抱いたのは恋慕の情か、憧れか
闇野ゆかい
第1話シビれた出逢い
はあぁー、とため息がつい漏れてしまった。
校内では部活に所属していない生徒らの賑わう声がちらほらと聞こえたり、吹奏楽部が奏でる楽器の音色が流れている。
校庭や校舎から離れた位置に建てられた体育館からは、運動部の威勢のいい声が聞こえてきている。
静寂な刻が流れる図書室には、そんな雑音に悩まされることはまずない。
主に本棚から書籍を取り出したり戻す物音や書籍のページを捲る物音くらいだ。
射し込む夕陽の光りが開けている文庫本を照らした。
虚しい、虚しすぎる……
話せるクラスメイトは居るには居るが、会話が長続きしない。友人と呼べる者はいない。
思い描いた華々しい高校デビューは、失敗し……虚しく散って孤独といってなんら差し支えない日々を送っている。
唯一の救いは、イジメに遭っていないということだ。
本棚から抜き取って読み始めたが、興味をそそられることもなくペラペラとページを捲るだけで、暇潰しにすら値しなかった。
下校を促す放送が流れるには四十分も余裕があるが、席を立ち帰宅することにした。
通学鞄を肩に提げ、図書室を抜けて廊下に出る。
廊下を歩み続け、階段に差し掛かった廊下のつきあたりを折れて、階段をおりていく。下の階のフロアの階段をおりきると微かに聴き慣れない曲が空き教室から漏れていた。
曲が漏れ聞こえる空き教室に忍び足で近づいていき、扉の前で屈みながら扉に手を掛け、物音が聞こえないようにそっと開けて教室内を覗く。
覗いた俺の瞳に映った光景は——呼吸さえ忘れさせるほどのものだった。
意外な人物が、普段から纏っている
俺には高嶺の花すぎる美少女——
これほどの高揚感を感じたのはいつぶりだろう、と彼女のダンスを見つめた。
彼女の背後で夕陽が窓を突き抜け射し込んでいるのが相俟って神々しくも感じられた。
彼女の運動神経の良さは噂で耳にしているが、それでも……普段の彼女からは想像出来ないダンスのパフォーマンスだ。
先輩と繋がりのある同級生が彼女を話題に挙げても、聞かない出来事だ。
曲が終わり、スマホを置いていた机に歩み寄りスマホを操作し始めた彼女。
パチ、パチパチパチ、パチパチパチパチパチ……
俺の拍手に気付いて振り返った彼女。
額に浮いた汗を片手の甲で拭いながら、呼吸が僅かに乱れたままに呟く。
「見られてたんだ……」
「は、はい……」
俺の裏返った返事が教室内に響く。
「ぷっ、うっ裏返りすぎじゃない声っ」
堪えきれずに笑い声を吹き出し、指摘した彼女。
「っ……」
恥ずかしさのあまり、足もとに視線を落とし俯く俺だった。
「ご、ごめんね。ついおかしくて……」
「……う、上手いですね、ダンス」
「ありがとう……後輩くん」
はにかみながら返す彼女。
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