第十二話(後)
その後、美蘭は異世界に行く言い訳として高校を辞め留学をすることを瑞香と明乃に打ち明けた。当然二人からは驚かれたが、快く見送ると言ってくれた。
美蘭の高校中退はクラスに密かに広まり、助けてくれたお礼を含めたお別れ会が開かれた。賑わいの中美蘭に告白する者も現れ大いに盛り上がった。
話は部活にも知れ渡った。同級生には驚かれ下級生には大号泣する者もいたが、部員全員納得してくれてこちらでもお別れ会が開かれた。
そして友人と最後に遊びに行った。とても楽しいと感じたが、それでも美蘭の意思は変わらなかった。友人とは変わらない友情と再会を誓った。
・・・・・。
そして、美蘭が旅立つ時が来た。
「元気でね。ケンヤ君たちに迷惑かけちゃだめよ」
「わかってる」
「まさか、こんなに早く娘が旅立つなんてな……」
美蘭の父親はもう涙を流していた。
「ケンヤ君、キザミ君、マザン君。美蘭のことよろしくお願いします」
「任せてください」
「君たちも元気でね。気軽に来れるならいつでも遊びに来ていいからね」
「ありがとうございます」
ケンヤが代表して笑顔で答えた。
「じゃあそろそろ行こうか」
「はい」
マザンが空中に異世界へと通じる黒い穴を出現させる。
「お父さん、お母さん」
改めて両親と向き合う。
「今日まで、私を育ててくれて……ありがとう……二人のところに産まれて……私……嬉しいよ……」
美蘭も涙を流していた。そして母親に抱きついた。
「もう常に一緒じゃないけど……もしかしたら帰ってくるから……二人も元気でね……」
「美蘭も、元気でね……」
母親から離れて、満面の笑顔を見せる。
「お父さん、お母さん……行ってきます!!」
「「行ってらっしゃい!」」
美蘭は笑顔で手を大きく振った。そして四人は黒い穴の中に入った。黒い穴はしばらくその場に残り、段々と縮小し消滅した。
「………」
両親はしばらくその場に立ち尽くしていた。
「行っちゃったわね」
「うん」
母親の目に涙が浮かぶ。
「大丈夫。美蘭は元気に帰ってくるよ」
「そうね」
娘が無事に帰ってくることを信じる。涙を拭って両親は家に戻っていった。
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町外れの路地の一角に黒い穴が現れる。大きくなった穴からからケンヤたちが出てきた。
「帰ってきたな」
「そうですね」
二週間近く秘境界にいたので辺りの雰囲気の違いで帰ってきたことを実感する。
「美蘭、本当にこれで良かったのか?」
美蘭の方を向いて問いかける。
「はい。一切後悔はしてません」
美蘭にもう迷いはなかった。魔斬がニヤリと微笑んだ。
「ようこそ、わーるどへ。決して楽しいことばかりじゃない。時には危険なこともある世界だけど、それでもいいんだよな?」
「はい!」
美蘭は笑顔で応えた。
「美蘭さん。改めて、これからもどうぞよろしくお願いします」
「はい!こちらこそ、よろしくお願いします!!」
こうして、東美蘭の果てしなく続く異世界での生活が始まった。
うえるかむわーるど 夜皇帝 @niempt
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