第13話 これからの時間

光に包まれた虎白はその温かさにウトウトと眠気を誘われた。あともう少しで眠ってしまいそう。

 冒険の疲れがドッとあふれてきてまどろんできた時だった。どこからかカチコチカチコチと時計の音が聞こえてきた。

 そして、次の瞬間。

 ドンガラガッシャン!

 「イッテエー!」

 「「イタッ‼」」

 3人は見事に地面に放り出されて転がった。

 自分がどこを打ち付けたのかわからないが、とにかくどこもかしこも痛い。頭や脛を必死にさすりながら虎白は転んだ方向を振り返る。

 そこには押し入れがあった。段ボール箱がひっくり返っていてブロックや人形が飛び出してきている。

 押し入れから飛び出してきたのだろうか?

 気づけば葉月の心の世界で負った掌の傷も服の汚れも綺麗さっぱり無くなっている。

 「ここ、どこ?」

 萩香が眼鏡をずらしながら眠そうな目を瞬く。

 「僕の部屋だよ」

 葉月もあくびを嚙み殺していた。

 「なら、戻って来たって事だよな」

 「多分」

 窓から外を見ると、夕焼けが見えた。今は何時くらいなんだろうか。時計が無いかとキョロキョロしていると、葉月の部屋がノックされた。

 「大丈夫葉月?」

 「お、お母さん?」

 「今ね、葉月のお友だちが来てるのんだけど」

 言いながら葉月の母親が扉を開ける。

 そしてキョトンとした表情になった。

 「あら? いつの間に来たの?」

 「え?」

 「ええっと」

 萩香と虎白は目配せし合った。どうやら葉月の家に来て客間に案内された時刻からそうまったく時間が経っていないようだった。むしろ葉月の母親からしたら2人が瞬間移動でもしたように思えただろう。

 「つ、ついさっき! お母さんが来る直前に来たよ!」

 しどろもどろになりながら葉月が取り繕った。

 「そう? せっかくだし、葉月の部屋で話す?」

 「あ、はい。そうします!」

 萩香も首を勢いよく縦に振って同意する。

 「わかったわ。じゃあジュースもこっちに持ってくるね」

 「お、お願いします」

 葉月の母親は優しく笑うと部屋から出て行った。それを見送り、3人は顔を寄せ合う。

 「葉月君、今何時?」

 「えっと」

 葉月は自分の机の上にある丸い時計を見る。

 「4時30ちょっと前」

 「俺たちが葉月の家に来た直後みたいだな」

 「どうする? 葉月君のお母さんには隠しておく?」

 「話したって想像上の出来事だと思われるだけだよ」

 虎白も萩香も葉月の言葉に黙って頷いた。それに、何となく3人だけの秘密にしておきたい。

 「そうだ! 葉月君、紙と鉛筆ある?」

 「うん。あるよ。どうぞ」

 「ありがとう。忘れないうちに書いておかないと」

 萩香はメモ帳に自分の電話番号とメールアドレスを書いていく。

 「俺も! 家の電話書いとく」

 「家の電話なら連絡網あるでしょ」

 「あっ……」

 そう言えばそうだった。でも萩香から鉛筆を貰った時点で引き返せない。

「こ、こういうのは書くって行動が大事なんだろうが」

クスクスと2人が笑ってる。

「笑うなよ!」

ちょっと小突いて虎白は電話番号を萩香の番号の下に書いた。今度は葉月も2人に自分の携帯の番号を書いて渡してくれた。

「これで冬休みも夏休みも一緒に遊べるな! 遠くに居たって絶対誘うからな!」

虎白が元気に言うと、萩香も葉月も笑って頷いた。

「うん! 僕、すごく楽しみ!」

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ココロネ 酉未 すゑ @kemonae

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