第2話 別れ方

 その次からは会ってもなにもしない。手もつながないし、触らない。俺もむすっとしていて、笑わないようにしていた。そして、何かあると舌打ちする。会ってすぐダメ出し。人をチクチクといじめるのは快感だった。どんどん委縮していき、自分に自信がなくなっていくのがわかる。前は明るかったのに、笑顔が引きつっている。


 俺たちはある日曜日の昼下がり、〇〇駅の前で待ち合わせていた。女はミニスカートの上にスケスケの長いスカートを重ねた服を着て来た。俺は前からそういうデザインが嫌いだった。

「その服。何?」

「え?かわいくない?」

「お母さんの服着てんの?」

 そうやってずっと貶し続けていた。そうすれば、女が去って行くかと思ったからだ。外見、髪形、香水、服、食べ方、スタイルとかをいつもいじっていたら、相手は精神的に参ってしまったらしい。


 でも、次いつ会える?っていうのは彼女から聞いて来る。

 それで2カ月くらい会っていた。

 電話もかかって来る。

「どうしてるかと思って・・・」

「別に」

 俺はそっけなく言う。彼女は今日こういうことがあってさぁ・・・と話し始める。俺は「うん、うん」と相槌を打っている。それだけ。でも、ずっと話している。俺からは喋らないし、電話も掛けない。


 ある時、あちらから「私のこと嫌いだよね」と聞かれた。俺は「やった!」と思った。 


「答えられない」

「そっか・・・嫌いなんだ」

「今までありがとう。江田さんのこと好きだったよ」


 俺はちょっと嫌な予感がしたが、155万円取られなくて済んでほっとしていた。彼女とのデートはサイゼ、ガスト、マックなどで回していて、しかも割り勘。金がないと言って、デート代は出させていた。10代の子だから、カラオケ、映画、遊園地などに行きたがったが、相手に払わせた。俺と歩けるんだからそれぐらい払えという気持ちだった。俺ははっきり言ってあんなブスと付き合う必要なんか全然なかった。ただ、未成年とやりたいという淫らな欲求だけでそうなってしまったんだ。


 俺はほっとして、土日に予定を入れるようになった。出会い系は懲りたから、マッチングアプリを使うようにした。失敗から学んだおかげで、実際会う前に何枚か写真を送ってもらうか、ビデオ通話で話すようになった。それで見て、あまりかわいくない子とは会わない。


 でも、彼女から連絡が来なくなると、ちょっと寂しくなって来た。あんなに従順な子はいない。整形したりして、もっとましにならないかなと思ったりした。連絡、来ないかな・・・。俺は待った。しかし、来なかった。あっちも俺を忘れたんだったらよかった。俺がもしあいつと会ったところで、また嫌になって、どうやって別れようか、となるだけだ。


 俺は夢を見た。女から電話がかかって来る。女が一方的に喋っていて、俺はまた愛想のない対応をする。すると、「私、今から〇〇〇ビルの屋上から飛び降りるから!」と言い出す。「早まるな!」俺は慌てて現場に駆け付ける。そして、屋上を見上げた途端、上から人がダイブして落ちてくる・・・。


 俺は悲鳴を上げた。


 ギャー!!!!!


 そして、アスファルトの道路に激突。


 体がバラバラになり、脳が飛び散る。




 


 

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