第2話 650円の彼女
1995年6月、柏田結衣はアイドルになったらしい。
「みんな、結衣の歌聞いてくれるかな?」と書かれた見出しと
まだ少しだけあどけなさが残るたんぽぽみたいな彼女の笑顔。
きっと当時は、彼女に夢中になった人が、数多く存在したのだろう。
あれから柏田結衣は「推し」になった。
暇さえあれば神保町へ通い、彼女が載ってる雑誌を見つけては何冊も購入した。
結衣がリリースした曲をダウンロードし、動画サイトを漁って当時の結衣を堪能した。
私の柏田結衣オタクライフは実に充実している。
27年前に結衣と出会い、今のように過ごしていたら・・
私が結衣と同じ時代に生きていたら・・と結衣を見る度にそう思う。
ただひとつ、結衣を知っていく上でわかったことがある。
それは、彼女はもうこの世に存在しないということだ。
20歳の時、ドラマの撮影現場に向かう途中で交通事故に遭い帰らぬ人となった。
結衣には叶えたい夢があった。
それは、女優になること。
アイドルと並行して女優業にも精を出していた結衣は、お芝居の楽しさを学び
自分ではない誰かになることへの好奇心と女優としてのやりがいを感じていた。
なのに、志半ばで結衣の夢は風とともに去っていたのだ。
もしも、この世にタイムスリップできるマシーンだかなんだかあれば
結衣に会いに1995年のあの日に行きたいと願う。
そして、彼女がこの先もずっと生きて夢を叶えられるようにあの事故が起きないようにしたい。
神様、どうかお願いです。
私と結衣を会わせてください。
私は、毎日そう願った。
彼女の未来に祝福を @snow_kiss
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