第167話 帰国と出国


「と、言うわけで早速十人確保したから、後五人くらいスカウト出来ればノルマ達成」


「は、早すぎるよ……」


 宿に戻った俺は奴隷商であったことをシャルに話した。あと五人っしょ? 楽勝楽勝。魔導帝国の国民なら魔法の才能があるやつが多いだろう。


 毎日外出して鑑定して回っていれば探しに行かなくて見つかるだろうし。


 しかし別の問題もあって……


主人マスター


『分かってる。潰すべきだよな』


 奴隷商ことヘンデュラー(兄)、結構こっちの足元見て値段設定してきてるふうだったな。まぁ白獣人の価値もわかっていないようだし、俺的にはいい買い物したと思っているが、舐められたままでは放っておけない。


 まぁ、ヘンデュラー(兄)の方は何とかするとして、


「シャル、顔色良くなったな。心境の変化でもあったのか?」


「うん、私の思い違いだったというか、思ってたより深刻じゃなかったと言うか……」


「ふーん?」


「なんかね……」


 そう言ってシャルが急に語り始めた。


 この最近妙に現実味のある夢を見るのだとか。しかもそれが現実として起こるらしい。


 そんでココ最近見てたのは俺たちが留守の帝国に魔族が攻め込んできてみんなが殺されてしまう夢、らしい。


 しかし、俺が奴隷商に行っている間に見た夢ではその魔族たちをレントたちが蹴散らしていたらしい。


「なるほどねぇ。予知夢ってやつなのかね?」


「私もよくわかってないんだ。リュートくんは何か心当たりとかある?」


「うーんとねぇ」


 名前:シャーロット・フォン・ヴァイス

 年齢:7

 種族:人族

 称号:ヴァイス家長女 オーランド夫人

 スキル:未来視

 ◇


 はぁ。未来視、ねぇ。ってかオーランド夫人てなんやねん。名前はヴァイスままなのにオーランド夫人はありえないやろ。


 とまぁそれは今は置いといて、未来視、だよなぁ。ついこの間ってか初めて会った時はスキルが『逆行転生・残機0』みたいな感じだったはず。


 多分逆行転生が進化した? のかも。某ブタ野郎風に言うと、俺の知らないシャルの生きてきた人生はシャルのシュミレーションで、今生きているのが正史の時間軸……?

 そんで数回のシュミレーションの末、世界の理の一端を覗き見た結果スキルが進化し、未来を予測可能になった……?


 そもそも正史では俺は生まれていないらしいし……。まぁわからんが逆行転生がなくなって未来視があると言うならば何かしらの因果関係があると思っていいだろう。


 そんで実際レントたち帝国で魔族たちと戦って勝利するのだろう。それならば心配ない。


 ◇


 と、まぁ。そんなこんなで約3ヶ月。あの日奴隷商で白獣人を十人購入した後、今日まで追加で七人スカウトすることに成功した。年齢も幅広く下は十五歳から上は六十歳まで。


 ちなみに高等部並びに中等部魔法科からも十数人引き込むことが出来た。中等部からは六人、高等部からは七人と。

 騎士科からは合計十九人、白獣人合わせた学生以外から十七人、魔法科からは十三人の合計四十九名のスカウトに成功した。帝国の方でも数人内定を出してもらっている予定なので、これで第二魔法師団は完成したと言える。


 ただまぁ、才能はある魔法は初心者みたいなやつがほとんどなの教育は必要だが。


 そんなこんなで今日、帝国に帰ります。前日にはホフナーと母親が帝国に向かっているはず。それにスカウトした全員に魔法の箒を渡しているので各自で練習して使えるようになっているはず。そんで帝国まで来いと言っている。ランスくんに関しては二年後にここに迎えに来る予定だし。


「よし、じゃあ帰りますか」


「うん!」


 ◇

 side: Leonhardレオンハルト Vonフォン Starkスターク


「ようやく戻って来たか、レント。従兄アニキはなんて?」


「あぁ、オヤジも相当頭に来てるらしくてな……」


 オレはオヤジと決めたことをとりあえずみんな何話すことにした。ワンダー・スタームはメンツに萎縮してか、「私は戻ります」なんて言って逃げていった。


 まぁとりあえず、今からアルとオレで魔国に乗り込むことを伝えた。


「アルはそれでいいか?」


「もちろんじゃ。我がこの国に力を貸さないことは我の死を意味するのでな。帰ってきたリュートにチクられでもしたら彼奴の食肉になってしまう」


「はっ、ちげぇねぇ。とりあえずオレが殺しちまった魔族は身体だけでも持ってって証拠にする。他の九人は捕虜として地下牢に放り込むことになったんだが……。四肢を切断しよう。そうすればなんも出来ないだろうし」


「「「ひ、ひぃ!?」」」


 オレたちの会話を聞いていた魔族たちは怯えて、身体を寄せあっている。


「貴様ら、自分がやったことの重大さを理解しろ」


 ――ザシュッ


でぇぇぇぇ!」


 その後もザクザクと全員の四肢を切り落とした。え? 切り落とした手足はどうするのか? 目の前で燃やしてやったよ。

 そんときの顔と言ったらもう、この世の終わりみたいな顔してたよ。終わるの貴様らの人生だがな。


「それじゃあ乗せてってくれ、アル」


「心得た」


 ドラゴン形態になったアルの背を借り、魔国に向け出発する。もちろん殺した魔族の身体は麻袋に収納している。




 ◇

 ※あとがき

 時間軸がバラバラになって申し訳ないです。

 レントたちの方のお話はリュートが旅立ってからまだ数日とたってないくらいの認識で大丈夫です。

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