第20話 これからやるべきこと

「諜報員の情報によれば、一人を除いてホワイトラブリー王国に避難している事がわかった」

「一人だけ元ブラークメリル王国に残ったままだと……?」

「そういうことだ。ロブリー国王はただひとり残っているそうだ」


 ある意味で尊敬してしまう。

 あの人は、有言実行という意味では徹底していた。

 たとえ国が一人になろうとも、モンスターに制圧されてしまっていてもくじけずに経費削減を駆使してなんとか生きているのだろう。

 邪魔をしてはいけない気もする。


「それにしても、間一髪でしたね。全員こっちの国に移民していたのなら一安心です」

「あぁ、結界の力は人間が生きていく上でどれだけ重要性が高いのかを改めて認識できた。聖女の皆がいてくれるからこそ社会を築けるのだ」


 クラフト陛下にそう言っていただけると嬉しい。

 前までは、任務しなければいけない&やることが当たり前&その上で報酬はほとんどなしという条件で社畜のような生活だった。

 だが、ここではそんなことはなく、聖女としての仕事も今となっては生きがいになっている。

 しかも……、クラフト陛下と結婚を前提とした交際が始まってからは、幸せでしかないのだ。


「ところで、廃墟してしまった元ブラークメリル王国は今後どうされる予定ですか?」

「どうもこうも……、今もロブリー国王が一人で頑張っているのだから手出しはせんよ。彼の活躍に期待だな」


 地味にひどいことを言っているような気もしてしまう。

 とはいえ、ああなってしまった以上私たちではどうすることもできないのだ。


 すでにブラークメリル王国には多数のモンスターが占拠してしまっている。

 こうなってしまっては、聖なる力の加護でもどうすることもできない。

 モンスターがいないタイミングを見計らって、徐々に結界を広げていくしか方法がないのだ。


「まさにロブリー国王の身から出た錆だな」

「でも、許可が降りれば少しずつ結界の領域を広げてブラークメリルの王都にまで広げられるようにはしますよ」

「あぁ。もちろん可能なら頼みたい。私とて、無駄死にはさせたくないからな。むろん、助かった場合はそれ相応の働きをロブリー国王にやってもらうが」


 世界の中でも最強と言われているレッドドラゴンの襲撃にあったのだから、おそらく王都はもう存在していないと思う。

 ただ、モンスターの目的って人を殺すことではなく、自分たちの住める領域を増やすのが主な目的だったはずだ。


 つまり、危害を加えなければわざわざ襲ってくることはないとは思う。

 それでもクラフト陛下も言っていたように、やはり無駄死にはさせたくはない。


「わかりました。今までだったら聖なる力の範囲は一つの国をまかなうのが限界でしたが、今は仲間の聖女もいるので二つの国くらいならなんとかなるかもしれません」

「よろしく頼む。まぁ……それまでロブリー国王が無事に生きていられればの話だがな……」


 元ブラークメリル王国の住人たちも、結界が復活して元の故郷へ帰れれば嬉しいはず。

 ただ、国としては結界を展開した時点でホワイトラブリー王国の領土になるそうだ。

 どのみち人口密度が急激に増えたわけだし、領土が広いほうがいいとジオン王子も仰っていた。


「こればかりは制圧してしまったモンスターの様子を伺いながらでないとどうしようもできませんからね……。みんなで協力してやっていきたいと思います」

「ありがとう」


 ロブリーには申し訳ないけれど、もしも奇跡的に助けられたとしてもその後の生活は保証できないとは思う。

 これだけたくさんの民衆の方々に迷惑をかけたりしてきた人だ。

 中にはそのまま放置しろだの生き地獄を望む声すらあった。


 ドラゴンの攻撃で巻き添いを喰らっていても、今生き延びていたとしても彼の地獄に変わりはない。


「ところで、今日連れていきたい店なのだが……」

「ふふ……クラフト様が連れてってくださる店はどこも美味しいですから楽しみです」


 今のうちに美味しいものをたくさん食べながら、クラフト陛下のことも更に知って距離も縮めていきたい。

 すでに愛してしまっているからこそ、クラフト陛下のことはなんでも知りたいと思っているのだ。


 私は聖女として楽しく仕事ができるように、クラフト陛下が支えてくれているのはとても嬉しい。

 彼がいたからこそ仕事へのやりがいもでたようなものだ。


 ホワイトラブリー王国には、これからもしっかりと聖なる力を解放して、モンスターからの襲来を防ぐ任務を全うしたい。

 仲間の聖女とともに。

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経費削減でリストラされた社畜聖女は、隣国でスローライフを送る〜隣国で祈ったら国王に溺愛され幸せを掴んだ上に国自体が明るくなりました〜 よどら文鳥 @yodora-bunchooo

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