小石、狸、蛇
お前は坂道を転がる小石だ。唯一の長所すら生かせず転がり削れていく小石だ。何者でもなく誰でもない、ただの砂へと落ちる落伍者だ。産まれた頃から疎まれ避けられ見向きもされなかった憐れな落とし子。お前が砂へと変わる過程で、一体どれほどの心労が交差しただろう。今も転がる憐れな小石。お前の行き着く先にはきっと、憐れな骸の山があるのだろう。
火の番をサボった者に返る熱など無い。お前の求める家族の熱はとうの昔に失われてしまったぞ。娘は気が触れ、息子はひねくれ、妻は転がる小石にただ夢中。誰も顧みなかったお前を見てはいない。お前のスカした父親風も、木偶のような叱責も、すべて曇りガラスの向こう側。娘の目には他人と同じ。憐れ呑んだくれの阿呆狸。畜生劇もこれにて終了。
汚れた目を持つお前の目には、総て汚れて映るのか。産まれた赤子が吐く反吐を、お前は飲み込み蓄えた。黄泉に片足引きずる死臭が目に物見せる家族像。毒の滴る牙に口、濁った目からは膿が出る。お前は間抜けな毒蛇だ。してやったりと噛んだ尻尾が自分のケツだといつ気づく。長きに亘って地を這う蛇は目線も身体も砂塗れ。やがて流れる涙も血膿に染まり、お前は自分の毒で輪廻を回してしまうだろう。
ハキダメ ういろう @uirow
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