第168話 魔王登場


「そろそろじゃな」


「え? もうつくのか?」


アルに乗せてもらって魔国に向かっているオレはあるの言葉に驚きを隠せなかった。以前アニキから聞いた時は一日ちょっとかかったと言われたのだが、どう考えても数時間しかかかっていない。


「リュートの奴から以前魔国に行った時のことを聞いたのかのぅ。まぁあの時とは違って我だけで飛んでいるからな。行軍速度と同じにされては困るというものじゃ」


ということらしい。


とまぁ、アルのお陰で、すぐに魔国に着いたわけだが……。どうやら出迎えがいるらしい。


「久しぶりでございます。アル殿」


「……。あぁ、久しいなハルリオン」


どうやら二人は知り合いらしい。ハルリオンと呼ばれた男は燕尾服を纏っており、その頭から立派な二本の角が生えている。


帝国を襲撃してした魔族よりも魔族らしい出で立ちだし、実力もこちらの方が上っぽい。


「背中にお乗せになっている御仁はリュークハルト様の面影がござあますが……」


「こやつはレオンハルトじゃ。リュートの腹違いの弟である」


「そうでございましたか。これはこれは遥々魔国までお越しいただいて――」


「――御託はいい。魔王に会わせろ」


オレがアニキの義弟だと知ると否や腰を低くする男に苛立ちを覚える。


「かしこまりました。魔王にご案内いたします」


「ククク」


「どうした? アル」


「いやなに、リュートが魔国に来た時も似たような会話をしていたな、と」


「そうか」


「しかしあれじゃな。魔国を属国にするのだろう?」


「まぁな」


道中、オヤジと話し合った内容をアルにも共有していた。


「お主的にはスムーズに行くと思うか?」


「さぁな。行かないんじゃないか? もしそうなれば実力行使にでる」


「フッ、浅いのぅ。魔王はすぐに降る。我はそう思うぞ」


「理由を聞こうか」


「魔国はそもそも帝国の下についている。これはリュートが取り付けたことじゃ。しかしそれは軍事的に、下についているに過ぎない。じゃが、リュートとの力量差を知り、今回の一件もある。それにお主の実力を見抜けん真央では無い。軍事的下についたのであれば内政的にも下につくであろう。魔王と手合わせするのは不可能じゃよ」


「……」


なんだか全てを見透かされている気分だ。確かに魔王と手合わせしてみたいとは思っているが、ただ強いヤツとやりたいからって訳では無いのだ。


今のところ目標はアニキだ。だが、そこに追いつくためにはまずアルを超えなきゃいけない。ディアナを超えなきゃいけない。超える壁が大きすぎるのだ。


そこで最適な壁が魔王と言うわけだったのだが……。


「今のお主に魔王は少し足りぬ。リュートに追いつくため、という志は良い。だが、己の力を信じよ。お主の次の壁はディアナじゃよ」


「そうか。ありがとう」


どうやら本当に全て見透かされてたらしい。


「こちらです」


どうやらアルと話していると魔王が待っている部屋に着いたらしい。


「ふむ、前回とは違う場所のようじゃな」


「えぇ。今回は私用扱いですので魔王様の執務室が最適と判断致しました」


「そうであるか。まあい。交渉はお主がやるのだぞ」


「オレが?」


アルからの突然の押し付けにキョトンとしてしまう。


「もちろんじゃ。リュートは自分で魔王と話し合い、魔国を下につけた。まぁ、恐怖で跪かせただけじゃが……」


「適当すぎんだろアニキ……」


「しかし、じゃ。そもそも我は帝国のものでは無いぞ? 帝国にいるのはリュートと我が子がいるからじゃ。それに美味い飯も出てくるしのぅ」


「ケッ。結局全部アニキの手柄なのかよ」


全てがアニキが起点となっている。アニキが全てを動かす歯車。そう言う思考に至り悪態をつく。


「レオンハルト、お主はいつもそういうが……。まあ良い。お主の兄がぎょせたからと言ってお主にもできる訳では無い。それに相手は魔王じゃ。心して臨むように」


「わぁーってる」


「はぁ。うるさいですね。開けますよ? くれぐれも魔王様に失礼のないように。あの忌々しい人間のように」


ハルリオンの声により冷静を取り戻す。にしても、忌々しい人間って、アニキのことだよな、絶対。てか、アニキのせいで帝国が襲撃されたんだし……。


――ガチャ


ハルリオンが三度ノックし、「入ります」と一声かけ、いざ扉が開かれる。




「…………。って、子供じゃねぇか!」

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超器用富豪 ルーシー @Ryutoooooooo

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