エピローグ
「やあ、おばさん。おぉ、今日はマンティコアの子も元気そうじゃないですか」
「ペー君、昨日ビーフジャーキー三十個くらい食べたもんねー?」
「ギャウギャウ!」
「ところで、トシ君のペガサスも元気そうじゃないですか」
「あぁ、ミラクルですか? いやぁ、もう元気すぎて困るくらいですよ」
若い男性と、おばさんがそれぞれの異世界獣を抱いて話をしている。
ほんの五年前には絶対に見当たらなかった光景だ。
やっと、我が国もここまで成長したか。
あちらでは、豚肉の香ばしいにおいがする。今ではすっかり、ブタという言葉も定着している。
我は今日は気分を変え、水路に沿って馬車を走らせて、木彫りの『ドワーフ アニマル☆パラダイス』のアーチをくぐり、中に入る。
「うわぁ、あれ、ペガサス?」
「カワイイ!」
「普通に飼ってる小っちゃいのとは全然違うね!」
本物のペガサスやユニコーン、サラブレッド、ニワトリ、ケルピー、マンティコア、ホルスタイン、グリフィン、ウズラ、ブタたちに小さい子は興味津々だ。
大人はというと、すっかり動物たちにメロメロになって子供に交じって熱のある体に触れていた。
「このサラブレッドは元々競争をするウマだったミラクルヒダカっていうウマの血を引いているんですよ。なので、足はとても速いんです」
時々、大八木牧場からやってきてガイドをしてくれる睦美さんが白馬を撫でながら話している。
今や、肉や卵、牛乳は我が国のもう一つの柱となりつつある。
そして、この牧場には動物の鳴き声と人々の弾ける笑顔、そして動物への愛が溢れている。
さて、と我は腕時計を見た。
また、再びルネライトにエマと名を変えてもらい、日本だけではなく様々な場所を旅してもらって五年がたつ。
父、フィリップはいよいよ高齢となり、我の晴れの日が近づいている。
――そろそろ、我の王妃として、正式にルネライトを呼び寄せねばならんな。
今もう連絡してしまおうか、と思ったが、まだ指輪やドレスなど何も準備していない。
――もう少し、準備が整ってからではないとな。
我はその時を思い浮かべ、フフッと微笑んだ。
(完)
魔絆転写!!~絆発掘~ DITinoue(上楽竜文) @ditinoue555
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