筆頭聖女は悪女になって復讐する

結咲さくら

第1話

「これより聖女を騙ったこの者を処刑する。」

――そう、この国の王であり、わたくしの父親でもあるアルベルト王が国民の前で宣言した。

牢に数ヶ月囚われていた私は、ろくな食べ物や着るものを与えられていなかったため黄金のように美しいとうたわれた金髪はくすんだ色になってしまっているし、蒼玉色の瞳は死人のように濁っている。おまけに母譲りの美貌だけが唯一私が気高さを失っていないことを証明していた。

目の前には無機質な鉄の刃だけが異質に輝いており、これから私の命を刈り取るためのものだと言うのにこの地獄のような怨嗟の中から解放してくれると言うのなら神の救いとさえ感じられる。

「ローゼ、最期に言い残すことはあるか?」

「いいえ、陛下。何も言うべきことなどありません。私はただ筆頭聖女としての役割を果たしただけですもの」

私がそう言い終わると、国民からはこの嘘つきめや偽聖女などのがやが飛び交えっていた。だけど私は毅然とした態度を崩さずに処刑台の前に登り、ただ刃が落とされるのを待った。

そして鉄の刃が私の首を通り過ぎる感触だけを残して、私の意識は暗闇に沈んだ。

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