この物語の舞台は、機械と魔法が程よく混在する世界。
この世界の機械は魔法にはやや劣るものの、その手軽さからの需要が高く、魔法使いでなくとも使える便利さから、庶民の人気も高かった。
機械屋の集う、世界の技術の中枢を担う街に、ある日、魔王の使いがやってきた。
『この街で一番腕の良い機械屋を寄越せ』
その要求に、街の住人たちが結託し、ひとりの機械屋を人身御供として差しだした……。
その機械屋は、若くして工房を持つほどの凄腕ではあったが、あまりにも偏屈だったために、同族に裏切られたのだった。そして、魔王城へ連れ去られる。
人間嫌いの魔族たちに囲まれながらも、魔王の依頼をこなしていく主人公に対して、魔族たちの感情に変化が現れ始める……。
そもそも、魔王は何故、機械屋を欲したのか? この世界の人間は、どうして、こうも簡単に同族を切り捨てられるのか? 物語が進むにつれ、こころ優しき魔王と、そうではない人間たちとの違いが見えてくる。
そこが、物語として、とてもおもしろい。
あなたは、どちらの側に肩入れするのでしょうか……?
腕はすこぶるいいものの気難しく、周囲から厄介者扱いされていた機械屋が、突如魔王城に連れていかれるところから物語は始まります。
そこで聞かされた人間側の思惑や魔物の考えなど、常識が覆るような出来事の数々に、機械屋は自分の仕事を全うすることを決める……というかなり王道な流れではありますが、だからこそ、次へ次へと読ませるような文や展開の上手さが際立っていると思います。キャラクターの心情描写も細やかで、自然と感情移入しながら読み進めてしまいました。
ラストも、個人的にかなり好みな展開です……!
職人気質な主人公のかっこよさが見える前半から、勇者や魔王、魔物たちの活躍する後半まで、その面白さを是非、最後まで見届けていただきたいです!!