第6話
僕は鼻で笑って、よく通る声ではっきり言った。
「君達、馬鹿だね。」
「先生、トイレに行ってきます。」
担任は困惑しながら返事をした。
クラスメイトは困惑と動揺の混ざった顔で僕を見ていた。
「%#&*@*%#@&#」
僕には何を言っているのか全く分からなかった。
僕は気にせず教室から出て行った。
とてつもなく素晴らしい解放感と爽快感を感じた。
こんな気分は初めてだ。
世界の彩度と明度が上がったような気がした。
僕は校舎内で一番東の階段に向かった。
ここはほとんど人が通らない。
一人になるにはうってつけの場所だった。
僕は階段の一段目に座り、ポケットから手紙を取り出した。
昼間彼女に渡されたものだ。
以前から僕に恋をしていて、昨日知らない一面を知れてもっと好きになった。
僕のことをもっと知りたい。
付き合って欲しい。
要約するとこんな感じだった。
ラブレターを貰うのは初めてではないが、新鮮な気持ちだった。
僕は貰った時と同じ状態に戻し、ポケットにしまった。
僕は立ち上がり、壁を見つめる。
今から僕の命を懸けたアートを創る。
壁が真っ白なキャンバスと化した。
僕は深呼吸をして壁に手をついた。
勢いよく頭を壁に打ち付けた。
僕は興奮のあまり、痛みを感じなかった。
鼻水が鼻の中を伝った。
脳震盪は30~50%の確率で死亡する。
後遺症が残ると困るので、確実に死に至るようにする。
何度も何度も頭を打ち付けた。
真っ赤な鮮血が垂れて制服を汚す。
一方、キャンバスは赤い絵の具が跳ねたり、直線が引かれていたり、前衛的な作品になっていった。
僕は息を整えると腕の筋肉を一気に収縮させた。
視界がぐるりと変わる。
身体は床に打ちつけられた。
一瞬だけ見えた作品に僕は満足し、笑った。
5秒後、僕は意識を手離した。
両親の声が聞こえた気がした。
両親の顔を一目見るか迷った。
睡眠薬より強い眠気が僕の手を引いた。
聴覚情報を遮断し、深い深い眠りについた。
主人公、水上累 リーア @Kyzeluke
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