なきもののうた
佐藤菜のは
なきもののうた
今日はお歌がうたいたかったの
でも先生がここでは静かにしていなさいって言っていた
ずっと暗いところにいる
お腹が空いた
あの日、真夜中に先生に起こされた
いますぐこの部屋を出なさいって
それから手を引かれ目隠しをされ
遠いところに連れてこられた
ここはどこだろう
ここに来てどれくらいたつのだろう
あのお人形はいつなくしてしまったのかな
大好きだったのに
お絵描きもできない
ここはつまらない
お父さまとお母さまに会いたい
どうしていらっしゃらないの
先生は何も答えてくれない
先生の服も髪もぼろぼろだ
ときおりここから出て行き
ほんの少しのごはんを持って帰ってきていた
だけど先生はさっきからちっとも動かないの
だから小さい声でうたってみた
おかしいな思い出せない
いつもうたっていたあのお歌
遠くのほうで何かが震えた
近づいてくる?
ひどい音がする
体が揺れている
とても熱い
ああ、まぶしい
いやな匂い
やめて、やめて
なにか落とした
あれはわたしの腕
ばらばらになっているのは
わたしのからだ
なにもみえない
もうおうたもうたえないのね
どうか、おとうさまとおかあさまと
かみさまのもとにいけますように
なきもののうた 佐藤菜のは @nanoha_
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