第166話 期待の奴隷
side:
「白獣人……」
聞いたことがある。この世界では白毛の獣人は迫害されていると。
これは前世で得た知識だが、特定の犬種では白毛は劣等遺伝だとか病弱だとか言われているらしい。もちろん必ずそうでは無いし、素が白の動物だっているだろう。
しかしこの世界では白毛の獣人は劣等種として知られている。理由は知らん。
「その白獣人とやらがオススメの理由を聞いても?」
俺がそう言うとヘンデュラーは「いいですよ」と言いニヤリと笑う。そして、「着いてきてください」と言いながら歩き始めた。
白獣人とやらの所へ向かいながら解説してくれるのだろう。
「大前提として白毛の獣人は同じ獣人族からも迫害されているため安く買えます。そして何より、魔法適性が高いです。多くの獣人は魔法適性を持ちませんしね」
その後もヘンデュラーは白獣人の知識をおしえてくれた。
白獣人は普通の獣人(以下普通獣人)に比べて個体数が圧倒的に少ない。一万人に一人くらいなのだとか。
そして普通獣人は武術一辺倒なのに対して白獣人は魔術も扱うことができる。もちろん白獣人の武術は普通獣人と遜色ないらしい。
ではなぜそんな白獣人が迫害されているのか?
答えは単純。強すぎるため。
昔昔。それこそ異世界から勇者が召喚されて活躍した時代やその少しあとの時代は白獣人は英雄として称えられていた。
しらし、そのちからは遺伝しないし個体数が圧倒的に少ない。故に白獣人は「選ばれし者」とすら言われていた。さらにさらに獣人の王族……獣王国の王、獣王の一族には白獣人が生まれることがなかった……。
そして、次第に白獣人達は「自分たちが戦いの駒にされるのはおかしい」と疑問を持つようになり王位収奪を画策する。
……も、失敗に終わり、時の獣王によって悪噂を、そう、白獣人劣等種であると噂を流した。
それが今の時代まで続いている、と。
「ヒトの醜い部分が出過ぎてるじゃねぇか。てか、よくそんなこと知ってんな」
「うちは代々奴隷商を営んでいますからねぇ。それこそ勇者の時代から」
「ふふふ」と笑いながら知っている理由を教えてくれたが、それ自体ほんとかどうか分からないもんな。奴隷商ってのは胡散臭くてどうにも信用出来ん。
「こちらになります」
そう言って通された部屋は学校の教室くらいの大きさだった。石の床に石の壁。天井も石だ。天井からランタンのようなものが吊るされているだけの照明と、ベッドが十個ほどずらりと並べられ部屋の中央には十個ほどの椅子とでかいテーブル。まさに最低限の暮らししかできないような殺風景が広がっていた。
「奴隷とは言っても、最低限の生活はさせるんだな」
「一応商品ですので。かかった食費等は表示料金に入っていますよ」
なるほど。売れ残りほど高く売れるのか。それで売れない場合は利益が出る程度に値下げする、と。白獣人なんて安く買えるだろうし、白獣人の凄さを知っているやつには高く売れるもんな。
とまぁ、そんな感じで再び部屋の中を見渡すとベッドの数通り、十人の獣人住人がいた……。
「………」
「リュークハルト様?」
「すまん、思い出し笑いだ」
とてもくだらんことで笑ってしまった。
「しかし、本当に才能が結集してるな」
「分かりますか? なかなかにすごいでしょう?」
「あぁ」
ざっと鑑定した感じ、全員が何かしらの属性でB+以上の才能があり、格闘術もB-以上がデフォって感じだな。
その中でも一際目立つのが……
◇
名前:ミュウ・タラント
年齢:9
種族:猫獣人
称号:迫害されし獣人 奴隷 突然変異体
武術
剣術 B-
槍術 B-
弓術 C
格闘術 A+
魔法
火 C
水 S
風 C
土 C
光 D
闇 B
時 F
空間 F
無 A+
錬金 F
生産
錬金 C
鍛治 C
資質
統率 A+
武勇 A
政治 B
知略 B
◇
こいつだ。猫獣人か……。見た目的には前世で言うラグドールなんだが、その中でもかっこいいに全振りした感じの見た目だ。
格闘術がA+級か……。確かディアナがSだったから一つ下のランク……。
しかしSランクに上限はない。ディアナのS級の才能自体恐らくS級の中でも上澄みなのだ。S級の上澄みとA+級では雲泥の差。
しかし、こいつは基本4属性である火・水・土・風の才能がある。水に至ってはS級。光魔法はD級ではあるが闇魔法がB級なのはデカい。
何故か光闇魔法はなかなか才能ある者がいないからだ。
このミュウが一番の収穫と言っても過言ではないな。
「いいね、君。うちの虎と是非とも張り合って欲しい」
「……虎?」
「そうそう。虎獣人のディアナってやつがいるんだけど、めっちゃ強いからあいつのライバルになってあげて欲しいんだ。あぁ、もちろん差別をするようなやつでは無いから、安心してね」
「ディアナ、ですか。えぇ、わたしを買っていただけるのであればご主人様の命令は聞きますよ、もちろん」
んー、この冷淡な感じ、ディアナとは相反する位置にいる人間って感じだな。仲良くなれるかな?
まぁ第二魔法師団に入れるから仲良くならなくてもいいんだけどね。
「あなたがここの獣人達をまとめてる人か?」
「えぇ。そうよぉ」
俺が次に目をつけたのは馬獣人のフェアードという女。白馬を擬人化したような感じなのにかっこよくなく、おおらかなイメージを与える見た目をしている。
実際その見た目通り包容力のある人なのだろう。
馬と言えば気性が荒いイメージがあったのだが……。
「とりあえず全員買わせてくれ。3ヶ月ほどこの街に滞在する予定だから、その間の滞在費もこちらで出すからしばらくここに居させてもいいか?」
「ありがとうございます! もちろん、リュークハルト様のお願いとあらば! 全員合わせて白金貨13枚になります!」
「……わかった。ほれ」
異空間収納から白金貨を出し、渡す。俺の目測では白金貨20は下らないと思ったのだがな……。安くしてくれたのかもな。良かった良かった。
(ヘンデュラー「白獣人十匹に白金貨13枚てww。いいカモすぎるやんけ。」←白獣人の真価をわかっていない)
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