2年生編第24話(第50話)勉と華のお泊り作戦会議
修学旅行が終わった次の週、勉はミーティングのため生徒会室に入ってきた。
勉「失礼します。」
団子「勉くん遅いよ〜」
勉「ごめん、先生に授業で分からないところを質問してたら遅くなった。」
勉は周りをキョロキョロ見回していた。
勉「あれ、華さんは?」
三八「あ……華ちゃん具合が悪くて途中で帰ったの。」
勉「そうなんだ。心配だな……」
団子「明日には元気で学校に来ると思うから心配しないでって華ちゃん言ってたよ。」
勉「なら……いいけど。」
白羽「まあ百合根にはまた後日伝えるとして、今月末で俺と卯円は生徒会を引退する。だから次の生徒会長を決めることになるんだが。」
大和「たしか今までだと成績優秀者が生徒会長になる流れですよね。」
白羽「だが、他に生徒会長に立候補した場合、生徒会選挙を行って決めるんだ。」
勉「ということは、他にも候補者がいるってことですよね?」
白羽「確か同じクラスだったはずだぞ。B組の「立田 仁王「たつた におう」」ってやつなんだけど。」
勉「・・・・・・そんなクラスメイトいましたかね?」
団子「確か成績がいつも2位の人だよ。」
勉は考えていたがそんな生徒がいたことに全然覚えていなかったのである。
生徒会選挙の説明を白羽会長に聞いてミーティングはそれで終わった。
勉「失礼しました。」
勉は扉を開けて生徒会室を後にした。
勉「(・・・・・・やっぱり立田って誰だろう。生徒会長に立候補するくらいだから人気のある人だろうと思うけど)」
そんなこと考えていると後ろから男性に呼ばれた。
?「おい真面野!待てよ。」
勉が振り返るとガタイのデカい角刈りのつり目の男がいた。
勉「もしかして立田か?」
仁王「は!?お前、同じクラスなのに俺のこと知らなかったのか?」
勉「ごめん、人の名前覚えるの苦手で。」
仁王「ぐ・・・・・・それで学年成績1位なんだよな。」
仁王は勉に指を差した。
仁王「真面野、俺はお前に宣戦布告する!俺が生徒会長になり副会長に百合根さんを迎え入れる!」
勉「な!?」
仁王「ふふ・・・・・・まだ百合根さんは彼氏いないらしいしな。生徒会長になったらその勢いで百合根さんに告白する!」
仁王はそのまま去っていった。勉は仁王の宣戦布告を聞いて・・・・・・いや、華のことを聞いて冷や汗をかいていた。
次の日の昼休み、屋上でお昼ご飯を食べている華と昨日の話をした。
勉「でもよかった。華さんが昨日途中で帰ったって聞いて心配してたけど元気そうでよかった。」
華「ごめんね、心配かけちゃって。寝たらスッキリしたからもう大丈夫だよ。」
同じく屋上でお昼を食べていた大和と哀羅も生徒会選挙の話を振った。
大和「その生徒会選挙って、推薦文を読むのって百合根先輩ですよね?」
華「たしかそうだよね。」
勉「それって僕だけだよね。立田側に付くことはないよな。」
華「うん、だって私は勉くんの下でやりたいからね。」
勉「華さん・・・・・・」
華「それに立田くんは別の人に頼んだらしいからね。」
勉「それって誰なんだ?」
華「C組の灯台 暗子「とうだい くらし」ちゃんがやるらしいの。立田くんの幼馴染らしいよ。」
勉「そうなんだ。じゃあなんで灯台さんを副会長に推薦しないんだろうな。」
華「あのね・・・・・・はぁ・・・・・・なんでこういうのには鈍感なのかしらね。」
哀羅「それって、つまり・・・・・・立田先輩は百合根先輩のことが好きってことですよね。」
華「そうだと思う。もう・・・・・・本当に男の人って鈍感よね。」
勉「何度も言うなよ・・・・・・」
華「ごめん、勉くんの事じゃなくて。立田くんの事よ。」
勉「立田?」
華「実はね、今日学校に来た時、A組教室のドアの前に暗子ちゃんが立っていたのよ。声掛けたら私に用があるって、教室内にいるかどうか確認していたんだって。」
勉「それで、どんな話をしたんだ?」
華「それは・・・・・・」
華が暗子と何を話したかというと。
華「それで、私に用って?」
暗子「あの、仁王が生徒会長に立候補するって話は聞いてる?」
華「うん、昨日矢立会長に教えてもらったんだ。」
暗子「アイツ・・・・・・急に生徒会長に立候補するって言いだしてさ。真面野くんがいるから無理なんじゃないって言ったら、「絶対勝つ!そして、百合根さんに振り向いてもらう!」とか言って・・・・・・」
華「つまり、灯台さんは立田くんを生徒会長にさせたくないってこと?」
暗子「そうともいうけど・・・・・・今回の生徒会長選挙に勝ったら百合根さんに告白するっていうから。その、もし告白した時なんて返すかなって・・・・・・」
華「え?断るつもりだけど。」
暗子「え、あっそうなんだ・・・・・・」
華の即答に暗子はキョトンとしていたが、少しホッとしていた。
回想シーン終了
華「私の感だと暗子ちゃんは立田くんのこと好きだと思うの。」
勉「確かにそんなに仲がいいのに立田は気づかないんだろう?」
華「「灯台下暗し」ってことわざがあるでしょう?すぐ近くの人ほど分かりにくいものなのよ。」
勉「そういうものなのか・・・・・・」
こうしてお昼休憩が終わった。放課後、生徒会室では華が選挙の台本を書くためノートパソコンとにらめっこしていた。
華「むむむ・・・・・・」
団子「華ちゃん。すごい悩んでるね~」
勉「眉間にしわが寄ってる・・・・・・」
団子「そりゃあ勉くんを生徒会長にするためなんだからさ。真剣になるのも無理ないよ。」
勉「そうだよな・・・・・・僕も頑張らないと。」
華「ダメだ!どう書いていいか分からない!頭に浮かんでいるはずなのに文章にできない。」
勉「その内容ってどんなことを書いているんだ?」
華「よくある勉くんが生徒会長になったらこの学校をどう変えていくかなんだけど。」
勉「それは、勉学を優先して・・・・・・」
華「それだと負けるよ!」
勉は華の圧に押されて「おう・・・・・・」と返すしかなかった。
結局下校時間になっても推薦文は進まなかった。次の日から、掲示板に生徒会長選挙のポスターが張られた。ポスターを見ていた寝待は隣にいる勉に声をかけた。
寝待「今月末か、最後に生徒会長選挙が行われるのって5年も前の話らしいぞ。」
勉「みんな成績優秀者にそのままゆだねてたんだろうな。」
寝待「でも、立田ってみんなの前に出るって性格じゃないだろう。何で立候補したんだろうか?」
勉「それは・・・・・・」
勉は寝待に仁王が生徒会長に立候補した理由を話した。
寝待「なるほどな・・・・・・そりゃあ百合根さんも本気になるわな。」
勉「うん。あんな鬼気迫った顔をした華見るのはじめてで。」
寝待「これは何とか当選するしかないな。普通の生徒会選挙と違ってアピールできるのは当日の演説会のみだからな。」
寝待は頑張れよと勉の肩を叩いた。その日の夕方、下校時間ギリギリまでいた華と一緒に帰ることに。華はまだ選挙の推薦文が完成していないことに落ち込んでいた。
華「はぁ・・・・・・もしかして勉の事まだちゃんと分かっていないのかな?」
勉「落ち込むことないと思うけど。選挙は今月末でまだ時間があるし。」
華「向こうは幼馴染みコンビだよ!お互いのことを知り尽くしている相手だよ!」
勉「華・・・・・・テンションがおかしいぞ。」
華「だって勉のいない生徒会なんて楽しくないんだもん・・・・・・当選させるためにもこの選挙は頑張りたいの・・・・・・」
華はポンッと手を叩いた。
華「そうだ。勉、明日創立記念日で学校休みだよね。それで迷惑じゃなければ、今晩泊ってもいい?」
勉「え・・・・・・なんで!?」
華「私、勉の事もっと知りたいの!このままだと本当に生徒会長の座取られるよ!」
勉「それは・・・・・・そうだけど。」
華「もしかして、家の人に迷惑かかるとか?」
勉「それはない。むしろ母さんは賛成するはず。」
勉はスマホを取り出し、母に連絡した。
勉「いいよって。赤飯炊こうかって言われたけど断ったよ。」
華「ありがとう。じゃあ今晩一緒に作戦立てよう!」
勉「おう!」
華は着替えを取りに一回家に戻り勉の家に向かった。
華「おじゃまします。」
兼備「いらっしゃい華ちゃん!ゆっくりしていってね。」
華「はい!」
兼備「ご飯今から食べるけど華ちゃんもよかったらどう?」
華「いいんですか?」
食卓に案内された華は勉と父の優斗とご飯を食べることに、今日はさんまの塩焼きにきんぴらごぼう。いわしのつみれ汁などの魚メインの料理だった。
華「はむっ・・・・・・これ美味しいですね!」
兼備「そう?お口に合うかなって思ったんだけどよかったわ!」
勉「いわしには脳の働きを良くするDHAなどの不飽和脂肪酸を多く含んでるから勉強するには大切な栄養素だな。」
兼備「も~勉ってばそんなことばっかり言って~」
勉「え?何か僕悪いこと言った?」
兼備「別に~華ちゃん大変でしょ。こんな難しい話を毎回聞いてると頭痛くなるわよね。」
華は考え込みながら
華「でも、楽しいですよ。いろいろと知識が増えますし。」
兼備「ほんとうによくできた彼女さんだこと!」
華「勉、御母さまって毎回こんなテンションなの?」
勉「うん、まあな・・・・・・」
優斗「兼備さん。華さんが引いてるよ。もうちょっとテンション下げないと。」
兼備「あっ、そうね・・・・・・ごめんなさい、優斗さん。」
優斗に注意され、反省した兼備だった。ご飯を食べ終わった後、華がお風呂から上がり兼備から借りた薄いピンクのパジャマを着て勉の部屋に入ってきた。
勉「じゃあ僕もお風呂入りに行くか。」
勉はお風呂に入りに部屋を出て行った。
勉「(いい匂い・・・・・・同じシャンプー使ってるとは思えない香りだったな)」
華「さて・・・・・・私も自分のやることやらないと・・・・・・」
と、ローテーブルに生徒会から借りたノートパソコンを広げた。お風呂から上がった勉は黒のパジャマを着て部屋に戻ってきた。
勉「華、進んでる?」
華は涙目で勉を見つめた。
華「づどぶ(勉)~~~~!」
勉「なっ!どうした!?」
華「やっぱ全然進まない~!」
勉「あのさ、とりあえず内容見せてもらえない?まずそれ見ないと先に進めないというか。」
華「そうだね。これなんだけど・・・・・・」
華は勉にノートパソコンのディスプレイを見せるとびっしりと文字が・・・・・・あるわけでなく2行ぐらいの推薦文だった。
勉「全然書いてないな・・・・・・」
華「本当は完成するまで見せたくなかったんだけどね・・・・・・」
勉「そっか・・・・・・やっぱり生徒会長になったらどんなことをしたいとかいうべきなんだろうな。」
華「うん。でも勉の事だから真面目なことを言って逆に支持率を下げてしまいそうだし。」
勉「それは・・・・・・僕はそう思わなくても周りはそう思うかも・・・・・・。」
華「あのさ・・・・・・この話、勉の両親に聞いてみない?」
勉「なんで?」
華「今と昔でどこが変わっているか。変わってない部分があったらそれを変える提案を出すやり方なんだけど。」
勉「そうか、初代OB・OGに聞いたら何か分かるかも。」
華「勉も分からない問題があったら先生に聞くでしょ?」
勉「そうだよな・・・・・・親族だからその感情がなかったわ。」
勉と華はリビングでテレビを見ていた兼備と優斗に相談することにした。
優斗「生徒会長選挙か、懐かしいな。」
兼備「私たちの時は5人ぐらい他の立候補者がいてね。どうやって優斗さんを生徒会長にさせるか、いろいろ考えたものよ。」
勉「それで、母さんはどうやって父さんを生徒会長にしたんだ?」
兼備「それわね・・・・・・」
華・勉「それは・・・・・・」
兼備「私の演説のおかげだからよ!」
華と勉はその場でズッコケた。
優斗「まぁ・・・・・・これは参考になるかどうか分からないんだけど。」
勉「な、何?」
優斗「卒業してから10年経った後、同窓会があったんだけど。当時のクラスメイトたちが高校を卒業して別れたり結婚したとしてもその後合わなくて離婚したりと今に比べて別れることが多かったんだ。」
勉「そりゃあそうだろ。付き合わないと卒業できないわけなんだから。仮初めのお付き合いだってあるわけだろ。」
兼備「そうね、でももったいないよね。それならこんな校則無くせばいいと思うけどね。」
勉「無くすか・・・・・・それもいいな。」
華「勉?」
勉「華。これで行こうと思う。」
勉は華にとある提案を出した。華もそれに賛成した。それから月日が経過し生徒会長演説当日を迎えた。ステージ端に勉と華が待機していた。
華「勉くん。緊張してる?」
勉「緊張?あんまりしてないかも。華さんが最初に発表してくれるからかな?」
華「それに、まずは立田くんたちが最初だからね。」
勉「でももうすぐ発表なのに立田たち遅いな・・・・・・」
その時、急ぎ足で階段を上る足音が聞こえ、仁王が上がって来た。
仁王「おいお前ら!暗子を知らないか!?」
勉「いや、見てないが?」
仁王「アイツ、どこにもいないんだ!」
勉・華「何!?」
第50話(完)
がり勉くんと百合根の華さん 白絹照々(しらぎぬてるてる) @shiroteru
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