理解できない、お願い

「は?」


どういう事かさっぱり分からない。話のつながりが見えてこないし、おそらく言われた事の半分も理解していないだろう。寧ろ理解できた方が怖い。


「何の相手?」


結局思いついたのはこんな間抜けな質問だった。時間稼ぎのために、川原君がここで答えられなさそうな質問にしたつもりだった。


「死が二人を分かつまで、共に過ごす相手かな。」


遠回しすぎるし、言葉が重すぎる。少なくとも初対面(?)の相手に言うことではないだろう。周りの人からの視線が痛い。転校初日の生徒はただでさえ目立つものなのだ。


「じゃあ…どういう人を希望しているの?かわいい子?美人?スポーツの得意な子?スタイルがいい人?」

「う~ん、該当しなさそうだね。今日メールで希望する特徴を送るから、連絡先教えて。」


冗談だろうと思って乗ったのに間違いだった。これは上手くやらないと後で恨まれるパターンだ。


「希望する特徴をクラスメート達に知らせても良い?」


そういうと、彼は悩む素振りを見せながらも、許可してくれた。私は妬まれないし、クラスメート達は気になる情報を知る事ができる。

できるだけ敵を作らず、Win-Winの関係を築きたい。余計な心労を溜め込む余裕は何処にもないのだから。



『名前呼び捨てで良い?』

『良いよ。私の下の名前は奈美(なみ)。』


本当は嫌ですけど。


『僕は諒介(りょうすけ)。よろしく。』

『こちらこそよろしく。』


え、諒介?

聞いたことある気がする。でも一体何処で…


『本題に入らせてもらうね。今日塾があって時間無いから。』


聞くのも怖いけど、それは我慢だ。私しか聞けないのだから。


『昼休みに話していた事について、詳しく説明してもらえる?』


『まずは僕が引っ越してきた事情から。僕の両親が離婚したのだけど、実は父が亡くなってしまって、死後離婚なんだ。』

『母方の家は厳しい家で、許嫁がいるのが当たり前らしい。せめて結婚できる18歳までには結婚相手を決めておけと怒鳴られた。僕の家で行う花嫁修業が終わらないと結婚出来ないから、早めに決めるべきだと言われた。』

『本当は自由恋愛とか憧れるけどね。その代わり跡継ぎの第一候補にすると言われれ

 ば断れなくてさ。母が可哀想で。』


重い。こんな話知りたくなかった。そもそも裏事情話しすぎでは?厳しい家にしては話しすぎだと思うけれど、育った場所のせいかしら。

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あの人に伝えたい~初恋の君~ 花宮風月 @windymoon

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