レベルMaxのチート神器持ち&攻略本つきで行くダンジョン探索は飽きる


 転移結晶でのひと悶着があったものの、ダンジョン探索はスムーズに進んでいった。

 

 というかそれはまあスムーズに進むわなって話であった。


 だって俺には本の神器があるのだから。そんでもって本の神器を使って一通り調べ終わって情報を知ってるのだから。

 それでいて、俺は最強レベルというか文字通り世界最強だし、イトも神器・短剣やら紋章指輪やら、ミスラの指輪やらがあって普通に強いんで道中の魔物はゴミと変わらない。

 というか割と忘れがちやけど主従契約の儀やってるから、イトは俺という理外の領域にまで踏み込んでいる存在の魔力を半分も持ってるからな。

 それこそ、まだイトは魔法が得意じゃないから魔力の持ち腐れみたいな部分はあるが、適当に莫大な魔力を垂れ流すだけで大抵の敵は木っ端みじんに出来るくらいの力はある。そんな訳だからイトは装備がなくても普通に強い。

 

 でだ、そんな俺とイトからしてみれば、ダンジョン攻略は余裕も余裕、余裕過ぎて困るってくらい余裕なわけだ。


 探知魔法やら空間魔法・空間把握を使って積極的に階段を探して降りていき、魔物も出て来た瞬間に俺の銃で撃ち抜かれるからイトに切り刻まれるかの悲しき2択を突き付けられることとなる。罠も意味ないし、特殊な仕掛けなんか出て来ても本の神器のおかげで事前に知ってるからいとも簡単にクリア出来てしまう。


 気が付いたら20階層のボス部屋まで辿り着き、ボスを文字通り瞬殺。 

 宝箱からも碌なモノが出ず、21階層に進み、これまたすぐに30階層のボス部屋まで到着する。

 そんでもって、20階層のボス部屋と同じように文字通りの瞬殺をする。

 で、宝箱も余り良い物はなく、31階層に進みって感じで飽きて来た。


 そう、飽きて来たのだ。


 最初の10階層くらいは楽しかったし、イトとイチャイチャしながら進んでいったから、そんなに退屈感もなかった。

 ただ、20階層を過ぎた辺りから、同じことの繰り返しのようなことがしてきたんだ。


 歩いて魔物が出たら瞬殺して歩いて魔物が出たら瞬殺して、知ってるギミックをクリアしていって罠を避けて、階段を見つけたり、降りて、また繰り返す。

 

 Q・これ楽しいか?


 A・楽しくないわな。


 以上。終わり。


 


 

「イト、ダンジョン探索楽しいか?正直に話してくれ」


「ご主人様と一緒にいればどこにいても楽しいです」 

 メガネの神器で見る。本当と出る。

 イトは嬉しいことを言ってくれるな。 


「いや、違う。そうじゃない、そう意味じゃない。ダンジョン探索そのものが楽しいかどうかって話だ?因みに俺は楽しくない、というか飽きた」


「イトも正直に言えば余り楽しくないです」

 メガネの神器で見る。本当と出る。

 イトも俺と同じ気持ちなようで安心したわ。あぶねえ、これでイトはダンジョン探索楽しいですって言ったらどうしようかと思ってたわ。


「そうか、じゃあどうする。一旦切り上げるか?」


「そうですね。切り上げてもいいですけど、その後何をしますか?」


「何をするかって・・・ああ、そうだな・・・」

 そして俺は気が付く。

 俺が一人であれば暇つぶしの手段は結構あるけど、イトと一緒にとなると暇つぶしの手段が大きく減ってしまうという事実に。


 例えば俺一人であれば、本の神器を使って好きな漫画やら小説を読んで暇を潰せる時、新しい魔法の本を探したりして、魔法を覚えてもいい。

 紋章の実験もまだ途中だし、255階層にいる、あの理外の領域の化け物たちとも会って話がしたいし。

 後はせっかく手にいれた永遠の拳銃についての実験も一人でじっくりと行いたいし、転移結晶もとい人工ゴーレムやらダンジョンコアを作成した世界最高の錬金術師ってのも調べてみたい。


 ただ、イトと一緒となると、どうだ?

 

 どれもこれもイトと一緒にするのは難しい。非常に難しい。出来なくはないが、イトが楽しめない可能性が大きくある。

 でも、イトは大切だし、イトを蔑ろにすることなんてのは出来ない。絶対にできない。


 クソ、俺はどうすればいいんだ。


「あのう、ご主人様。もしもイトがいるせいでご主人様のしたいことが出来ないのだったら、イトの事は放っておいてもいいですよ」

 イトが俺のことを気遣ってか優しい提案をしてくる。ただ、メガネの神器で見ると、言葉に偽りはないものの、寂しいというオーラが出ていた。


「いや、そんなことは絶対に出来ない。俺もイトも一緒に楽しくないと駄目だ。もしくは俺がいなくてもイトが楽しく何が出来るような状況を作らないと駄目だ」


「ご主人様、ありがとうございます」


「イト?何かしたいことはあるか?イトが一人で出来ることでもいいぞ」


「そうですね・・・、あ、そうです。イトはお勉強がしたいです」

 お勉強って、おをつけるの可愛すぎだろ。

 しっかし、勉強か、う、頭痛が吐き気が、俺としては勉強には余り良い思い出がないな。具体的にはテストとかテストとかテストとかテストとか入試とか過去問とかテストとか。

 だけど、イトが勉強をしたいって言ってるんだ、その意思を尊重しなくちゃな。

 しっかし、勉強するって言ったら独学じゃあ限界があるし、間違った知識がついてもあれだし、しっかりとした教育機関、それこそ学園とか・・・あ。

 そうやん、俺とイトは今、山田学園の入試が始まるまでの約1か月間の暇つぶしを求めてたな。

 さて、どうしようか・・・。

 

「あのう、ご主人様、イトはお勉強といっても、そんなに大した感じじゃないです。その、イトの住んでた村は本すらろくになり小さな村だってので、イトは自分の名前の字を書くのが精一杯です。だからこそ、学園に入る前に字くらいはしっかり書けるようになって、簡単な計算も出来るようにはなっておきたいなって・・・後は、勉強が出来なくて山田学園の入試に落ちたら嫌だし、落ちなくても勉強が出来なくてご主人様と同じクラスになれなくても嫌ですし」

 俺が思いの外深く考え込んでしまったせいで、早口めで俺に説明をしてくれるイト。

 そんなイトの言葉を俺は理解した上で、自分の配慮のなさというべきか、物事を深く考えていなかった点を猛烈に反省した。

 何故なら、イトの言葉はこれでもかってくらいにその通りだからだ。特に入試に落ちる可能性や、違うクラスうんぬんかんぬんの所とかもだ。


 正直俺は腐っても日本にて高等教育を受けていたし、最悪メガネの神器を使えばカンニングし放題だから絶対に落ちないだろうと腹をくくっていた。。

 だからこそ、完璧にイトの事を忘れていた。いやまあ実技試験があれば余程なことがない限りはイトも100点以上出すだろうから、問題はないと思うけどね。それでも筆記試験で悪い点をとったらどうなるかは分からない。

 イトの考えている通り、もしかしたら俺だけ優れたクラスに入れられてイトは別のクラスなる可能性もある。

 そうなったら職員室に凸って直談判しに行くけど、まあ、そうならない方がいいには決まってる。


「そうだな。その通りだ。よし、じゃあ俺がイトに勉強を教えてあげよう」


「え?いいのですか」

 イトの顔がパーって効果音が付くくらいに明るくなる。可愛い。


「ああ。もちろんだとも、俺がイトの先生となって優しく教えてやる。それにこうして飽きが来ているダンジョン探索をするよりもイトに勉強を教えた方が楽しそうだ」

 これは心の底からの事実だ。

 少なくとも今こうして飽きが来て、さして面白くもない退屈な作業となったダンジョン探索をするよりかは可愛い女の子であるイトに小学生低学年レベルの俺にとっては非常に簡単な勉強を手取り足取り優しく教えるって方が絶対楽しいだろ。

 え?なんか卑猥でエロい?

 いやまあ、そこはご愛嬌って奴だろ。あまり気にすることではない。


「ありがとうございます。ご主人様、じゃあイトに勉強を教えてください」


「おう、もちろんいいとも、じゃあ一旦宿に帰るか」


「はい、そうですね」


「よし、じゃあ集団転移」


 かくして俺は転移で宿まで帰った。

 

 

 

 ――――――――――――――――


 因みに勉強いっても、割とすぐに終わりますし、色々あってまたダンジョン探索に戻ります。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

余り物の神器には福がある ダークネスソルト @yamzio

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ