第17話(3) お疲れ様会
カラオケを終え、それぞれが帰宅の途に着く。
別れ
帰り道、私とソフィアちゃんは二人で住宅街を歩いていた。
「終わっちゃったね」
ぽつりと私の口からそんな言葉が漏れ出る。
「寂しい?」
「まぁ、うん、寂しい、かな」
素直に認めるのがなんだか照れくさくて、私はその言葉を発するまで二度寄り道をした。
「今日の集まりだけじゃなくて、同時に一年生も終わっちゃった感じがして……。変だよね。終業式は昨日済ませたのに」
「なんか分かるかも」
「ホントに?」
「嘘」
「何よもう」
こんな時までからかって。
「ごめん、冗談」
と言ってソフィアちゃんが笑う。
「結局、教室に一緒にいても、付き合いのある人って限られてくるじゃない? その中でも今日いたメンバーはそれなりに付き合いがあって……。だからこそ、終わった感じがしたんじゃないかな」
「よく分からないけど、そうかも」
ソフィアちゃんの言葉はまとまりらしいまとまりがなくふわっとしていたが、言わんとする事はなんとなく伝わってきた。
「あっそ」
その様子に、私は思わず笑みを零す。
「一年間色々あったよね」
「ぼっち飯とか?」
「そうそう。あの頃はクラスに居場所がなくて――って、おい」
しっかりと乗った上で、ソフィアちゃんの肩に私はツッコミを入れる。
「ウソウソ。私といおの
「馴れ初めって……」
「まずは私がいおのクラスに転入してきて」
「少しして、一緒にご飯食べるようになったんだよね」
ソフィアちゃんの言葉を、私は引き継ぐ。
「で、いおが急に、私の写真を撮りたいって言いだしたのよね」
「いや、その言い方だと、私がソフィアちゃんの写真を欲しがったみたいじゃない」
「違った?」
「全然、違うわよ。陽ちゃんがソフィアちゃんの事を見たいって言うから……」
「そういう事にしておきましょう」
クスリと笑い、ソフィアちゃんがお
なんだろう、この
「で、その見返りに私がいおを家に招待した、と」
「あれって結局、お母さん云々って話は、私を誘う口実だったの?」
「
嘘ではない。つまり、それ単体では、誘う理由にはなり得ないという事か。
「何よ」
「べっつにー」
ソフィアちゃんは可愛いなと、改めて思っただけだ。
「学校と言えば――」
自分に不利な流れを変えるためか、ソフィアちゃんが必要以上に声を張ってそう話し始める。
「文化祭。なんやかんやで楽しかったわね」
「大変でもあったけどね」
メイド服を着ての接客に始まり、ナンパ、果てはカップルコンテストまで。入学当初には考えられない参加っぷりと言えよう。
「いおのメイド姿、似合ってたわよ」
「ソフィアちゃんこそ、別の意味で似合ってた」
「別の意味?」
私の言葉に、ソフィアちゃんが首を傾げる。
「ギャップ? そんな服着なさそうな子が着てるからいい、みたいな?」
「あぁ……。いおが肩を出してると
「ん? それは、どうなんだろう?」
同じなのか? 自分ではよく分からないという意味では、同じなのかもしれないが……。
「カップルコン、来年も獲りたいわね」
「というか、二年連続で出れるの?」
まずはそこが問題だ。出られなければ、そもそもその舞台に立つ事すら出来ない。
「規制はされてないみたいよ」
「そうなんだ」
どうやら、その辺りはすでに確認済らしい。用意周到というかなんというか……。
「後は……体育祭? あれも盛り上がったよね」
「最後のいおの激走にはみんな心打たれて、涙する者もいたとかいないとか」
「涙してたのって、木野さんだけでしょ」
しかも、走者の方だし。
「それを言ったら、アンカーの方が凄かったって。残り数十メートルでのデッドヒート。そして最終的には突き放してきっちり勝つ。まさに主役に
「きっと、バトンを渡した人が良かったのね」
「……」
ああ言えばこう言う。まったく、口が減らないんだから。
「いいクラスだったわよね」
「悪くはなかったかな」
「ホント、ソフィアちゃんは素直じゃないんだから」
まぁ、そこもソフィアちゃんの可愛い所なんだけど……なんてね。
「二年生はどんな一年になるんだろう」
出来れば、今年度と同じくらいいい一年になるといいな。
「楽しいに決まってるでしょ」
「え?」
あまりにはっきり断言するので、私は明確な理由があるのかと思わず驚きの声を上げる。
「私と一緒なんだから」
そう言うとソフィアちゃんは、少し照れたようにはにかんでみせるのだった。
ぼっちな私と美人な転校生の何気ない日常。 みゅう @nashiro
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