簡単な経緯

 ゲンさん(仮名)の第一印象からして、予感はありました。

「気難しい、人を食ったキャラ」が格好良いと思っているような、全方位に対する横柄な振る舞い。

 機嫌が悪い時には態度があからさまで、周囲にそれを察する事を無言の圧力で強いる。

 嫌いな相手のミスは殊更大袈裟にあげつらい、自分の大きなミスは逆ギレで握り潰す。

 そしてそれらは、上司や目上の人に対してすら例外ではありません。

 さて、ここまで書いていて私個人の不平不満を単に連ねているようになってしまいましたが、

 これらの挙動には、実際のところ病理的な原因があります。この“病気”については、次回あたりで紹介すると思います。

 もう一つ。今回の話をするにあたり、重要な要素があります。

 現職ではデリケートな製品を扱っており「現場への不純物の混入」を第一に気を付けねばならない、と言う事です。

 今回の話を理解する上で、前提として覚えておいて下さい。


 元々、他人への好き嫌いが激しいタイプであるのは明らかでした。

 そして私は、大体、何処に行ってもそう言うタイプに嫌われやすい体質をしています。

 実際にどのタイミングで、私がゲンさんに決定的に嫌われたのかは、心当たりが無くも無いと言った程度であり、何となく想像するしかありません。(※1)

 年齢は彼の方が5つばかり年下でしょうか。なおかつ、勤続年数ははっきり聞いたわけではありませんが、最低でも私より3年は長いと思われます。

 そんなわけで、彼は敬語で接してくれていますし、私も私で先輩に対する礼儀として、そうしています。

 

 ゲンさんのような人からの“好感度”は、声のトーンや仕草で非常に正確に教えて貰えるので、わかりやすいものです。

 私が徐々に相手の声のトゲに気づきはじめ、それが“危険水域”に達して来たな、と感じていた頃。

 その時期の私は仕事に小慣れてきて、自分なりに効率化を模索する余裕が(半端に)出てきた頃でした。

 製品の積み上げ方をあれこれ試していた時、突然に、

「おいコラ! それをやったら不純物が入るかもしれないだろうが! 考えて仕事しろや!」

 と、まるで人身事故でも起こした相手に対するような怒号が飛んできました。

 それまで、一応歳上への配慮として敬語で接してきていたキャラから一転、わざわざこのような口調に、意図的に切り替えて来る芝居じみたやり口は、過去に何度も見てきましたので、なおさらピンときました。

 さて、重要なのは、この時の私が何をしでかしたのか。それが実際にどの程度の過失だったのかと言う事です。

 これだけを読んだ方によっては、私が横着をして何らかの過失を犯したのに、反省もなく逆ギレしているとも取れる筈なので。

 一応、このトラブルへの客観的な事実はいくつか並べておきます。

 ・その後、ゲンさんの報告を受けた所属長の反応「ふーん。そうなんだ。まあ、言われてみれば可能性は無くも無いから次からは気を付けようね」(※2)

 ・似たような積み方は社内ではポピュラーであり、それとて不純物混入リスクがゼロと言う保障はない。

 

 反面、別の場面では、どう考えても遊び半分の挙動で不純物の入りかねない行動に及んでいました。

 自己弁護になりますが、私のケースではあくまでも仕事の効率化を求めた末の横着でしたが、ゲンさんのそれはそもそもやる必要がなかった。

 この時点で私は極力距離を取っていたので指摘もしませんでしたし、周りの人々も同じなのでしょう。

 これも次回の話に預けますが、この手の人が求めているのは“真実”ではなく「自分の利益に合致する理屈」であるので、そもそも、どれだけ当たり前の正論を言っても無駄に終わります。

 これらの事から、彼にとっては「万一の不純物混入など本心ではどうでもよく、私に怒鳴り付ける事が目的だった」と結論づけました。


 次に私の“判断”を決定的なものとしたケース。

 不純物の徹底的な撲滅が重要となる仕事である以上、現場に入る前の、従業員の除去作業も必須です。

 その仕上げにはアナクロながらも、粘着クリーナーコロコロ・ローラーでお互いの背中を掃除するというものがあります。

 これは、各自が現場に入るタイミングで居合わせた者同士、二人組で行われるのが“基本的な”ルールです。

 私とゲンさんが同時に現場に入るタイミングで、私は当たり前に彼の背中を掃除しました。

 セオリーであれば「次はこちらからやりますよ」と言って、お返しするのが暗黙のルールです。

 しかし、この時のゲンさんは全くの無反応。

 確かに必ずお返しをしなければならない“義務”はありませんが、背中まで掃除しないと現場に入ってはいけないのはルールです。

 私は「こちらの分もお願いします」と、頼みました。

 結果、彼は私の背中を雑に一度撫でただけで去りました。

 これでは除去作業が完全とは言えません。

 これで私がそのまま現場に入り、毛髪でも混入すれば、私の責任なのか?

 実際、現場に入るタイミングで自分一人しか居ない時は、事務所に居る営業マンや事務員などにお願いする手もあるので、私は結局そちらに頼りました。

 

 後日、また同じ状況が巡ってきましたが、私はもうゲンさんに声をかけませんでした。

 それで、どうするつもりなのだろう? と横目で見ていると、何と彼は背中を掃除しないまま現場入り。

 これで彼から抜け毛などが見つかれば、見て見ぬふりをした私の責任なのでしょうか?

 実際、ブラック前職であれば、どちらのケースも無条件に私が悪とされた事でしょう。

 

 これらの事から、私は彼を“自己愛性パーソナリティ障害(以降、自己愛性PD)”と

 私を殺しかけたリーダー達と同種の人間です。

 今後、彼の全ての行動原理は私を攻撃して排除or支配する為だけの恫喝だとして扱う事を決めました。

 当該病質については、私の見解はこちらをご参照下さい。

https://kakuyomu.jp/works/1177354055446437088/episodes/16816452218565579245

 一応、ググればもっと簡潔で正確な情報がいくらでもヒットするので、そちらの方が良いと思われます。

 社会問題としては表面化していないものの、それだけ重大視されている問題だと思われます。



(※1)

 私は個人的に製品の検査(声かけ)業務を厳しめに行っているのですが、それに対してゲンさんが「生意気だ」と半ギレになっていた噂は耳にしました。

(※2)

 この所属長は気性が激しく、本当に怒る時は人一倍大声で怒鳴るタイプです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る