第39話 エピローグ3 完結

石崎香里奈の売春、虐待事件の後、香里奈は特例として名前を月葵に変えた。石崎徹の逮捕は瞬く間に世間に知れ渡り、香里奈の名前もネット上に拡散されて行った。


香里奈の姉は結局、一度も糸原の前には顔を出すことは無かった。香里奈の連絡にすら応答しなかった。


姉は親から離れるために一人暮らしを始めたのだから会う理由も無いのだろう。報道陣によって姉の大学は特定され、姉は報道陣の前でこう話した。


「母、父、香里奈。私はあなた達が嫌い」


香里奈が嫌われる理由。それは他人の力で救われたからであろう。姉は父から逃れるために努力をして高学歴大学に進学した。そして親元を離れた。


ちなみに香里奈の姉は売春はさせられていなかった。父親からの虐待のみだった。


・・・・


「本当に馬鹿な父親ですね」


今、糸原と石崎徹の間は物理的な硝子で仕切られている。明日石崎徹は釈放される。石崎徹に話したいことがあり、許可をとってここへ来た。


「あぁ。その通りだよ。私は娘を売った馬鹿な親だ」


「いや、そういう【馬鹿】じゃなくて【親バカ】だって言ってるんです。【娘のために】縁を切るあなたは最低な親バカです。香里奈を育てるのは親のあなたです」


石崎徹に、糸原はいつも通りの笑顔を【作る】。糸原は香里奈の新しい名前「月葵」の名前を書いた紙を石崎徹に渡した。


「必ず私はあなたと香里奈の関係を戻します。それが本当の【解決】ですからね。ちなみに、教育学会の裏金は井上水流が調査します」


「そうですか。私はもう香里奈たちと会うつもりは無いですが」


「雑談は置いておいて、今日ここに来たのは最後の確認です」


糸原はスマホから【1枚の写真】を見せた。


「伊藤陽葵について何か知っていることはありますか?」


「何度もしつこいな。私は伊藤陽葵について話すことは何も無い」


「ですよね。ではもう1枚あなたに見せます」


その写真を見た石崎徹の顔から余裕が消えた。


【それが石崎徹との最後の会話になった】



【嘘葵】完結


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

嘘葵 ましゃき @masakky

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ