ゆめうつつ。

ヲトブソラ

ゆめうつつ。

ゆめうつつ。


 顎が外れる程の大きな欠伸をひとつする。でも、実際に外れた事は無いし、多分、外れない。しかし、人間には最悪を想定しておくという事が大切だ。想像力を働かせ、普段からの心構えひとつで、その後が変わるなんて事は往々にしてある。


 カーテンを開けて、今日一番新しい太陽を部屋にお招きした。よし、今日も太陽は壊れていないし、空にはUFOが飛んでいる。大丈夫、世界は正常だ。しかし、わたしたち地球内生命体が未だにUFOと呼ぶのはどうなのだろうか。今や税金が安い事から自動車から乗り換える人も多いし、燃料には生ごみを使うから経済的かつ環境にもよろしい。普段から乗るものだから、ただの<Flying Object>、つまり飛行物体と呼ぶべきなのではないだろうか。……それとも『UFO』は商標登録されていて、容易に呼ぶ事が出来ないのか。世の中、妙な事でお金を稼ごうとする人がいるのだから、よく分からん。実は、最近になってサボテンを介して簡単にUFOと交信出来る事が分かったが、まだ試していない。………うちのベランダにもあるサボテンが言葉を話し、聞いて、相手に伝えるのが生理的に怖いからだ。どうするよ?夜中、急に話しかけられたら!もう何かをお漏らしする話で済むはずがなかろうて。


 本日も晴天也。歩道のアスファルトに生える雑草はわたしの背をゆうに超え、はるか2メートル弱はあるだろう。たんぽぽの花も直径50センチはあるだろうか。あと少し季節が進めば、小学校低学年の子どもたちが、たんぽぽの綿毛の束を手に持ち飛距離を競う神事が有名な祭りが来る。諸説あるものの、梅雨の雨量や田畑の生育についての………なんとかを願ったものだったと思う。確か、そんなのだった。

 線路のガード下を通ろうとしたが水没していた。恐らく、昨日、うなぎと共に降った雨のせいだ。せっかく見付けた近道なのに………こんな時に折り畳みの、お一人様ボートが欲しくなる。この水位ならどうにか天井に頭を打たずに向こうまで…………あれ?こっちより、向こう側は土地が低くなかったか?つまり、向こうは水浸し、いや、ちょっとした池、もしくは湖か。しっかり天気予報の長靴情報を見ておくべきだった。仕方が無い、コンビニで長靴を買って、もうひとつ向こうのガードから駅に行こうか。


 駅のホームは毎日のように通勤客で溢れていて、こんなに細いホームだというのに、皆、押し合いへし合いで自分の場所を確保しようとしている。たまに………本当にたまに、思う。息が苦しいから深呼吸をする一瞬だけでも、みんな消えてくれないかなあって。


 こう…………指をぱちん!と鳴らしたら………………、




 消えた。


 うそ。

 まじか。


 そうは思ったけれど、起こった事なのだから現実である。私は運がいいな。こんな事があるんだな。そう思って、ゆっくりと息を吐いて、腕を広げて、肺を大きく膨らませようと思った。その瞬間、うんざりする程に騒ぎ出す駅の雑踏。腕なんか広げる事なんて出来やしない。ついでに空にはUFOなんか飛んでいないし、なんなら大きなたんぽぽや綿毛の祭りなんかも無い。ひとつだけ、雨で水没したガード下だけは本当。


 後は全部、物書きの嘘や空想である。

 これを創作だなんていう。


おわり。

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ゆめうつつ。 ヲトブソラ @sola_wotv

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