女神に間違えて異世界転生されたのは二人だったんだけどどっちもミスとかって正気ですか?~ここになにか書かなくちゃいけない??~

ちびまるフォイ

第1話(最終回)はじめまして異世界 🈡(次回:HNKスペシャル 不登校児との向き合いかた)

「はっ! こ、ここは!?」


ここが異世界であることはタイトルからもわかっていたように、

主人公が目をさますときにはいろいろはしょられて異世界だったのだ!!


「あ起きた?」

「え」


草原で目を覚ました主人公の横には友達がすわっていた。

ちょうど昨日、学園祭の実行委員になるなり出し物を「ありのままの教室」とかいう事前準備ゼロを提案した切れ者の低燃費系の男である。

主人公とは幼なじみという肩書きがほしいということで友達になった付き合いがいいやつである!


「異世界きたから」


「いやその単語ですますなよ。もっとこうっ……!」


「で、本当はおまえが死ぬはずだったわけ」


「あたしかに! ぜんぜんトラックの前に飛び出すとか通り魔に刺されるとかしてない!死にイベントは!?なんの前フリもないまま転生しちゃってた!」


「女神にきいたけど人違いだったんだって。別の人を転生しようとしたら僕がまちがってきちゃって」


「うん」


「あわてて間違ったことに気づいて、再転生しようとしたら、今度はお前を転生させちゃったんだって」


「二次被害!」


しかし! 主人公は気づいてしまった!


友達の口からサラッと「女神」なる単語を聞いていたが、

主人公であるはずの彼はまったく女神との対話イベントをスキップしていたことに!


「ちょちょちょ待ってよ。オレ女神とは話してないよ!?」


「恥ずかしかったんだって」

「は?」


「2回まちがったことを自分の口からは説明したくないからお前のときはそういう解説パートをはさまずに転生させたんだって」


「気まぐれすぎる」


「あともひとつ言ってたのがーー」


友達がなにやら大事そうなことを話そうとしたときに、なんと街の方から「きゃー!」という異世界でいうと学校のチャイムくらい定時に聞こえる悲鳴がはなたれた!!


「これは女性の悲鳴!! いくぞ!!」


主人公は異世界にきたという高揚感と自分がヒーローになれるというテンションで路地裏へ猛ダッシュ。

そこには悪意を擬人化したような見るからに悪そうで、ぶっ殺しても親も悲しまないような。


ボコっても誰からもヘイトを産まない悪いやつが女性を取り囲んでいるではないか!!


「へっへっへ姉ちゃん。ちょっと金を貸してほしいだけだよ」

「や、やめてください! 誰か助けてー!!」


その言葉を聞く前に主人公はとびだしていた!!


「おいそこのお前たち! さっさと消えないと痛い目にあうぞ!!」


普段は消しゴムを女子の足元に落としたことも言えないほどシャイな主人公だが異世界ズハイも手伝って、どうどうと年上になめた口を聞くことができるのである!


「10数えるうちにっ……おっぶっ!!!」


指折り数え始めた主人公のほっぺを悪漢の右フックが貫いた!!これは痛い!!

路地の壁に叩きつけられた主人公はボロボロと涙を流してあまりの痛さに「ぶぉぉ」と言葉にできないうめき声をあげるばかりである!!

悪いやつは拳で言葉を交わす文化があることを主人公は知らなかったのだ……。


「なぁにが、痛い目にあうぞだ! てめぇのようなーー」


それ以上の言葉はなかった。

友達の放った炎の魔法がわずかなケシズミすら残さずに燃やし尽くしてしまった。無慈悲。


「サイコパス……!」


殴られたほっぺを手で抑えながら、友達のやばめな一面を異世界で見てしまった主人公がわずかにつむいだ言葉だった。

一方の友達はすずしい顔で主人公を見た。


「いやピンチぽかったから」


「善意だけなのが逆に怖い」


「それとさっき言いかけたこと何だけど」


「え?」


「なんかチートは僕にしかないって」


「はぁ!? なんで!?」


「ひとりぶんしか用意してなかったからって女神が言ってた」


「そこはふたりぶん用意しろって交渉してよ!」


「いや……いいかなって」


「お前なんか友達じゃねぇ!」


無言で友達が指先を主人公の鼻先につきつけると、主人公は死を悟り「うそうそ超親友」とすぐに撤回できてしまう機転が主人公らしい素質であると主人公はこのさきも信じで疑わないことにした!


「いやそうじゃなくて街」


「へ。俺を焼き殺すんじゃないの」


「街。見てみようよ」


「おたしかに。最初の街を散策しようぜ。あれだろかわいい奴隷とか買っちゃうんだろ!」


「僕、さっきのでちょっと服に火の粉で穴あいちゃったから直したい。服屋をさがそう」


「お前もっと異世界たのしめよ」


悪漢に襲われていた女性からいくばくかの謝礼を受け取った二人は街での買い物へと向かった!

結局お金を受け取るのであれば悪いやつとやること変わらないんじゃないかと思った二人だったがそれを言葉にすることはなかった!

察する心が日本人のいいところだからだ!!


「見ろよこれ! めちゃめちゃかっこいいじゃん!!」


「お客様お気に召していただけましたか」


「ああ!この全身真っ黒なコートに際立って立ってるエリ!めちゃめちゃかっこいい!!」


「そうでしょうそうでしょう。冒険者の間で今トレンドですよ」


主人公は全身真っ黒なコーデにすっかり嬉しくなっていた。

それを見ている友達はドン引きだった。


「ええ……それ着てるやつと隣あるきたくない」


「おまっ……わかってないなぁ! 俺たちの世界の普段着なんかこっちじゃ浮いちゃうだろ!」


「その服のままトイレ行くことになるんだよ?本当に後悔しない?」


「やめろ。冷静な分析するな!」


異世界においては普段着などという概念がない!!

ガチガチにキメたイケイケの服でトイレから寝室まで過ごす必要があるのだ!!

中世の貴族でももっとTPOわきまえた服装をするだろう!!異世界冒険者とはときに盲目なのだ!!


まっくろコーデに身を包んだ主人公はその足で冒険者ギルドへと向かった。


ついでに指ぬきグローブが道中に売っていたのでそれも購入。

女性を助けてかすめた軍資金はすでに底をついていたので友達のチート能力をマジックのように披露することでお金をなんとか工面した。もはや二人は大道芸人である。


「ここが冒険者ギルドかぁ!! うぅ~~! テンションあがってきたぁぁぁ!!」


ちょっとした体育館はあろうかというギルドには甲冑をがっちゃがっちゃならせて歩く冒険者たちが掲示板の前に集まっていた。夏場はあまりにキツそうだなと友達は思った。緊張感はない!!!


「でどの依頼をするんだ?」


「まずはこれだろ! ゴブリン討伐!!」


「もっと他にもいろいろあるが?」


「わっかってねぇなぁ! 最初はこういうちっちゃいやつを倒すのが大事なんだよ!」


「なんで」


「小さな依頼をコツコツ積み重ねて広がっていく冒険者の人脈が醍醐味なんじゃないか!」


「ふうん」


本当はきわどめな服装をしている女冒険者に声をかけて「ギルドの依頼」を理由にお知り合いになりたいという、よこしまな気持ちがあることを友達はすでに察していた!

声をかける勇気がないのでギルドに貢献して知名度をあげて、自然と向こうから声をかけられることを待っているのである!!

積極的なのか消極的なのかわからない陰キャ男子特有のせこい思考である!!これはモテない!!


「まあいいけど」

「よっっしゃ!!」


友達の乗り気ゼロの返事にも主人公は大喜び。

なにせチートもなければ平均的な男子の身体能力より劣る主人公はシンプルに役立たずなのである!


友達がいないとゴブリン一匹どころか冒険者ギルドの女性に声すらかけられない!

大学の進学を諦めて異世界にきたのはある種、神様からの優しさなのかもしれない!!


「ついた」


「お前移動魔法もつかえるのか……さすがチート……」


「歩くと時間かかるだろ」


「ああーーもうこれだもん! かぁ~~っ! 出ました! チートマウント!! 略してチート! ちょっとしたこともチート能力で解決! なんですか、なんの能力もない俺へのあてつけですか! 悪うござんしたね! 黒い服着てる割に弱くて!!」


「うるさいな行くよ」


「あ!まって!俺ひとりだとまじで死んじゃうだろ!!ひとりにするな!保護者だろ!!」


「じゃあキレんなよ」


「離さない?ぜったいに離さないでね!!勝手にいくなよ!?」


「ちょっと黙ってて」


ゴブリンの洞窟に入った二人だった。

友達の腕を必死につかんだ黒服の主人公とその友達の姿は、遠巻きに見るとお化け屋敷に来たカップルにも見えなくもないほど痛々しい絵面にゴブリン側も困惑していた!


暗い洞窟は友達の放つチート魔法で焼き尽くされて攻略というよりも蹂躙に近かった。


「よし終わった」


「夏休みの宿題みたいなノリで言うなよ。だけどこれでギルドの依頼は達成だな!帰るぞ!」


「あちょっと僕は用あるから」


「え!? 俺に徒歩で街まで帰ろっての!?」


「さっき移動魔法つかったら怒っただろ」


「さっきのまだひきずってんの!?」


友達はさっさとまた洞窟の方へと向かったので主人公はしかたなく街へ歩くことに。

街につくころにはすっかり日も沈んでいて、先に移動魔法で街へ戻った友達が待っていたのを見た主人公は殺意がわいた

でも二人は仲良しなので主人公は友達にちょっと気づかないように足を踏んでやった。陰湿。


「よっしゃギルドへ報告へいこう!!」


「おい今、足……」


「ギ ル ド へ い こ う!!」


「足……」


二人はギルドへ報告に向かった。

異世界に来ても誰かの依頼を受けて達成をし報告をするという会社員のようなルーティンを地でこなしてしまうあたり、主人公に企業戦士としての才能があることにはまだ気づくことはない!


「冒険者ギルドへようこそ。あ、依頼達成されたんですね」


「ええ! それはもう! ゴブリン共を根絶やしにしてやりましたよ!!」


「そ、そうですかーー……」


そんなに難しくもない依頼を鼻高々に語る主人公にギルドのお姉さんは気まずそうな顔をしていた。

その横で友達はそっとギルドのカウンターになにやら王冠をおいた。


「あのこれは……?」


「ゴブリンの奥にある竜の巣に囚われてた姫の」


「え!? それじゃあの最上級難易度の依頼を達成したんですか!?

 冒険者がたばになってもかなわかったドラゴンを倒して!?」


「おいおいおいおい! 何勝手なことしてくれてんだよ! 俺のゴブリンの依頼がかすむだろう!!」


「用があるっていっただろ」


「俺のしらないところで勝手にギルドの依頼を達成すんなって!」


「束縛キツめの彼女か」


「す、すばらしいです! この依頼の報酬をお支払い……あ、あれ!? 冒険者さまどうされたんですか!? 体が!?」


受付のお姉さんがお金を準備しようとしたとき、主人公と友達の二人の体はなんと透け始めてるではないか!!


「うわわわ!? なんだ体が消えてる!?」


「そういえば女神言ってたんだけど」


「なに!? 大事なこと!?」


「なんか異世界にとらわれてる女神の本体をドラゴンから解放したら、異世界から現実世界に戻せるって言ってた」


「いやそれ序盤でクリアしちゃだめなやつぅあぁぁぁぁぁーー!!」


力を取り戻した女神による現実世界への再転送がはじまった!!

この世界に爪痕を残すことができなかったので、異世界への日帰り旅行はおすすめできないと主人公は心から思った!


そうして二人は対して思い入れもないまま平和にしてしまった異世界から現実世界に戻ってきた!!!戻ってきてしまった!!


そして二人はちょうど学園祭の準備がはじまろうかという学校の教室の授業中に転送された!!


普段着の服と、二対の剣を背中にしょった黒服で痛めのコスプレしたクラスメートを見た同級生は言葉をうしなう!!

気まずさに耐えかねた先生が口を開いたのがやっとだった。


「学園祭は明日からだぞ……?」





主人公は不登校になった。

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