモチベーションがフルチャージされました。

 本当に、うれしかったんです。




 で、お話がここで終わらず。

 翁さん、Twitterもやってらっしゃる。

 そちらものぞいてみて……一番上、リツイート。

「角川文庫キャラクター小説大賞 2次選考結果発表のお知らせ」。


 ……ん?


 リンク。開く。結果発表。


 …………んん??


 いやいや、あまりにタイミングよすぎん? え? 昨日思い出して、今日コメント送って、さっきあんなツイートして、その直後にこれ、待て待てリアクションはまだ早い、リツイートだけで本人のツイートが来てない、ちょっと待って本人が何かつぶやいてから反応した方があっツイートされた!? リツイート!! あとフォロー!!

 からの、私のツイート。


――――――


あの……えっと……そんなことある???

昨日思い出して、今さっきつぶやいた「あのときのあの人」が、その直後に二次選考突破するのを見届けるとか、そんなできすぎたタイミングある???



ちょっとあの……タイミングが……マジで???



リアルに涙出てきた



なんかもう……感謝したい……

何に感謝したらいいのかは分からないけど。

今ここでこの縁をたぐりよせたの、小説かってくらいできすぎてる。

なんかもう……ありがとうございます……ありがとう……


――――――


 なんで私が泣いてるんだ(冷静な思考)

 いや泣くでしょこんなん(いまだ舞い上がってる)

 だって、「あのときのあの人」の変わらぬ精力的な活動に勇気もらって、その日のうちにその人が公に評価されるのを見届けたんですよ?

 こんなの涙が出て当然というか、書いててまた涙が出てきました。

 本当にもう、ドラマチックすぎる。

 その後、翁さん本人と「泣いてます」リプを送り合ったり。

 本当になんで?????

 長い期間読んでなくって、いきなり舞い戻ってこんなことになってるのなんなん?????

 いや、本当にうれしかったし泣いたんですけど! なんならもう一回泣けますけど!




 エッセイとして今回まとめるお話はここまでで、後は現実をお楽しみください。

 特に公募の結果がどうなるか、現実がお楽しみすぎるのですが。


 ただ、今回の話。公募最終選考進出のドラマがなくても、私にとってはとても感慨深いことでした。

 Twitterからのコピペの前半で分かるように、これだけ長い期間を経てもずっと活動されていた、それが一番うれしかったことです。

 私もいつか、誰かにとっての「あのときのあの人」になれるよう、悩んだとしても苦労したとしても、書き続けていきたいなと気持ちを新たにしました。

 そしてこれを読んでくださった書き手様も、同じように誰かにとっての「あのときのあの人」になれたら、それはとても素晴らしいことだと思います。

 そんな未来を願って、みんなで小説を書き続けられたら、うれしいです。




(10/28追記)


 上述の「角川文庫キャラクター小説大賞」にて、翁さんの作品が大賞+読者賞受賞したそうです。

 マジでなんでこんな状況を見届ける奇跡が起きてるの?????

 おめでとうございます!!!!!

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