第三話 幽霊

 タバコの煙は昔から嫌いだった

弘樹の叔父さんによく海に連れて行って

もらった時


船上ではタバコの香りがしていた

「 おじさん服に臭いがつくの 」



竿を握りしめ目を擦りながら

タバコを消すように言ったが


叔父さんは


仕方ねぇだろお これが海の男よ



そう言って

いつも吸っていたのを思い出す


弘樹の笑え声も

この時になって思い出した


オヤジ、杏の為にも禁煙しろよ

今はタバコ嫌われるんだぞ



ハッと目が覚める

横には弘樹ではなく

先程の幽霊が座っていた


二人で駐車場の縁石に

コンビニでたむろする

ヤンキーのように座っていた


「 タバコ嫌いだったか 」

幽霊はタバコの火を

冷たくなったコンクリートに擦り付ける


「 いや、懐かしくなって 」

葬儀の日は

人の死を悲しむ日


白い歯なんて出してはならない

そう教えてもらっていたが


私は

幽霊の前なら良いだろうと

少しだけ白い歯をこぼした


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いたずら部 @ommu

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