訪れた「救い」
「悠果ちゃん!やっぱり川だった!ここ自然堤防だよ!!」
それを聞いた悠果ちゃんは少し目を丸くした。
「莉奈さん、すごいです・・・!莉奈さんは、地理が本当に得意なんですね」
悠果ちゃんは、私に熱い視線を送ってくる。それは、今まで私が多かれ少なかれ関わってきた人たちとは根本的に違っていた。
「ありがとう!地理は得意なんだ。資料集で見た図が、歩いてると浮かんできて、気づいたら頭の中で地形図が出来上がってた。」
不思議と、あるがままが述べられた。今、私を操っているのは誰なのだろう。本当に私がこんなことを言えたのだろうか。驚くほど自然に発せられたこの言葉に、私が一番驚いている。
目立ちたくなくて、本当の気持ちと好きの対象を隠してきた私にとって、それは大革命だった。普通の人相手だと、明らかに敬遠されるようなこと。自分が心の底から思っていて、本当は世界に向かって発表したいこと。でも、絶対に人には言えないこと。
それが、悠果ちゃん相手には、言えた。
そう思った次の瞬間、何かに気づき、私は足元に目をやる。
私の身体から、桃色と檸檬色が染み出していて、さかんに流れ動いている。それが、「喜び」「自信」と解釈できるまでに、時間はかからなかった。初めて、魔法の目を自分の幸せのために使えた。
―――やっと、解放された。
もう、本当の気持ちを隠さなくていい。長年積み重ねてきた重荷が、私から発せられる色を浴びて、消滅していった気がした。そんな私に、悠果ちゃんは微笑みかけていた。橙色はもう消えていて、桃色だけが悠果ちゃんを取り巻いていた。
猫かぶりの私と魔法の目 潮珱夕凪 @Yu_na__Saltpearl
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