カイコさんは犬飼一郎の創作仏(作品)だったんですね。
『カイコさん』という犬飼一郎の作品は、祈る人である作者自身を癒やし、さらにまた自分の思い知らぬところで縁のあった者を助け、一緒に楽しみながら「生きて」いました。
そう考えるとこの小説は、作者→作品→読者→作者の円環的な互助関係を描いているようにも読めます。
作者(犬飼一郎)が自分自身の傷(絹子との別れ)を癒やすために生み出した作品(カイコさん)は、作者の知らないところ(隔世の懐古堂)で、見知らぬ読者(服部、樹神、百花)に読まれ、縁を結びながら、悩める作者たち(市松人形、たつぼ、百花の母)をも助けていたという風に。
そういった縁が巡り巡って、最後に犬飼一郎の願い「懐古堂の解体(物語の完結)に伴うカイコさんの成仏(キャラクターの終演)」が叶ったのだと思うと、感慨深いなぁと。寂しさと安堵感が押し寄せてきました。
カイコさんは外見だけでなく、別れ際までもが粋で美しかったですね。蚕というメタファーや言葉遊びも効果的だったと思います。中身は蚕虫の死体だけど、それが生み出した外見は綺麗だとか。蚕と懐古の音韻接続だとか。
様々な想像を巡らせながら楽しんで読みました。完結おめでとうございます。(え?まだ1話残ってる?先走っちゃった??)
作者からの返信
コメントありがとうございます!
おおおお……!
何という面白い解釈!!
創作の中で創作めいたことをするメリットの一つって、作品自体と作中作とのクライマックスを揃えることで一層大きな盛り上がりを作れることですよね。
>作者→作品→読者→作者の円環的な互助関係を描いているようにも
この作品が、誰かにとっての救いになっていたらいいなぁと思います。そんなふうに言っていただけて嬉しいです!
ざっくり言うと、縁と縁が繋がって円になるような話かもしれませんね。
物語を書く時、最後に円を閉じるようなイメージでラストを綴ります。
終わってしまったものもあるけど、別のものの始まりでもある。そんなラストシーンを、最終話のエピローグでお見せできたらいいなと思います。
本作は『蚕』からイメージを膨らませたキャラ造形と、ストーリーでした。
犬塊さんには様々な方向から作品を読み込んでいただけて、深く汲み取ってもらえた喜びでいっぱいです。
あと1話、お付き合いいただければ幸いです。笑
こんにちは。
カイコさん、本当に行ってしまったんですね。百花さんの可憐な涙、服部くんの一途な涙が心に沁みます。
それでも、一郎さんがこの世にいなくなるのと合わせて行くという選択に、カイコさんらしさを感じます。あ、でも、腐女神としての未練はあったのかも、、、なんて服部少年が言えるようになるには、まだすこし時間が必要でしょうね。
作者からの返信
コメントありがとうございます!
からっぽの懐古堂を見ると、カイコさんの不在を実感せざるを得ませんよね。
三者三様の哀しみの中、思い出だけが確かに残りました。
腐女神としての煩悩はたぶん尽きることはなかったでしょうが笑、その未練すらも懐かしく思えますね。
>心に穴が空いていた。カイコさんの『心』があったところに。
という一文が……すごく響きました。
普通の人でもこの例えは使いますけど、服部くんが使うと言葉の重みが違います……ほんとに一緒だったんですもんね……
そして人形からカイコさんのことを思い出す流れで再び涙腺が崩壊しました(´ •̥ ̫ •̥ ` )
うう……無理だとわかってても、またどこかからひょっこり彼女が現れてくれないかななんて、つい期待してしまう自分がいます。
エピローグがどんなふうになるのか、今回の余韻に浸りつつ、楽しみにお待ちしています……!
作者からの返信
コメントありがとうございます!
仰る通り、本当に内側にいたわけですもんね。紛れもなく空洞ができてしまいました。この穴を埋めるのは難しいでしょうね……
喪失感は、少し時間が経ってからの方が大きくなってきますよね。その人がかつていた場所や持ち物で、不在が際立ってしまう……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
ほんと、何かの形で再会できたらいいんですけどね。
ぜひエピローグまで見届けてください!
こんばんは。
百花さんは血も涙もない、とは反対の人だと思います。でも口に出して、悔やむようなこんな言葉を言うのは珍しいように思います。
これが百花さんからカイコさんへの弔いなのかなと感じました。
先生はこれといって変わったところがありませんが、あえてそうしたのかなと思いました。これが樹神皓志郎ですよと示し続けたような。
少年は収まりがつかず、勲さんとの会話でようやくという感じですね。
これから先も、助手でなかったとしても。必ず訪れる、大切な人との別れのやり方を教わったような。
街中のたった一つのお店が終焉を迎える。これは数えきれないくらいに繰り返され、これからも繰り返されることですね。
懐古堂がまた息を吹き返すことはきっとなく、同じ場所に何かお店ができるとしても、建物から変わっているかと思います。
私の知るあの通りで、こんな出来事があったかもしれない。知ろうとしたって知りえないことだけれど、そこに立ち会った人は居る。
そんな感慨を抱きました。
昭和という時代、そこからあるいはもっと昔から続く商店街。そういうもののゆるやかな死さえ、この章には語られていたと思います。
うまく感想がでてきません。
こうして読み終えたあと、ゆっくりと出した紅茶を飲みきり、大きく息吐くまで。なんの言葉も発したくない。
そういう気分です。
作者からの返信
コメントありがとうございます!
百花さんは第3章でのことがあってから、少し心境の変化があったのかもしれませんね。
カイコさんは真名を封じる前からの知り合いで、師匠とか姉とかに近い位置付けだったと思います。
先生は口数が多くても、滅多に本心を表に出しませんね。さすがにちょっと辛い出来事でした。
>必ず訪れる、大切な人との別れのやり方を教わったような。
まだ10代のころだと、永遠の別離なんてそうそう経験しないんですよね。
たった数ヶ月の付き合いだったとはいえ、かけがえのない時間でした。
一つの店がなくなり、そこにいた人がいなくなる。
その店や人の数だけドラマがあるのでしょう。
3人がそれぞれ抱く想いにも違いがあるはずですが、中心いるのはカイコさんでしたね。
当たり前のことなんですが、同じ時が二度と巡ってこないこと、時々実感して胸を突かれます。
本作では、モノに宿った魂を通じて、土地の歴史を絡めた逸話を綴ってきました。
この章は、懐古堂が存在した昭和の色を出せていたでしょうか。
それとなく込めていたものを汲み取っていただけて嬉しいです!
カイコさんがいなくなった後、馳せる想いも多くありますね。
残り一話、ラストまで見届けていただければ幸いです。
カイコさんへの思い。なんだかジーンとしました。
総じて、神様なんですね。あと一話、楽しみにしています。
作者からの返信
コメントありがとうございます!
三者三様の悲しみがありましたね。
服部少年にとっては『神さま』なんてものじゃなく、もっと身近に感じられていたので、本当に喪失感が大きいと思います。
素晴らしいレビュー、ありがとうございます!!
見どころを丁寧に紹介いただけて、感激しました(*⁰▿⁰*)
あと一話、最後までお楽しみいただければ幸いです!
涙なしには読めない回でした……っ!。・゚・(´^`*)・゚・。
夏の描写が見事で、過ぎ去っていく季節にカイコさんを重ねてしまいました……(´A`*)・゚。
作者からの返信
コメントありがとうございます!
綾束さんには本当に毎回感情を込めて読んでいただいて、すごく嬉しいです(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
去り行く季節と、戻らない人……。゚(゚´ω`゚)゚。
カイコさん、本当に消えてしまったのですね。服部少年が思い起こした彼女との思い出が泣けてきます。
あの時の市松人形は、服部少年の元に。人形にとってもカイコさんにとっても、それが一番喜ぶと思います。
彼ならきっと大切にしますし、これを見て、カイコさんのことを思い出してくれるでしょうね。
もう記憶の中にしか存在しないカイコさん。だけど、彼女がいたということ、やってきたことは、これからも心の中に刻まれ続けていくと思います。
作者からの返信
コメントありがとうございます!
いるべき人がいなくなった後の空間に、その人との思い出がありありと蘇ってくることってありますよね。
別れた瞬間以上に、喪失感が身に染みるのはそんな時かもしれませんね。
市松人形。服部少年が持ち主になるなら、カイコさんもきっと喜ぶでしょうね。
一緒に過ごした時間は長くはありませんでしたが、一生忘れられないほどの大切な思い出が刻まれましたね(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
百花さんの押し殺した嗚咽で目がうるみ、先生の
>「明確に名前を付けられるものばっかりじゃないさ。我々はそういうものを総じて『神さま』と呼ぶんだろうよ」
…で落涙し、服部くんと一緒に涙腺崩壊しました。
私もカイコさんに怒られちゃいそうです。カイコさんは一郎さんと共に天に昇られたのだから。これからは自由に飛び回れるのだから。笑ってお見送りしないと。
振り返った懐古堂の光景に、蝉の鳴き声に感じる季節の移り変わり。素敵なラストシーンでした。
さて、エピローグですね。たしか、カイコさんが腐道に踏み入ったきっかけ、もしくは壁へのこだわり(?)に触れられるものと記憶しております。それも含め、楽しみにしております。今はまだ、涙が止まりませんが。
作者からの返信
コメントありがとうございます!
3人それぞれに共感してくださって嬉しいです(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
三者三様、カイコさんへの想いの寄せ方も違いましたね。
カイコさんは、悔いなく役目を果たして昇っていきました。間違いなく、これで良かったはずです。
でも喪失感ばかりはどうしようもないですね。
すっかりがらんとしてしまった懐古堂と、季節の移り変わりの蝉の声に、そんな心を映しました。
エピローグでは、みなさんが気になっているであろう彼女の腐堕ちのきっかけにも触れられます!笑
ぜひ最後まで見届けてください!
編集済
その後のストーリーが切ないですね。第1章の子が服部くんの胸を詰まらせるの、すごくずるいです。
> 今や何もかも、僕たちそれぞれの記憶の中にしか存在しない。
カイコさんという人と、懐古堂という場所と、同時に離れますもんね。寂しくもなる……。
何だか僕の大叔父を亡くした時を思い出しました。もうこの記憶が、思い出が更新されることはないんだと思うと、ちょっぴり切ないですよね。思い出を大事にしたい気持ちにさせられました。
あと、蝉の使い方もずるいですね。
普段はただやかましいとしか思わないのに、子供の頃はワクワクして、ある時聞けば懐かしくて、人によっては静けさを感じて、そしてこの作品では流れる時を感じさせる。蝉って、フランスでは幸せのシンボルでしたね(浪費家的な意味もあるそうですが……)。洋の東西を問わず、あの元気な虫には感じるところがあるのかもしれません。
そういえば蝉の鳴き声が遠くなっていくのって、花火の後の静けさにも似てますね。
これまですずめさんの作品でカメラアングルや目に留まったものの美しさを実感し直したことはありましたが、音は初めてかな。日常にもこんなに大切なものがあったんだ。今年の夏が少し楽しみですね。
うわーん、残すところ1話。今週で終わってしまう……。かなちい……。でも強く生きる……。
懐古堂、カイコさんにとっての神社みたいなところだったのかな。
そう思うと、人の想いだけで神聖な場所が作れるんだと思うと、これまでの日常をより大切にしたいと思えますね。生活の場所、そこで流れた言葉や感情、そういうものの中に宝物がある気がします。
作者からの返信
コメントありがとうございます!
第1章の子が懐古堂に残ったこと、大事な意味があったんです。
初めての憑依で怖い目にも遭いましたけど、服部少年にとっても大事な存在ですね。
馴染んだ人と場所、同時になくなってしまうのは、どうしようもない喪失感だと思います。
それをどう表現しようか、何を描写し、何を行間に込めるか、すごく悩んで言葉を選びました。
思い出が更新されない。あぁ本当にその通りだなと思います(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
描写をお褒めいただけて嬉しいです!
蝉の声は、第3章(梅雨が明けて以降)から意識的にちょいちょい入れていましたね。
蝉が鳴いてると体感温度が増したり、誰もいない場所に響いてくると何だか寂しかったり。
ツクツクボウシは夏の終わりですね。季節は去り、ここで過ごした日々も遠ざかっていくのでしょう。
中部だとアブラゼミかクマゼミ、最後にツクツクボウシが少し聴こえるくらいです。地域によって違いそうですね。
大事にされているものや場所って、それだけで特別に感じます。
私たちの思う神さまは、そういうものに宿るんじゃないかなと。
骨董店が舞台の古いものも題材にした話なので、そんなところが伝わったらいいなと思っていました。
いよいよラスト1話になりました。
私自身非常に寂しいですが、ぜひぜひ最後まで見届けてやってください!!
本当にサヨナラなんですね。
カイコさん、忘れられない思い出深い神様でした。
作者からの返信
コメントありがとうございます!
最後の願いは、花火と共にパッと散って消えました。
こんな時間を過ごしたら、忘れられないでしょうね……(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)