トラック7 付き合っちゃいなよyou達

赤ちゃん言葉をしてもらった日、確信した。

俺は桜子のことが好きだ。いや、ずっと好きだった気はするけど......

「というわけでどうしよう」

「さっさと告れば終わりだよ、はい解散」

相変わらず竜二は雑だ。すぐに話を終わらせようとしてくる。それが出来たら苦労しないし、放課後こんなゴリラと話さずに部室に行ってる。

「いやいや、それが難しいからお前に聞いてんだよ」

「いやそれを俺に聞いちゃダメだろ、俺彼女いた事もなければ告白したこともねえぞ、馬鹿か?

あー馬鹿ではあったな、じゃあな解散」

「あ、ちょっとま――」

今度は掴む間もなく消えていった。もう何回やんのこの流れ。

「でも、たしかに竜二も年齢イコールだしな」

竜二が戻ってきて肩パンしてくる。なんで聞こえたんだよ。痛すぎて追いかけられなかったわくそ。

「まあ、部室行くか」

改めて部室までの道を確認して歩く。ただの時間稼ぎだけど。

こうやって改めて普段使う校舎を見てみると面白かったりする。

まあ問題は教室から部室まで5分もかからないってところだ。扉の前でとりあえず立ち止まってみる。

「あ、先輩、こんにちは」

ダメだった。そうか、まだ来てなかったか。

「アア、サクラコサン。コンニチハ」

「なんですかその声、ロボットにでもなるの?

こちらの気持ちも露知らず、すぐに部室に入る桜子。続かない訳にも行かずとりあえず入る。

「先輩、今日はどうしますか?」

「え?」

「いつものですよ、いつもの」

「あ、あぁ......」

仮に今日告白するとして、後にした方がいいのだろうか。前にした方がいいのだろうか。

いや待てよ、今告白をしてしまってもし、断られようものなら、桜子の癒しを受けることができずに、俺は今日帰宅だ。それは困る。

「先輩?」

あぁ、覗き込んでくる顔くっそ可愛いなおい!

「実は今日あるもの持ってきたんです」

鞄を漁る桜子。そこから白いふわふわの梵天付きの耳かきがでてくる。

「これで耳かき、させてくれませんか」

「おお、うん。頼む」

まさかここまでやる気になってくれていたとは、たしかに桜子がASMR音声の代わりをやると言った時から、少し生き生きしていた気がする。なんだかんだ世話焼きなんだろうな。

いつものように桜子の太ももに乗る。

「先輩、実は私」

耳かきが入ってくる。いつもの綿棒とは違う木の感触や冷たさが気持ち良い。

「ん? どうした」

最近は耳かきをしている時は眠らずに、その日の話を互いに話し合うようになり。前よりも話す頻度が増えた。

「先輩のことが好き」

桜子の声が震える。

耳かきの手が止まり、耳かきが机に置かれる。

「え、? なん――」

顔が掴まれ、気がつけば目の前には桜子の顔があって、唇には何が柔らかい感触。

顔が一瞬でゆでダコのように赤くなり、熱を持ち始める。顔をどこかに向けようと思っても、掴まれているので、逃げられない。

「私......は、あ、貴方のことが好きです......つ、付き合ってくれませんか」

「え、ちょ!? え、!? さ、桜子さん......?」

「先輩はこういう時、多分後で後でって言って、言わなそうだから......」

「あ、あ。えと、あの、その......」

「返事......教えてくれないんですか」

「あ、その、お、俺も桜子のことが好き......です、お、お願いします」


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クールな部活の後輩が俺の眠ってる間に耳かきしていたのに気づいてしまったことについて 一石二鳥 @anusu01

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