第3話 衝撃の事実

 俺は目が覚めてすぐに彼女に連絡した。

 もしかして、自殺するつもりじゃ・・・俺は怖くなった。

 もう、夜12時くらいだった。彼女は夜更かしな方だから起きていると思っていた。2コール鳴っただけで、彼女は電話に出た。嬉しそうだった。毎晩俺からの電話を待っていたのかもしれない。


「江田さん!」

「どうしてるかなと思ってさ」

 俺は相手に期待させないようにそっけなく言った。

「初めて自分から連絡くれたね」

「そうだっけ・・・元気?」

「そうでもない」

「って、どういうこと?」

「何でだと思う?」

 俺はどうでもいいクイズを出されてイラっとする。

「実は私・・・」

 俺は固唾を飲んだ。

「つわりがひどくて」

「え、妊娠してるの!?」

「う、うん」

 うわ~最悪の展開。俺はやばいなと思った・・・養育費請求される・・・会社にもばれるかもしれない。崖から突き落とされたような心境だった。


「あ、お大事に。じゃあ」

 俺は電話を切ろうとした。

「待って!江田さんの子だよ」

「え、そうなの・・・俺、子ども嫌いなんだよね」

「ひどい。子どもに聞こえちゃうよ」

 ああ、そうだ。ひどい親だなと思うが、もう逃げるしかない。

 俺はふと思った。

「大事なものを預かってるって・・・。もう妊娠してたんだ」

 もしかしたら、大事なものをさずかっているって言ったのかもしれないな・・・。大喜利かよ!

「うん。最初は堕ろそうか迷ってたけど、江田さんが結婚しようかって言うから・・・」

「え・・・そんな。早く言えよ!」


 慰謝料100万払っておけばよかった。

 ずいぶん高いなと思ったけど、そうじゃない・・・。

 俺は愕然とした。その100万で中絶するつもりだったんだ。


 俺は笑った。馬鹿か俺は。155万ケチったせいで、養育費を大学まで払い続けないといけないなんて・・・。

「今、妊娠6カ月なんだ」

 女はしんみりと言った。その月齢だともう堕ろせない。

 まあ、いいか・・・俺は笑いが止まらなくなった。

「うちの親が会社に行くって言ってたから、よろしくね」

 彼女は笑っていた。

 その後の言葉は全然頭に入って来なかった。


 

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縁切りの作法 連喜 @toushikibu

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