第3話
大騒動に巻き込まれたせいで大分遅くなっちゃったけど、私は何とか寮へとたどり着いた。
男女共用の寮で、
どんな人達が住んでいるんだろう? 仲良くできるといいなー。
そんなことを考えながら、玄関から中へ入ると。
「えっ?」
「ん?」
丁度玄関にいた、赤い服を着た同い歳くらいの男子と、目があった。
そして、その人には見覚えがある。
いかにも自信たっぷりといった表情の、イケメンのこの人って……。
「お、俺達系レッド!?」
彼はさっき助けてもらった、俺様系レッドに他ならなかった。
すると彼は、驚いたように目を見開いた。
「お前、何故俺が俺様系レッドだって知ってる!?」
「へ? だ、だってさっき会ってるし」
「バカな。認識阻害スーツが壊れてたって言うのか?」
顔をしかめるレッドさんだけど、彼が何を言っているのかよくわからない。
すると、廊下から複数の足音が聞こえてきた。
「何を騒いでいる」
「赤兄どうしたのー?」
やって来たのは……はうっ! ク、クールブルーさん!?
ううん、それだけじゃない。
天使みたいに可愛いショタグリーンくんに、爽やかスマイルの王子様イエローさん、、同性でもつい見とれてしまう宝塚ホワイトお姉様が、ぞろぞろとやってくる。
「い、イケメンジャー!?」
思わず叫ぶと、全員が驚いた顔をする。
「君、さっきの子だよね。どうして僕達の事がわかるの?」
「妙だね。もしや認識阻害スーツが、機能していなかったとか?」
何を言っているのかさっぱり分からない。
すると、奥からさらにもう一人やって来た。
「やあ、みんな揃ってるね。桃子ちゃん、久しぶり」
「れ、
それは私達より少し歳上の男の人で、イケメンジャーにも負けないイケメンさん。
イケメンジャーの皆さんとは違い、この人のことはよく知ってる。
彼私の幼馴染みで、この池綿荘の管理人でもある、
実はこの寮に入るのを決めたのも、蓮お兄ちゃんがいたからなんだよね。
格好よくて優しい、私の憧れの人なんだもの。
「なんだ紫麗、知り合いかよ」
「ああ。彼女は今日からここでみんなと一緒に暮らしてもらう、披露院桃子ちゃんだよ」
「はあ? 一緒に暮らすだぁ!?」
レッドさんが声を上げたけど、私もビックリ。
一緒に暮らすってことは、まさかイケメンジャーの皆さんも、この寮に住んでるのー!?
◇◆◇◆
私達は寮の食堂へと移動して、自己紹介をすることにした。
俺様系レッドが、私と同じ高等部一年生の、
クールブルーが二年生の、
王子様イエローは一年生の、
ショタグリーンは中等部三年生の、
宝塚ホワイトが二年生の、
「改めてこんにちは、桃子ちゃん。もう気づいてると思うけど、彼らは胸キュン戦隊イケメンジャー。正体を隠しながら、日々秘密結社の怪人と戦っている」
紫麗お兄ちゃんが説明してくれる。でも、ちょっと待って。
「正体を隠してって、皆さんバリバリ素顔で戦ってましたよね?」
あれじゃあ正体バレバレなんじゃ。目を引く容姿だし、きっとSNSに投稿されて、有名になってると思うけど。
すると、青井先輩が説明する。
「戦いの時、俺達はスーツを着ていただろう。あれには戦闘力を向上させるだけじゃなく、認識阻害機能が組み込まれているんだ」
「認識阻害機能?」
「簡単に言えば、どこの誰だか分からなくなる、特殊な電波を放ってるってことだ。そのおかげで正体を隠せていたんだが、なぜお前は俺達がイケメンジャーだと分かった?」
赤尾くんが怪訝そうに睨んでくる。
そ、そんなこと言われても、私にも何が何だか。
すると、紫麗お兄ちゃんが助け船を出してくれた。
「彼女は特異体質でね。俺と同じで、電波の影響を受けない体なんだ。転入前の検査で分かった時は、俺も驚いたよ」
え、私ってそんな、体質だったの?
そういえば、変な検査を受けたっけ。
「なるほど。そいつが特異体質なのは分かったけ、寮に入れるってどう言うことだよ。ここは俺達の基地だぜ。いくら司令官であるあんたの幼馴染みでも、関係ねーやつは入れられねーな」
赤尾くんが不満気に言ってくる。
というか紫麗お兄ちゃん、イケメンジャーの司令官だったんだ。
イケメンの司令官は、イケメンなんだね。なんか納得。
「俺だって、贔屓して入れるわけじゃないよ。ただ、桃子ちゃんが学園に来るなら、遅かれ早かれ君達の正体を知ることになるだろう。ならいっそのこと、協力してもらおうと思ってね」
「協力だあ?」
赤尾くんが顔をしかめると、今度は青井さんが口を開く。
「まあ確かに。正体を知ってるやつを野放しにしておくよりは、近くで監視した方がいいかもな」
「おい、お前まで何言ってるんだよ」
すると、次は黄原くんが。
「僕も賛成。正体を知ってるってことは下手をすると、悪厄レイ嬢に狙われる危険もある」
「狙われるって、またさっきの怪人に襲われるってことですか?」
「大丈夫。そんなことは絶対にさせないから」
そう言って安心させるように、頭を撫でてくれる。
はう──っ! イケメンからの頭なでなでだー!
「僕も。安心して、おねーちゃんは必ず、僕が守るから。僕がおねーちゃんのナイトになるよ」
天使のような笑顔で、そんなことを言ってくれる翔太くん。
か、可愛い! 抱きしめたくなっちゃうよ!
そして、最後に白塚先輩も。
「そういうことなら、もちろん私も賛成だ。妹ができるのも悪くないしね。と言うわけで賛成多数だけど、正人はまだ反対?」
「……ちっ、分かったよ」
白塚先輩に言われて、赤尾くんはバツの悪そうな顔で答える。
「もちろん桃子ちゃんにも、やってもらうことはある。実はこの池綿荘では、入寮生が食事の用意や掃除をすることになっているんだけど、イケメンジャーとして活動しているとどうしてもそれらが疎かになってね。家事を担当してもらうことが多くなると思うんだけど、良いかな?」
「はっ、そりゃあいい。面倒な家事はコイツに任せられるってわけだな。おい、話は聞いたな。お前はこれから俺達の飯使いとして、キリキリ働いて……」
「やります! 料理でも掃除でも、飯使いでも奴隷でも何でもやりまーす!」
間髪入れずに答える。
だってそれくらいでこのイケメンパラダイスに住めるのなら、おつりがくるもの。
赤尾くんは「お、おう」と若干引いてるけど、これから頑張ってサポートするぞー!
幸い私は家事全般は得意。料理教室の先生をやってるお母さんから教わった料理の腕には、少し自信があるの。
紫麗お兄ちゃんもそれを知ってて、ここに入れたんだろうなあ。
「決まりだね。それじゃあ桃子ちゃんの部屋だけど。白塚さん、案内お願いできる?」
「了解。桃子ちゃん、行こうか」
「はい」
そう言って白塚先輩は、部屋へと案内してくれて、そこには机が2つ並んでおり、二段ベッドがある。
「それじゃあ桃子ちゃん。今日からルームメイトとしてよろしくね」
「え!? し、白塚先輩と同室なんですか?」
「あれ、言ってなかったっけ? 私としては嬉しいんだけど、桃子ちゃんは私じゃ不満かい?」
「い、いえ。そんなことありません。ただ、私なんかが先輩と同室だなんて、恐れ多いと言うか」
同じ寮ってだけでも衝撃なのに、同じ部屋って。
すると白塚先輩はイタズラっぽくクスクスと笑って、腰に手を回してくる。
「そんなことないよ。私は君に、ここに来てほしいんだ」
「で、でももしイビキでもかいたり、恥ずかし所を見られたりしたらと思うと」
「ダメ? 私は桃子ちゃんのこと、たくさん知りたいんだけど」
「し、白塚先輩……」
「先輩じゃないよ。私のことは、宝って呼んでほしい」
「た、宝お姉様……」
「ふふっ、いい子だ。桃子ちゃんみたいな可愛い妹ができて嬉しいよ」
そう言ってにっと笑うと、頬にそっとキスをされた。
きゃーーーー!
きゃーー! きゃーー! きゃーー!
本気なのか、それとも面白がってふざけているのか分からない。
ただこのままだと、空気にのまれて私の頭が頭がおかしくなりそう。
どうしよう。
素敵なイケメン達や蓮お兄ちゃんと一緒の寮生活が送れるという甘い誘惑に釣られて、つい二つ返事でここに住むことにしたけど、心臓が持つかどうか。
もし『15歳の女子生徒、寮で死亡。死因はキュン死に』って新聞に載ったら、きっと親戚一同頭を抱えちゃうよ。
キュン死にさせようとしてくるのは、宝お姉様だけじゃない。
も意地悪な事は言うけど不思議と嫌な気はしない赤尾くん。
冷たく鋭い目で見つめられると、ズキューンと胸を撃ち抜かれたみたいになってしまう青井さん。
女子なら誰もが惹かれるような優しげな笑顔と穏やかな物腰の黄原くん。
天使みたいに可愛いけど、守るだなんて言ってくれてギャップを見せてくる翔太くん。
それに小さい頃から憧れていた、紫麗お兄ちゃんがいるんだもの。
いつ幸せで昇天しちゃっても、不思議はないのだ。
はわわ。もしかしたら秘密結社より、イケメンジャーの方が危険なかもしれないよー。
まあ何はともあれそんなわけで、私はイケメンジャーのサポート役として、彼らと共に池綿荘に住むことになりました。
この後、私自身が第6の戦士美少女ピンクになったり、裏切りの戦士ヤンデレブラックが私達の前に立ちはだかったりするんだけど、それはまた別のお話。
西映学園の愛と平和を守るのため、負けるな胸キュン戦隊イケメンジャー!
おしまい♪
胸キュン戦隊イケメンジャー! 無月弟(無月蒼) @mutukitukuyomi
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