第165話 属国化計画
「親父!!」
ソッコーで親父の執務室にやってきたオレはノックもせず扉を開け、親父を呼ぶ。
「………」
「おい! 親父!」
それなのに、親父はオレを一瞥し、すぐに書類に目を戻す。
「レオンハルトよ、余は皇帝ぞ? いくら緊急事態とは言えど蛮行が過ぎるのではないか?」
「そんなこと言ってる場合じゃねぇんだって!」
「……冷静さを欠いているな。リュークハルトならこういう場でこそ冷静を保つぞ」
「………ッチ」
こういう時までアニキかよ。オレはドスドスと足音を立て、扉へ向かう。
――ゴンゴンゴン!!
「これでいいか」
「……子供のお前に求めすぎた余が馬鹿であった。リュークハルトが突然変異のような異質な存在であることを忘れていた。それより何用だ?」
「魔族の襲撃を受けた。自分を四天王だとか名乗りやがった魔族が十人の少数精鋭でアニキ不在を狙って攻めてきたんだ」
「そうか。それで?」
……は? それで? 何を言っているんだ、この人は。魔族から襲撃を受けたんだぞ? 国際問題だ。今すぐにでも仕返しするべきでは無いのか?
「それでってなんだよ……。あっちが悪いじゃないか。魔族側に賠償を……」
「そのようなことはしても意味が無いぞ」
「な、なんでだよ」
「そもそも魔族とはリュークハルトが話をつけてくれている。あやつのヤバさを分からない魔王ではあるまい。その四天王とやらの独断専行で攻めてきたのだろうな」
「な、なら! 監督部行き届きで魔王を罰するべきだろ!」
「それもそうであるが……。レオンハルト、その四天王を殺したな?」
「あぁ。殺したよ。転移の魔法を使えるらしかったか逃げられる前に殺したさ。それの何が問題なんだ? アニキだって大臣に成り代わっていた魔族の四天王のひとりを殺しただろ!?」
「はぁ」
オレの話を聞いた親父がため息をつく。なんでだ? なぜオレのやった事が認められない?
「あの時はこちらも一人殺されておりおあいこで済んだ、が。今回はそうもいかんだろ。いくら向こうが殺意を持って攻めてきたとしても結果としてこちらは死者ゼロで向こうが死者が出た。大義はどちらにもある」
「……ッ!どうしてわかってくれないんだ! 親父はあの場にいなかったからそう言えるだけだ! オレだって死にかけたんだぞ!? なのに、なのに……」
「わかっている。良くやった。余はそう言いたい。しかし、魔国を訴えるメリットがあろうか? 隣接している国でもないから領土を貰っても行く手段がない。それにリュークハルトの話によれば魔国の通貨と我々人間たちの使う通貨は違うらしい。妥協点で財宝だが……。この国は恵まれている。魔国も恐らくたくさんの財宝があるだろう。多少もぎ取っても向こうの痛手にもならんだろうし、こちらとしても捌き切れる量でもなかろう。それに来たる王国との戦争時には戦力を貸してくれると約束してもらっている。可能であれば魔国を属国としたいがな」
そう言って、ふと親父が顔を上げる。
「余も悔しい。しかし魔国の住人と共存していくならばこのような争いもつきものだろう。しかしレオンハルト、リュークハルトのおかげで人は魔族より強いと言う印象を強くつけることが出来た。レオンハルト、お前のおかげだ、ありがとう」
……は?
「おいおい上手く丸め込んだつもりかよ。オレァ直接魔王に会って土下座させる。なんならこっちに連れてきて帝都の民の前で土下座させて属国になると宣言させよう。アニキの力があれ向こうとこっちの行き来は楽になる。魔族だけの技術もあるらしい。こっちの職人を派遣して帝国の国力強化が図れるぞ」
「ククッ。悪くない案だ。だが一国の王が他国の民の前で土下座は良くない。地方の貴族も招いてパーティーを開催しよう。そこで、貴族の前でレオンハルトの案を採用する。どうであるか?」
「分かってるじゃねぇか親父。残った九人は捕虜として地下牢へ。オレはアルを連れて魔国に赴く。いいか?」
「許可しよう。ではリュークハルトが帰ってくる三ヶ月後をパーティーの日として設定する。そうと決まれば地方の貴族にも手紙を出さんといかんな。忙しくなるぞ」
どうやら親父も親父で魔族にはフラストレーションが溜まっていたらしく、珍しく乗り気だ。そうと決まれば魔王に会うのは早い方がいい。証拠として殺した魔族の死体を持っていくか。顔面は……灰にしちまったから胴体しかねぇけど。
「では、現刻より行動開始である」
「ハッ」
最初のピリピリした雰囲気はどこへやら、オレはウキウキでは部屋を後にした。
「ありがとう、レオンハルト」
部屋を出る時親父そう言っているような気がした。
◇
※あとがき
皆様のおかげで先日合計PV数が100万突破しました!!ありがとうございます!!
また、これからもよろしくお願いします!
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