07. 全滅寸前新人パーティーへのお試し安眠ケア

 ゴールドの言葉に全員が頷く。

 一同は一斉に茶シロ猫へと大きく手を振った。

 茶シロ猫がダンジョンの中に戻っていったのを確認してから歩き出す。来る前よりも足取りが軽く感じた。


「そういえば、予約入れたのよね? いつ?」


 木々の隙間から射し込む陽光に芳醇な赤髪を輝かせ、ルビーが問いかけて来る。

 彼女は既に安眠屋の虜のようだ。

 無論、それはルビーだけではない。


「何のコースにしたんすか?」

「また頭のケアはやりたいのだが」


 アオとチャセも話に乗って来る。


「えーっと、コースは120分のフルコース……頭のケアも入ってる」

「120分すか!?」

「二時間! 最高じゃない!」

「思い切ったな」

「で、いつなのよ! いつまた安眠屋に会えるの!?」

「いつ、なんだろうな?」


 ゴールドは苦笑って頬を掻く。

 三人がポカンと目をまん丸くした。


「実は、日程的なことは、話してなくて……」

「はぁあ? なんでっすか!」

「一番肝心だろう」

「じゃあどうやって安眠屋に会うのよ!」

「だ、大丈夫! 大丈夫だって!」


 息巻く面々をゴールドは手を振って制した。

 ゴールドには確信があった。


「またすぐ会えるよ」


 日時などは決めていないが、安眠屋ねこまにはまた出会えるだろう。

 次が必ずある。

 絶対にまた会えると信じていた。


「ネウって、一度捕まえた客は逃がさない感じだろ?」


 ゴールドは歯を見せる。

 一拍の後、他の三人も盛大に吹き出した。



 そんな一行がネウと再会したのは五年後。

 SS級冒険者パーティーとして、誰もなし得なかった難攻不落のダンジョンをたったの六日で制覇した直後。


「寝ない子は……おっと。これはこれは、育ちましたねぃ」


 五年振りの寝不足に呻いている時だった。



【全滅寸前新人パーティーへのお試し安眠ケア 完】

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異世界安眠屋ねこま 彁はるこ @yumika_ka

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