第一章2「オプダム」
町に戻ろうにも、自分たちは旅に出ているのだったをようやく気付いたフユリとミナは草原を彷徨っていた。
「よく分からない目にも合ったけど。旅、続行だよね!」
「偶然居合わせた、と考えるのがいいか。」
「今からどこに行くの?」
「北西にある町、『オプダム』に行くよ。そこでいろいろ物資を調達して、近くで魔術の訓練をするつもり。」
なるほど。計画が立てられる人だ。すごい。
「いいね。楽しみ!ちなみに『オプダム』には名所とかはあるの?」
「あるよ。精霊の滝っていうのがあってね、めっちゃ綺麗らしいんだ。」
「精霊!そんなのいるんだ!本の中だけの話かと思ってたよ!」
心配だけど心は強そう。そう考えるミナだった。
「綺麗~~!!」
「そうだね。」
「うん?元気ないの?」
「いや、あの13番のことがずっと気になってて...」
「もしかして好きなの?!」
「そっちの気になってるじゃないよ!13番は有名だけど目撃情報はタロットの中では少ない方だから、私たちの前に出てきたのが、何か目的があってきたんじゃないかなって気になってて。」
「ふ~ん、気にしすぎじゃない?」
なんだこいつ。まあいいか、そんなこと考えても無駄だしね。
「イプ・グラシエス!!!」
鋭い氷の柱、いや塊が遠くの魔精を貫く。この世界には、精霊、妖精とは対の存在である魔精が存在する。その魔精は草原や山、洞窟、砂漠などどこにでもいる。
「いまのすご!!!なにあのでっかいの!!」
「魔術にも段階があってね、初級、中級、上級、魔級っていうのがあるんだよ。今のは中級ね。フユリの練習したら撃てるようになるなるよ。」
「なるほどなるほど。勉強になりますな。」
「詠唱だけど、初級魔法の先頭にイプをつけるだけだよ、でも、中級やそれ以上を撃つには個々の経験値的なものが必要になってくるからフユリはまだ撃てないかな?」
「なんだそれ、経験値?そんなんなくてもいけるだろ。」
―――いや、さっきそれで倒れたんだっけ。危な、また倒れるところだった。
「どうした?」
「いや、さっき倒れたの魔術を使ったからだったことを思い出してね、危ない危ない。」
「え!魔術使ったの?!」
「え、うん。炎魔法。え、ダメだった?」
「いや、すごいよ、最初から打てる人なんて滅多にいないから。倒れたのはマナを急に使ったからじゃない?いまなら撃てるかも。」
「ほんと?!ん、マナってなんだ。」
「あ、言ってなかった、マナっていうのはね、魔術を使うために必要なお金みたいなものだよ。自動的に溜まるからどんどんつかっていいやつ、で、使っていって経験値的なものがたまっていくんだよ。」
「なるほど。じゃあ魔術つかってみようかな、あ、そういえば魔術っていってるけど、魔法じゃないの?」
「あ、それ?どっちでもいいよ、なんとなく魔術のほうがかっこいいかなって思っただけ。」
「へー、そうなんだ。じゃあわたしは魔法のほうがかっこいいと思うけどね、じゃあ早速魔法撃ちますよ?」
「どうぞ。」
「イプ・フラマ!!!」
―――すると、目の前一帯の草原の草が燃え、灰になった。
「え?」
「え?」
二人は目を合わせる。
「フユリってもしかしてバケモン?」
「そんな気持ち悪い呼び方しないで!!」
「でもすごいよ、魔術は術師の実力により、威力が変わるから、わたしよりも遥か上だと思う。」
「それは気まずいな。」
「自信もっていいんだよ。下手したら魔級も撃てちゃうかもしれないし。」
「たしかに!魔級撃ってみたい!!」
「今日はもう駄目だよ、さっきので相当マナを使ったはずだし。」
「わたしめっちゃ元気だよ?」
「ほんとに?それじゃほんとのバケモンになっちゃう。」
「やめて!!才能って言ってほしいな~~」
「わかったよ。でも、魔級の詠唱を知らないんだ。」
「そうなんだ。それは残念だけどなんかやる気でた!」
フユリたちが襲われる前―――13番正位置担当はタロットの集まる場所に来ていた。そこに一人のタロットがいて―――
「おい13、こいつ捕まえてこい。」
白髪で渋い顔でこちらに写真を見せつけてくるのは12番正位置―――だった。
「は?誰だそいつ。まずそもそもなんでそんなめんどくせえことを俺が?」
「おちつけ、まずはこいつについてだ。こいつは名前、年齢など一切分からないが、何らかの能力者であることは間違いない。」
「能力者?!」
「ああそうだ。おれも驚いたよ、世界に数人しかいない能力者がこんな素性もさらさないで生きているとはな。」
「なるほど、それで俺か。」
「そうだ、引き受けてくれるか?」
「もちろんだ。はっ。」
こいつは面白い。俺が遊んでやるか。
「で、そいつはどこにいるんだ?」
「地図の真ん中から見て少し東のところくらいだろう。今、移動していると思う。おそらくだが、ずっと家にいて、家を出た時に、タロットのだれかが能力者の動きを察知して向かったらこいつがいたんだと思う。その時に捕まえてほしかったが、どんな能力か分かるまでは下手には動けないと判断したそうだ。」
13番が移動を始めた時、すなわち急襲を企てた時、『白光』ライは、タロットに動きがあると13番逆位置から報告があった。報告を受け、嫌な予感いや確信をもって東に向かった。
「くっ、なぜタロットのやつらが動く?姿をめったに現わさないやつだと聞いていたんだが。―――――!!!」
「フラマ!!」
聞こえる。初級魔法だ。タロットがいる。相手は子供か?
「マグ・ルックス!!!」
ライは光の上級魔法を放った。タロットは光属性が苦手と逆位置から聞いていたからだ。
「大丈夫だ。安心しろ。」――――――逃がしてしまった。でも人助けをするのも俺の仕事だ。――――
ミナからこの世界について教えてもらった時―――
「フユリ?聞いてる?」
「あーごめん、なんだっけ。」
「聞いてないじゃん!もう一回言うね、この世界には、タロットっていう存在がいて、そのタロットには正位置と逆位置っていうのがあるの。で、それぞれに一人一人割り当てられてて、簡単に言ったら正位置が敵、逆位置が味方って感じ。」
「なるほど。それは何人くらいいるの?」
「それは分からない。でも全員が能力を持っていて、でもだいだいの能力は明らかになってないみたい。」
「すまん、『白光』が来て、捕まえられなかった。でも情報は手に入った。」
「それは?」
「あいつは自分の能力を理解していないし使えてもいない。俺が戦ってこの目で見たから間違いない。」
「なるほど、理解してない。それだけでもいい収穫だ。」
「偉そうだな。あいつらにはどう報告する?」
「あいつらって誰のことだ?」
「は?こんな依頼してくるのは10くらいしかないだろ。」
「今回は違うぞ。依頼相手は、逆位置の12だ。」
「は?あいつらとは敵だろ?なぜそうなる」
「そうだな。確かに敵だ。でもそれは表面上だけだ。俺たちタロットの正位置、逆位置が力を合わせたら?とんでもないことになるのは間違いないよな?」
「ああ、それは間違いないが、あいつらが協力すると思ってるのか?」
「思ってるよ。現に依頼を出してきたもんな、『白光』を殺してくれと、」
「っ!!それは本当か?!!」
「ああ、本当だ。これから戦争が始まる。楽しみだなぁ!!!」
正位置と逆位置が対立し始めたのは、ある戦争がきっかけである。その戦争では、正位置、逆位置が同じチームであり、王国を滅ぼそうという目標の上で戦争していて、勝利したのだが、些細なことから対立してしまい、今のように激しい対立になっていた、はずだった。
気が変わったのは逆位置サイドである。王国を従えている逆位置は正位置とも仲直りして、一緒に国を作っていきたいという気持ちが残っていたのだ。
その気持ちが強くなり、『白光』を殺せという依頼を送った。―――
再生少女 @ugen0711
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