9

 僕は、この暗闇の中で生まれた。まだ生まれて間も無い筈なのに、大人の様考える事が出来、もう何年も生きている気がする。一つ、僕には欲求があった、外に出たいという欲求である。「外の世界」というものがあるのか分からないのに、知り得ない世界に憧れを抱く。僕が外の世界へと産み落とされるのは、いつだろうか…いや、このまま此処で死ぬのだろう。

 無数の「何か」が脳を、肉体を喰らいながら、ゆっくりと。僕は生前に罪でも犯したのだろうか。ならばあんまりでは無いか、覚えの無い罪を償わされるなんて。

あぁ、外の世界を知りたい、一日だけで良い、その後死ぬ事になっても良い。

 そんな僕の願いが届いたのか、ゴソゴソという音と共に、小さな話し声が聞こえる、やがて光が差し込んだ。

 僕を救った救世主は、ランタンを持つ、薄汚い男たちであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

粉人形 @backerstrife

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る