第2話断れた提案が……
汐見凪咲の意外な姿を見てしまった翌日。
昼休みに突入し、昼食を摂らずにそそくさと教室を抜け、図書室へと向かう。
ランチバッグを胸に抱え、図書室のある上のフロアへ階段で上がる俺。
すれ違う生徒は上級生ばかりで、身を縮めて歩み続ける。
図書室に到着し、閉じられた扉のくぼみに片手の親指以外の指を引っ掛け、スライドさせて入室する。
カウンターの机の中央に置かれた『図書室 入室管理帳』とある紙に、入室時刻、学年、クラス、氏名を記入し、図書室の奥に位置する学習室へと歩み出す。
学習室は飲食禁止とされておらず、昼食を摂る生徒が少なからずいる。
俺もそのうちの一人だ。
学習室の扉の脇に置かれた腰の高さもない本棚の前で一冊の文庫本を開きながら突っ立っている女子が視界に入る。
彼女の横を通り過ぎ、学習室の扉のドアノブに手を掛けた寸前に呼び止められた。
「待って、後輩くん。君と話したくて、待ってたんだ。良いかな?」
呼び止めた女子に向かい合って、刹那の沈黙をつくり、
「は、はい……」
緊張の色を滲ませた声で応じる俺。
学習室を見わたし終えた彼女——汐見凪咲が手近なパイプ椅子を引き寄せ、膝と膝が接触しそうな位置に落ち着かせる。
右側には起動したパソコンがある。
「昨日は、断ってごめんね。ついきつい言葉が出て……」
「いえ……お、オレも申し訳ないって。ああ断られても仕方ないなって……すみませんでした、汐見先輩」
「そんな……」
彼女は両膝の上で手をつけて指を忙しなく動かす。
「あの、さ……後輩くん、が良いなら……その、一緒に帰りませんか……?」
彼女の顔に浮かぶのは——
彼女の膝が俺の膝と接触しそうな至近距離で、正面に向かいあい座っているのはまるで夢を見ているようだ。
抱いたのは恋慕の情か、憧れか 闇野ゆかい @kouyann
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